【特集】ジェシカ・アルバ45歳、女優から起業家になった本当の理由


米人気ドラマ『ダーク・エンジェル』で一躍スターとなり、ハリウッドを代表する女優として活躍してきたジェシカ・アルバが、米時間4月28日に45歳の誕生日を迎えた。しかし今の彼女を語るうえで欠かせないのは、赤ちゃん用品業界の常識を変えた起業家としての顔かもしれない。(フロントロウ編集部)
育児中の「怒り」が、すべてのきっかけだった
2008年、ジェシカ・アルバは第1子の妊娠中に、思いがけない経験をする。知人から贈られたベビー用品を使用すると、肌に激しいアレルギー反応が出たのだ。市販の日用品や赤ちゃん向け製品に含まれる化学物質の実態を調べ始めた彼女が気づいたのは、消費者が知る由もない成分がいかに多くの製品に含まれているかという、不都合な現実だった。
この経験はやがて、ジェシカの中で静かな怒りへと変わっていく。女優として多忙な日々を送りながら、彼女は安全な代替品を探し求めた。しかし理想とする商品は市場にほとんど存在しなかった。ならば自分たちで作るしかない——そう決意した彼女は2012年、共同創業者とともに「ザ・オネスト・カンパニー(The Honest Company)」をロサンゼルスで立ち上げた。
当初、投資家からの評価は厳しかった。「セレブが作ったブランド」という先入観が先行し、資金調達は容易ではなかったと伝えられている。米Retailbossの報道では、わずか17の製品ラインナップからのスタートながら、サブスクリプションモデルを採用した初年度に1,000万ドル(約15億円)を超える売上を記録。市場がその答えを示した形だ。
その後も成長は続き、2015年には1億7,000万ドル(約260億円)以上の資金調達を達成し、企業評価額は10億ドル(約1,500億円)を超えた。スタートアップ界の「ユニコーン企業」への仲間入りだ。じつは「女優のブランド」と一笑に付されていた創業当初から考えれば、この評価は業界そのものへの回答だったかもしれない。そして2021年5月、ジェシカは子どもたちとともにNASDAQの鐘を鳴らした。IPOによって約4億1,280万ドル(約640億円)を調達し、上場初日に株価が44%上昇。ハリウッドの女優が、ウォール街に本物の起業家として名を刻んだ。
試練と進化——目的を持ったビジネスが残したもの
しかし、成功の道のりは平坦ではなかった。2016年には製品の成分表示をめぐる訴訟が起き、複数の米メディアの報道では735万ドル(約11億円)の和解が成立した。「透明性」を掲げる企業にとって、この問題はブランドの根幹を問い直す試練となった。
それでも歩みを止めなかったのは、ジェシカが単なるビジネス成功ではなく「業界の在り方を変えること」を目標としていたからかもしれない。米Retailbossによると、ザ・オネスト・カンパニーはこれまでに2,500万点以上の製品を必要とする家族に寄付してきた。2024年4月にチーフ・クリエイティブ・オフィサーを退任する際、ジェシカは「目的をビジネスに注入する時、何が実現できるかを業界に示すことができた」と語った。
退任後も会社は着実に成長を続けている。2025年第2四半期の売上高は9,300万ドル(約144億円)、粗利益率は過去最高の40%を記録し、2四半期連続で黒字を達成。2026年2月には、創業以来初となる2,500万ドル(約39億円)規模の自社株買いプログラムも発表された。45歳の誕生日を、新たなパートナーである俳優のダニー・ラミレスや子どもたちとともに祝ったジェシカ・アルバ。スクリーン上の強さから、産業構造そのものに向き合う起業家へ——その歩みは、一人の母親の純粋な「怒り」から始まっていた。












