『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終章で映り込んでしまったコーヒーカップの事件について、ショーランナーの2人が当時を振り返った。(フロントロウ編集部)

あるはずのない物が映り込んだ『GoT』

 2011年から2019年にかけて放送されたドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』は、1話あたり約11億円をかけていたと言われるほどの巨編。その最終章ともなれば大きな盛り上がりを見せ、最終回の放送の翌日にはアメリカで1,000万人以上がGoTロスになった一方で、その仕上がりに納得のいかなかったファンが作り直しを求める署名を立ち上げて180万人以上が賛同するなど、賛否両論となった。

 そんな注目度の高いドラマで、制作陣がやらかしてしまったことといえば、ファンならご存知の「コーヒーカップ事件」。最終章の第4話で、エミリア・クラーク演じるデナーリスの前にあるテーブルの上に、『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界には存在しないスターバックスらしきコーヒーカップが置かれており、「スタバのカップが映り込んでいる」とファンの間で大騒動になった。

 実際にコーヒーカップはスターバックスのもののように見えるけれど、正しくはどこのものだったのかは明らかになっていない。しかしスターバックスの公式ツイッターも反応するほどで、ドラゴンの母であるデナーリスに対し、アメリカのスターバックスで売られているドラゴンドリンクを引き合いに出して、「正直、彼女がドラゴンドリンクをオーダーしなかったことに驚きました」とコメントした。スターバックスが偶然にも得た“無料広告”の価値は、なんと約200億円以上にのぼると推定されている。

誰も気づかなかったことにプロデューサーもびっくり

 なんだかおもしろいこのハプニングに怒るファンはほとんどおらず、その後制作陣によってコーヒーカップが修正されて一件落着となったけれど、やはりミスがあったという連絡は聞きたくないもの。『ゲーム・オブ・スローンズ』のショーランナーであるデイヴィッド・ベニオフは、ドラマの詳細に迫ったジェームズ・ヒバードによる本『Fire Cannot Kill a Dragon』の中で、連絡を受け取った時はどっきりだと思ったと明かした。

 「信じられなかったよ。(放送の)翌日にメールを貰った時、本当に心から、誰かが僕達にどっきりを仕掛けてるんだと思った。それまでにも、誰かが『あ。背景に飛行機が映ってる!』って言って、フォトショップをしていたというようなことがあったし。『あそこにコーヒーカップがあったわけがない』と思ってTVで見たら、『なんで目に入らなかったんだ?』って感じだよ」

画像: ダン・ワイス(左)とデイヴィッド・ベニオフ(右)

ダン・ワイス(左)とデイヴィッド・ベニオフ(右)

 焦るよりもまず、信じられないという感情が沸き上がったというデイヴィッド。たしかに、あそこまで堂々と映ってしまっていては、多くのスタッフが撮影現場にもいたうえ、編集でもスタッフが映像に目を通してきたのに何故、と思わざるを得ないかもしれない。そしてそれは、もう1人のショーランナーであるダン・ワイスも同じだったよう。

 「あのシーンを何千回と見ているんだよ。そしていつも私達は、キャストの顔や画面がどうなっているかを見ていた。心理学の実験の参加者にでもなった気分さ。後ろでゴリラが走り回ってるのに、バスケットボールの数を数えていたせいで気づかない、みたいな。これまでに存在したすべてのプロダクションに、同じようなことが起こってるよ。『ブレイブハート』ではスタッフの1人が映り込んでいるし、『スパルタカス』では俳優の1人が腕時計をつけてる。でも現代では(映像を)振り返れるし、みんながその時に話すことができる。だから、1人がコーヒーカップを目にして、それを振り返る。そして全員がそうする」

 バスケットボールをしている人に気を取られてゴリラに気づかないという、ハーバード大学によって制作された有名な「選択的注意」のテストを例に出して、コーヒーカップに気づかなかったことに今でも納得がいっていない様子を見せた。

 ちなみに、コーヒーカップを持ち込んだ犯人はエミリアだと思われており、その直後にエミリアが観戦したバスケットボールの試合で、ヒューストン・ロケッツのマスコットキャラクターである熊のクラッチにイジられたり、サンサ・スタークを演じたソフィー・ターナーもエミリアだと予想していたけれど、じつはヴィリス役のコンリース・ヒルが犯人だったとエミリアが明かしている。(フロントロウ編集部)

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