カニエ・ウェストが音楽界最高峰のアワードとして知られるグラミー賞のトロフィーを便器に投げ込み「放尿」する動画をツイッターで公開。アーティストの版権所有をめぐる音楽業界の不条理に抗議した。(フロントロウ編集部)

カニエ・ウェストが音楽業界の不条理に物申す

 これまでに合計で21つのグラミー賞に輝いた経歴を持つラッパーのカニエ・ウェストは、数日前から、数十件におよぶツイートを連投して、音楽業界に対して抱いている不満をぶちまけている。

 ほかの多くのアーティストたちと同様、自身が制作した楽曲の原盤権を所有することが非常に難しいという業界の仕組みに納得がいかない様子のカニエは、アーティストたちが置かれた現状について、「音楽業界とNBA選手は、現代における奴隷船だ。そして、俺が新たなモーセ(※)だ」、「ユニバーサルは俺に原盤権の値段を教えてくれない。だって、俺になら買えてしまうからな」などとコメント。

※キリスト教の旧約聖書で、奴隷だったヘブライ人をエジプトから連れ出したと言われる救世主

 さらに、「ソニーとユニバーサルの契約が解除されるまでは、俺は音楽をリリースしない」と宣言し、「ストリーミングが主流となった世の中では、原盤権のオーナーシップがすべて。それが収入の大半になる。コロナ禍では、今まで以上に、アーティストが自分で版権を持つことが必要になる」とも熱弁した。


日本のお笑い番組を用いてアーティストが受ける仕打ちを表現

 自分を縛るレコード会社との契約が、いかに広範囲に及ぶものかを証明するために、ツイッター上でユニバーサル・ミュージック・グループとの間で交わされた、署名が入りの契約書まで一挙公開したカニエ。

 その合間には、ネット上で見つけたと思われる、日本のお笑い番組のワンシーンの動画を用いて、原盤権を手にしようとするアーティストたちが、レーベルから受ける手厳しい仕打ちを表現していた。

「アーティストがマスター(原盤権)を手に入れようとすると、こうなる…。階段にはローションが塗られているんだよ」


名誉のはずのグラミー賞トロフィーに「放尿」

 自分だけでなく、ほかのアーティストたちや、今後アーティストを目指す若い世代にとっても、今こそ、原盤権をめぐる理不尽さを何とかしなくてはと考えているらしいカニエ。

画像: 3冠を獲得した2005年のグラミー賞にて。

3冠を獲得した2005年のグラミー賞にて。

 「すべてのミュージシャンが自由になるべきだ」と、勢いに乗ったカニエは、なんと、自身が所有するグラミー賞のトロフィーのうちの1つをトイレの便器にぶち込み、その上から放尿するという大胆な行動に。その様子を収めた動画をツイッターで公開した。


“宿敵”テイラーにも協力を促す

 「アーティストに原盤権を」という、カニエの主張は、奇しくも、カニエが10年以上にわたってバトルを繰り広げられているシンガーのテイラー・スウィフトの主張と一致する。

画像: “宿敵”テイラーにも協力を促す

 テイラーは、前所属レーベルと、同社を買収したことによりテイラーがデビューから2018年までにリリースした全楽曲の原盤権を手にした音楽マネージャーのスクーター・ブラウンとの争いが注目を集めた。

 テイラーは、結局、過去の楽曲の原盤権を購入することはできなかったが、移籍までに発表した計6作のアルバムをすべて再録する意志を明らかに。彼らとのバトルに際し、“アーティストが自分で作った楽曲の版権を所有するのが当たり前になるべきだ”と再三にわたって訴えている。

 カニエは、連投ツイートのなかで、著名なアーティスト仲間に賛同を求めたのだが、そのなかには、犬猿の仲であるはずのテイラーの名前も含まれていた。

「(U2の)ボノ、リツイートしてくれないか? ポール(・マッカートニー)、リツイートをお願い。ドレイク、ケンドリック(・ラマー)、テイラーでもいい、愛してる。君たちの力が必要なんだ」

 カニエは、レコード会社との関係を前進させるにあたり、相談をもちかけたビジネスパートナーもしくは弁護士とのメールも公開。

 カニエに宛てた返信のなかで、この人物は、カニエもテイラーのように原盤権の購入を試みるか、もしくは楽曲の再録をしてみてはどうかとアドバイス。しかし、カニエの場合には、もっとずっと“高くつく”だろうともコメントしている。

 11月に行なわれるアメリカ大統領選への出馬を表明したり、やっぱり出ないと示唆したりを繰り返しているカニエ。ここ数カ月間は、政治集会で妻キム・カーダシアンが長女ノースちゃんを妊娠した際に堕胎を考えたと涙を流しながら暴露するなど、不穏な行動が目立つことから、持病の双極性障害が影響して、精神のバランスを崩しているのではと心配されている。

 グラミー賞のトロフィーに放尿するという挑発の仕方は荒々しく、「この件について意見できるのは俺だけだ。だって、おれは音楽以外で何十億ドルも稼いでるからな。音楽以外で何十億ドルも稼いでるミュージシャンなんて、ほかにはいない。俺が変えてみせる」というカニエらしい自画自賛ぶりには、どうも引っかかるという人もいるだろう。しかし、方法はどうであれ、音楽業界をアーティストたちにとってより有利な環境に変えようという今回のカニエの主張には、多くの賛同が集まっている。(フロントロウ編集部)

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