J.K.ローリングの差別発言とキャストの反応
世界的児童小説『ハリー・ポッター』シリーズの著者であり、映画版の新シリーズである『ファンタスティック・ビースト』の原作・脚本も手がけるJ.K.ローリングは、ここ数ヵ月でトランスジェンダーの人々に対するトランスフォビア(※トランスジェンダー/トランセクシュアルに対するネガティブな感情・思想・行動)な発言や態度を繰り返しており、問題となっている。
J.K.ローリングの発言に対して、『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、ルパート・グリントは賛同しないという立場を明確にしており、また、J.K.ローリングの事務所に所属する4人の作家も、彼女に異を唱えて事務所を離れた。そして、『ファンタスティック・ビースト』で主演を務めるエディ・レッドメインも、彼女の発言に賛同しないとして、このような声明を出している。
「トランスジェンダーの人々を尊重することは文化的な必須事項であり、僕自身も何年間にもわたって、それについて知識を身につけようと努めてきました。これはまだ進化の過程にあります。
J.K.ローリング氏とトランスジェンダー・コミュニティーの人々の両方と一緒に仕事をした経験を持つ立場の人間として、僕は、自分がこの問題に対してどういった立場を取っているかを明確にしておきたいと思います。
僕はジョー(ローリング氏の愛称)のコメントには賛同しません。トランスジェンダーの女性たちも女性です。トランスジェンダーの男性たちは男性だし、ノンバイナリーの人々のアイデンティティだって正当です。僕はトランスジェンダーのコミュニティを代弁するようなことは決してしたくないけれど、大切なトランスジェンダーの友人たちや仕事仲間が、絶えず繰り返されるアイデンティティへの疑問にウンザリしているという事実は知っています。それらの疑問が暴力や虐待につながることも多すぎるほど頻繁にあるのです。彼らはただ、穏やかに暮らしたいだけです。どうか、もう、そろそろ、彼らにそうさせてあげましょう」
作家J.K.ローリングへの批判や誹謗中傷
しかし、事態はさらに悪化した。J.K.ローリングはロバート・ガルブレイスの名義で大人向けの犯罪小説『私立探偵コーモラン・ストライク』シリーズを出版しており、9月15日には、その第5弾となる新作『Troubled Blood(原題)』が発売。そして今回の犯人のキャラクターは、“女性を殺害するために女装をして犯罪を繰り返すシスジェンダー(※生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致している人)の男性連続殺人犯”だった。
これまでに制作された数々の創作物のなかで、身体的に男性であるキャラクターが女装をして殺人をする姿が描かれ、それによって観客に、トランスジェンダーやクロスドレッサーは危険な人物であるという印象づけが行なわれてきたことは、Netflixドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』の中でも語られている。
創作物において、女性や黒人などのキャラクターをステレオタイプに描いたり、はたまた物語に登場させなかったりすることは問題で、様々な人物像を描くレプリゼンテーションを求める声が大きくなっている。そしてもちろんその中には、トランスジェンダーの人々も含まれなければいけない。
そんな創作物における歴史、そしてトランスフォビア発言をしてきたJ.K.ローリングがそのようなキャラクターを描いたことから、SNS上では、彼女に対する批判が大きくなった。その結果、「キャリアは死んだ」「作家としては、もう終わっている」「もう、黙っていてくれ(安静にしておいてくれ)」という意味合いで、亡くなった人に対して使われるRIPを用いた「# RIPJKRowling(J.K.ローリングよ安らかに眠れ)」というハッシュタグがツイッターでトレンド入りするほどの事態に陥った。
エディ・レッドメインが誹謗中傷に苦言
この他にも、多くの言葉がJ.K.ローリングに向けて発信されており、その中には過激なものもある。それを受けて、J.K.ローリングの発言に賛同しないという立場を明確にしているエディ・レッドメインが苦言を呈した。
エディは英The Daily Mailのインタビューのなかで、J.K.ローリングに対するSNS上での「酷く悲惨な中傷」に危機を感じ、「本当におぞましい」と指摘。そして、J.K.ローリングに手紙を書いたことを明かした。エディは続けて、SNS上でのトランスジェンダーの人々に対する侮辱も「同様におぞましい」として、こう語っている。
「同様に、オンラインでも実社会でも、トランスジェンダーの人々へ向けた酷く激しい攻撃が続いており、それはおそろしいことです」
批判と悪口は、別のこと。J.K.ローリングの発言には異を唱えたエディだったけれど、ターゲットにかかわらず、誹謗中傷になっている発言は不適切だという立場を明確にした。(フロントロウ編集部)