世界中で多くの女性が、生理に関する問題に直面している。「生理の貧困」「衛生問題」「教育問題」とは?(フロントロウ編集部)

5月28日は月経衛生の日

 毎年5月28日は、月経衛生の日。生理はすべての女性が経験することにもかかわらず、恥ずかしいことだとされている。さらに、男性が権力を持つことが多い社会では、生理のために環境が整えられていないこともある。

 ドイツで始まった月経衛生の日の目的は、2つ。

・生理における健康と衛生に関して声をあげ、関心を高め、ネガティブな社会規範を変えること
・決定権を持つ人々に働きかけ、世界的に、全国的に、地域的に、生理における健康と衛生の政治優先順位を高め、行動を引き起こすこと

 また、2030年までに、世界のすべての女性と少女が生理によって妨げられない社会を作りだすことを目指しており、その目標には4つのものがある。

・すべての人が、自分が選択する生理用品にアクセス・購入できる
・生理に対する負のイメージは過去のもの
・すべての人が生理に関する基本的な知識を持つ(少年や男性も含む)
・すべての人が、すべての場所で、生理の時期に必要とする水源や衛生施設にアクセスできる

画像: 5月28日は月経衛生の日

生理の貧困

 生理用品にアクセスできない人がいる。「生理の貧困(Period Poverty)」は世界の問題となっており、多くの女性たちが対策を求める声をあげている。

 生理用品を買うお金がなく布や葉っぱなどで代用している女性たちや、1つの生理用品を長時間使用する女性たちは、世界中に多く存在する。

 社会派作品で知られるイギリスのケン・ローチ監督は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』のなかで、シングルマザーのケイティが食品の代金は支払った一方で、生理用品を万引きするシーンを描き、大きな反響を呼んだ。

 女性だけが直面する現実に対し、イギリスでは2020年1月より、公立の小中高の学校で生理用品の無料配布を開始。スコットランドでは2020年11月より、学校や大学などを含む公共施設で「すべての女性」に生理用品が無料提供されている。

画像1: 生理の貧困

 また、生理の貧困と合わせて問題になるのが、タンポン税。

 女性が毎月経験する生理現象にもかかわらず、各国で生理用品に高い税率がかけられてきた。例えば日本では生理用品は軽減税率の対象になっておらず、イギリスでは自転車用ヘルメットや切手などは非課税なのに、生理用品には5%の付加価値税がかけられ、ドイツでは、食品である高級食材のトリュフの税率は7%なのに、生理用品は税率19%だった。

 この異常な事態を受けて、イギリスではタンポン税が廃止され、ドイツでは生理用品の税率が7%に下げられた。ちなみに、ケニアやオーストリアなどでもタンポン税は廃止されている。

 また、企業の取り組みにも注目したい。イギリスではタンポン税が廃止される前は、大手スーパーのテスコやコープ、そしてウェイト・ローズは、店舗で販売する生理用品の税金分を、顧客に代わって企業が払うという姿勢を見せていた。

画像2: 生理の貧困

月経には整えられた衛生環境が必要

 生理の貧困によって1つのナプキンやタンポンを使い続けなければならない少女や女性たちがいる。

 しかしもちろん、1つの生理用品を使い続けることは健康を害する。とくに1つのタンポンを長時間使い続けると、黄色ブドウ球菌による毒素が原因の急性疾患トキシックショック症候群(TSS)が引き起こされることになり、それによって命を落としたり、脚を切断したりすることになった少女たちの話がニュースになってきた。

 タンポンによるトキシックショック症候群で両脚を切断したモデルのローレン・ワッサー。

 また、使用済みのナプキンやタンポンは廃棄物であり、廃棄物処理の環境が整えられていない社会では使いづらいアイテム。繰り返し使える月経カップでも、カップを洗うには清潔な水が必要で、その環境が整っていない社会に住む少女たちは、別の対策を探さなくてはいけない。

 そして、ナプキンやタンポンを取り換えるには、清潔なトイレが必要。環境整備は、早急な解決が求められる問題のうちの1つ。


生理はタブー?教育の重要性

 日本でも、保健体育の授業で、生理の話の時には女の子だけが集められたという経験をしたことがある人は多いのではないだろうか? しかし、男性が決定権を持つことが多い社会で、すべての女性が毎月経験する生理現象について男性が知らないというのは、様々な問題を引き起こす。

 2018年には、イギリスに住む20歳の女性が職場の男性上司にトイレ休憩を求めたところ、男性上司は女性が生理を自分でコントロールでき、出血を一時的に止めることができると思っていたため、休憩を許さないという出来事が。さらにその男性は、生理用品を、なんとアダルトグッズの類の製品だと思っていたという。

 生理はタブーではないと理解し、環境を整えるために行動を起こしてきた人がいるおかげで、生理用品へのアクセスや、PMS(月経前症候群)などへの理解も広がってきた。一方で、まだまだ様々な改善が求められている。

(フロントロウ編集部)

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