1975年と1976年、ボブ・ディランは「ローリング・サンダー・レヴュー」と名づけたツアーで全米を回った。その第二期にあたる1976年の音源をまとめた39枚組ボックス・セット『ローリング・サンダー・レヴュー:1976年の記録』が、11月6日に発売される。(フロントロウ編集部)
22都市、22公演、そして371の未発表トラック
『ローリング・サンダー・レヴュー:1976年の記録/The Rolling Thunder Revue: The 1976 Live Recordings』が2026年11月6日に発売される。2019年に出た『ローリング・サンダー・レヴュー:1975年の記録』の続編にあたる企画だ。
収められているのは、1976年4月18日のフロリダ州レイクランド公演から始まる22都市・全27公演のうち、22公演分。CD39枚に全381トラックが並び、そのうち371トラックが未発表音源になる。多くはツアー・エンジニアがサウンドボードからカセットテープへ直接落とした記録で、マルチトラックのテープを新たにミックスし直したものも混ざっている。40ページのオリジナル・ブックレットが付く輸入限定ボックス仕様だ。
「全米初のパンク・ロック・ツアーだった」
第二期のディランは、歌をよりハードなアレンジに組み替え、歌詞を書き換えることもためらわなかった。ステージを重ねるごとに演奏は激しさを増していき、5月23日のコロラド州フォート・コリンズ公演で頂点に達する。
バンドには、全米1位を獲得したアルバム『欲望』の録音に参加したベーシストのロブ・ストーナー、ヴァイオリニストのスカーレット・リヴェラ、ドラマーのハウイー・ワイエスが並んだ。ギターにはボビー・ニューワース、デヴィッド・ボウイのバック・バンドだったスパイダーズ・フロム・マースのミック・ロンソン、そしてT・ボーン・バーネットら。ニューワースはこの編成を「グアム」と名づけている。ジョーン・バエズ、ウィリー・ネルソン、ジョニ・ミッチェル、アレン・ギンズバーグらもツアーに合流した。
T・ボーン・バーネットは当時をこう振り返っている。「ローリング・サンダー・レヴューは全米初のパンク・ロック・ツアーだったのだろう。このツアーが、ザ・クラッシュ、エルヴィス・コステロ、ザ・ラモーンズ、セックス・ピストルズなど、次々と現れる新しい音楽の激しい爆発へとつながる扉を開いたのだ」
一晩だけ放送されて、消えたテレビ番組
頂点となったフォート・コリンズ公演(Disc38&39)には、もうひとつの顔がある。この夜は特別TV番組『激しい雨』として、NBCで一度だけ放送された(日本では1977年にTV東京で放送)。
オリジナル・ライナーノーツを書いた作家で音楽ジャーナリストのマイケル・ギルモアは、その番組をこう記している。「たった一晩、わずか一時間だけ放送されただけだ。劇場で上映されることは一度もなかった。再放送されることもなく、ビデオテープやDVDとして発売されることもなかった。もう消え去ってしまったのだ」。そのうえで、「音楽を聴きながら、目を閉じ、ここで展開する壮絶な物語を心で見てほしい」と続けた。
先行して、5月16日のフォートワース公演から「ゴーイング・ゴーイング・ゴーン」が公開された。1974年の『プラネット・ウェイヴス』でザ・バンドと録音した曲で、スタジオ版ではロビー・ロバートソンの浮遊するギターが全体を支えていたが、このツアーではスカーレット・リヴェラのヴァイオリンがその位置に入っている。
日本盤には、独自のブックレットが付く
日本盤は輸入盤国内仕様。マイケル・ギルモアの英文ライナーを菅野ヘッケルが完全翻訳し、萩原健太による全曲目解説と中川五郎による歌詞対訳を収めた日本版ブックレットが付属する。完全生産限定盤で、品番はSICP 6826~64、価格は33,000円(税抜30,000円)。

同時に、オリジナル・マルチトラック・テープからリミックスした5月16日フォートワース公演の完全版を収めた3枚組LPセットも発売される(輸入盤のみ)。ノーベル文学賞受賞から10年、85歳になったディランの、いちばん荒れていた春が、ようやく通しで聴けるようになる。
10月9日、第2弾音源「あわれな移民」が公開。日本版特設サイトも
10月9日、ボックスからの第2弾音源として、1976年5月16日のフォートワース公演で演奏された「あわれな移民(I Pity the Poor Immigrant)」が公開された。会場はテキサス州のタラント・カウンティ・コンベンション・センター・アリーナだ。

あわせて、日本版の特設サイトも開設された。今後、最新情報がここに追加されていく予定だ。39枚組の日本盤は1枚あたり約846円の計算になる。

10月22日、フォートワース公演が2枚組CDで単独発売へ
ボックスの中から、1976年5月16日のテキサス州フォートワース公演だけを抜き出した2枚組CD『ライヴ・アット・フォートワース 1976』が、12月18日に発売されることが決まった。ボックスではDisc 32〜33にあたる音源だ。

この夜のステージは、2インチのアナログ・マルチトラック・テープでコンサートの頭から終わりまで録音されていた。ところが、これまで世に出ていたのはライヴ盤『激しい雨』に入った4曲だけ。全22曲のうち18曲は、今回が初めての公式リリースになる。オリジナルのマルチトラック・テープから新たにリミックスとリマスターが施された。
「ミスター・タンブリン・マン」で幕を開け、「風に吹かれて」「イシス」「愚かな風」「天国への扉」と続き、「ゴッタ・トラヴェル・オン」で締めくくる全22曲。当時34歳のディランの、緊張感に満ちた第二期のステージが通しで聴ける。

日本盤は高品質Blu-spec CD2仕様で、解説・歌詞・対訳が付く。品番はSICP-31894〜5、価格は税込3,960円。39枚組に手が出なかった人には、絶頂期のディランへの入口になりそうだ。

10月26日、39枚組ボックスの開封動画が公開
11月6日の発売を前に、39枚組ボックス・セットの中身を1点ずつ取り出していく開封動画が公開された。輸入限定BOXにはCD39枚と、当時の写真を収めた40ページのオリジナル・ブックレットが収まっている。日本盤にはさらに、全曲目解説や歌詞対訳を収録した140ページの日本版ブックレットが付く。価格は税込33,000円で、CD1枚あたりにすると約846円になる。
10月30日、雨のフォート・コリンズ公演の完全版がサプライズ配信
11月6日のボックス発売を前に、1976年5月23日のコロラド州フォート・コリンズ公演の完全版が、ファンへのサプライズとして10月30日にデジタル配信された。会場のコロラド州立大学ヒューズ・スタジアムは、ローリング・サンダー・レヴューが演奏した中で最も大きな会場。ボックスではDisc 38と39に入る音源で、「ミスター・タンブリン・マン」から「はげしい雨が降る」まで全23曲を通して聴ける。

この公演はNBCの特番『激しい雨(Hard Rain)』として放送され、日本でも1977年にテレビ東京で流れた。現地は何日も土砂降りが続き、ツアーの終わりを目前に、雨の中でステージを決行したという。ボックスのライナーノーツによれば、苛立ちを募らせたディランはそれを演奏にぶつけ、とくに「愚かな風」が激しかった。スティール・ギターのデヴィッド・マンスフィールドは「ボブはあの曲に、とてつもなく黒いエネルギーと毒を注ぎ込んだ」と振り返っている。




















