ラッパーのドレイクが、2018年に入って激化しているラッパーのカニエ・ウェストとのバトルについて初コメント。カニエと敵対することになった理由を赤裸々に明かした。(フロントロウ編集部)

ドレイクとカニエの不仲のはじまり

 ドレイクがレブロン・ジェームズのトーク番組『ザ・ショップ(The Shop)』で明かしたカニエ・ウェストとのビーフ(不仲)のはじまりがこう。

 当時、5thアルバム『スコーピオン』のレコーディングを秘密裏に進めていたドレイク。リリース日やトラックリストなどを極秘で進めていたドレイクだが、ある日カニエとつるんでいる時に、「クインシー・ジョーンズみたいになって、君の手伝いをしたい。そうするためにも、君は僕にすべてをオープンにしなくてはいけない。曲も聴かせてほしいし、リリース日も教えてほしい」などと、カニエから熱いスピーチを聞かされたという。

 カニエの言葉に「誠実な雰囲気」を感じたというドレイクは、カニエに仕上がった曲を聴かせ、リリース日も告白。ヒミツを明かした後の2人は盛り上がり、カニエが自分で作った曲「リフト・ユアセルフ」のビートをドレイクに聴かせ、「この曲ほしければあげるぜ」と提案。ドレイクは、「すごく嬉しくて、すぐに(歌詞を)書き始めたよ」と当時を振り返った。そのあとカニエが「ぜひ来てくれ」と言って、2人はカニエのスタジオがあるワイオミング州で再会する約束をした。

 しかしワイオミング州では、言われていた話とは違う状況が待っていた。

ドレイクを呼んだのは、カニエの利益ため?

 自身のアルバム『スコーピオン』の制作をするために、カニエに会いにワイオミング行きの準備を進めたドレイク。すると前日に現地に到着したノア・“40”・シェビブから、「何かおかしいぞ。(カニエは)アルバムを作ってるみたいだ」と予想外の報告を受けたという。

 とは言えカニエを信用していたドレイクは、「俺にビートを提供したいって言ったばかりで、10月か11月までアルバムは出さないって言ってたけど?大丈夫だ。とりあえず行って、どういうことか確かめよう」と返答してワイオミングに向かったそう。

 しかしドレイクは、「結果的に、ほとんどの時間が彼の音楽のために費やされたよ。彼にアイディアを提供したりしてね」と告白。

 この期間、ドレイクがカニエに隠し子の母親とトラブルになっているという悩みを明かすといった深い交流はあったものの、音楽そのものでドレイクにとっての収穫はほぼゼロで、ドレイクは、「彼の音楽を作るためにすべての時間を使って、『リフト・ユアセルフ』とねぎらいの言葉だけをもらって帰ったよ」と振り返る。

 とはいえ、この時点でカニエに不満は抱いていなかったというドレイク。この気持ちが裏切られたのは、ワイオミング州から帰って少し経ってからだった。

カニエ側のアルバム情報が解禁

 数日後、ドレイクの隠し子疑惑がウワサに。その後すぐに、カニエと、カニエがプロデュースするプッシャ・Tのアルバムがドレイクのアルバム発売前にリリースされることが発表された。さらにとどめを刺すように、カニエがドレイクに提供するはずだった曲「リフト・ユアセルフ」をカニエ自身の曲としてリリースしてしまった。

画像: Kanye West - Lift Yourself (Official Music Video) www.youtube.com

Kanye West - Lift Yourself (Official Music Video)

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 こうして、ようやく自分が置かれている状況に気づいたドレイク。「ああ、こいつは俺をからかってたんだ。人を操るというか、『お前をぶち壊してやる』っていうタイプの行動だったんだ」と思ったというドレイクは、カニエから距離を取ることにしたという。

 そしてプッシャ・Tのアルバム『Daytona(デイトーナ)』が発売されると、アルバムにはドレイクのゴーストライター疑惑をラップした曲「Infrared(インフラレッド)」が収録されていた。

 「ついこの前まで友達としてお前を手伝ってあげてたのに、今さら俺をディスるなんて。『闇が深いな』って思ったよ」とドレイク。

 この後、ドレイクがディスソング「Duppy Freestyle(ダッピー・フリースタイル)」をリリース。カニエのレーベルであるG.O.O.D Musicに約1,000万円をプッシャ・TのアルバムのPR料として請求するバトルに発展した。

ドレイク、2曲目のディスソングをお蔵入りに

 カニエ&プッシャ・T側と完全戦争へと突入したドレイクだが、そんな彼の気持ちを冷めさせたのが、プッシャ・Tが2曲目のディスソング「The Story of Adidon(ザ・ストーリー・オブ・アディドン)」を発表した時。

画像: ドレイク、2曲目のディスソングをお蔵入りに

 プッシャはこの曲で、ドレイクの親や、フランス人女性ソフィー・ブルソーとの間に隠し子がいるといった内容をラップしたのだが、ドレイクが怒りを覚えたのは、親や隠し子のことではなく、ノア・“40”・シェビブの多発性硬化症(MS)がネタにされたことだったという。

 「ラップバトルにルールはないっていう人がいるけど、ルールはあるんだよ」と強く言い切ったドレイクは、こう説明した。「子供のことが持ち出されるのは分かっていた。あのしょうもない曲を少しでも魅力的に見せるために必要な措置だったからな。それは別にいい。理解できるし、受け入れたよ。両親のこともどうでもいい。あいつらは俺の家族のことを何も知らないからな。でもな、MSを抱えている友達の死を望むなんて…。ラップバトルを勉強することが生業の俺としては、病気で入院している人や、亡くなった人といった無力な人に触れると、報いを受けると確信したんだ。これで終了。誰かに顔面ぶっ飛ばされるかもしれないし、もう終わり。お祭りは終わりだ。もうほかのことがしたかった。反応して相手の評判やキャリアを伸ばす手伝いはしたくないと思ったんだ。俺にとってはもう十分だった」。

 ドレイクが問題としている箇所は、プッシャが「The Story of Adidon」の中でドレイクの長年のコラボ相手であるノア・“40”・シェビブに触れ、「OVO 40、と言っても80歳みたいにかがみこんでる/チック、タック、チック、タック/残された時間はどのくらいだ/彼はシック、シック、シック(=病気)」とラップした部分。ノア・“40”・シェビブが多発性硬化症を患っていることを笑いものにしたこのラップに対しては、全米多発性硬化症協会からも批判声明が発表された。

 「The Story of Adidon」を「ゴミ」と呼びながらも、「ラップマニアの歴史において、俺の鎧に傷をつける一件」と認めたドレイク。これに対するカウンターソングは存在するものの、「家に帰って聴いてみて、これを作った男として名を残したくないと思ったんだ」と語って、お蔵入りにしたことを明かした。

 ただ、ドレイクは「俺がしたリサーチのスゴさ…俺がやろうとしていたことや言おうとしていたことに比べたら、その汚名を受けた方がいい」と話しているので、このカウンターソングは相当の内容だったことが予想される。

カニエとドレイクの関係は平行線

 カニエは9月に入ってから、「君のリリース日を邪魔してしまったことを謝罪する」「ディス曲に関わるつもりはなかった」などと連投ツイートをしてドレイクに謝罪した。

 一連のツイートにドレイクは反応していないが、今回のドレイクの主張が正しければ、一度裏切ったカニエの言葉をドレイクが信用しないのも納得と言える。実際にカニエはすぐに主張をひるがえし、数週間後にはドレイクを名指しで批判した。

 当初はリリース日を巡る争いきっかけだと思われていたこのビーフ。ドレイクの新証言からは、カニエとドレイクの溝は周囲の想像以上に深いことが分かった。(フロントロウ編集部)

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