起きている時間の86%は”動かない”。シガニー・ウィーバーが人類を観察


アシックスが、10月10日の「世界メンタルヘルスデー」に向けたプロジェクト「The Movement Conservation Project」を公開した。31カ国・地域の3万4,000人を調べると、人は起きている時間の86%を身体を動かさずに過ごしているという。ナレーションをシガニー・ウィーバーが務める短編ドキュメンタリーも公開されている。(フロントロウ編集部)
人類は”絶滅危惧種”になりつつある?
プロジェクト名にある「Conservation」は、絶滅のおそれがある生き物を守る時に使われる「保全」という言葉だ。アシックスはこの考え方を、私たち自身の”運動”に当てはめた。背景にあるのは、人が年々動かなくなっているという調査結果だ。
アシックスが2026年7月に行ったグローバル調査「State of Mind」では、31カ国・地域の3万4,000人が回答。起きている時間を16時間として計算すると、人々はその86%を身体を動かさずに過ごしていた。
食事、仕事、買い物、人との交流、娯楽まで、今はほとんど動かずに済ませられる。調査では64%が「現代の生活はあまりに便利で、ほとんど動かずに一日を過ごすのは簡単だ」と答え、40%以上が3日以上家から出なくても問題なく過ごせると回答した。用事を対面ではなくオンラインで済ませることが多い人は41%。18〜24歳では、これまで自分でしていた作業をAIに任せている人が41%と、全年齢層でもっとも高かった。

4人に1人が「Endangered(絶滅危惧)」
アシックスは、運動とメンタルヘルス研究の第一人者であるブレンドン・スタッブス博士(キングス・カレッジ・ロンドン)と共同で、「Movement Conservation Status(ムーブメント保全ステータス)」という指標をつくった。WHOなどが公表している国際的な身体活動のガイドラインをもとに、週あたりの運動量で人を3つに分類するものだ。
週150分以上なら「Active」、週30〜149分なら「At Risk」、週30分未満なら「Endangered」。この基準で見ると、成人の53%が「At Risk」か「Endangered」に当てはまり、およそ4人に1人(23%)が「Endangered」だった。今の傾向が続くと、2035年にはその割合が56%まで上がり、調査対象国で推計23億人に達すると予測されている。
影響は身体だけにとどまらない。心の状態を示すスコア(100点満点)は、「Active」の人が平均71点だったのに対し、「Endangered」の人は60点。活力を感じる度合いは23%、落ち着きは20%、集中力は17%低く、ストレスは16%高かった。
とくに目立つのが若い世代だ。18〜24歳では57%が推奨される活動量を満たしておらず、そのうち92%が気分の落ち込みやストレスの増加、睡眠の質の低下といった悪影響を感じていると答えている。
ウィーバーの声で見る、”便利な生息環境”の人間
この現実を伝えるために公開されたのが、ネイチャードキュメンタリー「Human Nature(ヒューマン・ネイチャー)」だ。ナレーションを務めるのは、『エイリアン』シリーズや『アバター』シリーズで知られるシガニー・ウィーバー。快適で便利になった現代の”生息環境”で暮らす人々にカメラを向け、日常から身体を動かす機会が少しずつ失われていく様子を、ネイチャードキュメンタリーの手法で描いている。
南カリフォルニア大学のデイビッド・ライクレン教授は、「現代社会は、身体を動かすことを『するかしないかを選べるもの』にしてしまいました」とコメント。そのうえで、大きな変化を求められるわけではなく、無理のない範囲で動くことの積み重ねが違いを生むという趣旨の話をしている。

まずは1日15分から
では、何から始めればいいのか。アシックスが2022年に行った研究では、15分程度身体を動かすだけでも、精神状態にポジティブな影響を与える可能性が示されている。プロジェクトが呼びかけているのも、まずは1日15分程度身体を動かすことだ。
アシックスは「健全な身体に健全な精神があれかし」を創業哲学に掲げ、ブランド・スローガン「Sound Mind, Sound Body」を打ち出してきた。今年は再生素材を使ったランニングシューズも話題になった同社。プロジェクトの詳細は特設サイトで公開されている。世界メンタルヘルスデーを前に、ひとまず15分、外を歩いてみるのもいい。
















