シンガーのホールジーがニューアルバム『If I Can't Have Love, I Want Power(イフ・アイ・キャント・ハヴ・ラヴ、アイ・ウォント・パワー)』のリリース日を発表。授乳中の姿をフィーチャーしたカバーアートを通じて、世の母親たちが直面する偏見に一石を投じた。(フロントロウ編集部)

ホールジーの新アルバムは“ロック×母性”

 TIME誌が発表した2020年版「世界で最も影響力のある100人」に選出され、ビルボード・ミュージック・アワードではトップ女性アーティスト部門にノミネートされたシンガーのホールジーは、2021年1月に待望の第1子の妊娠を発表。子宮内膜症を患い、その影響で過去に3度の流産を経験していることを明かしているホールジーが、念願だった“ママになる”という報せは、世界中のファンたちから祝福された。

 まもなく恋人で脚本家のアレヴ・エイディンとの第1子を出産予定だといわれるホールジーは、2020年にリリースし、全米アルバムチャート2位を獲得した前作『Manic(マニック)』に次ぐ、キャリア通算4作目となるニューアルバムをリリースする。

 近年、映画音楽界の巨匠コンビとして注目を浴びるトレント・レズナーとアッティカス・ロスがプロデュースを手がける同作のタイトルは『If I Can't Have Love, I Want Power(イフ・アイ・キャント・ハヴ・ラヴ、アイ・ウォント・パワー)』。日本語に訳すと「愛を手に入れられないなら、パワー(権力)が欲しい」という意味となる。

 ロックバンド、ナイン・インチ・ネイルズのメンバーでもあるトレントが関与している同作には、パンクロックを意識した楽曲がラインナップするものと見られており、ホールジーの繊細でガーリーな声質と、ここのところ再び熱い視線が集まっているパンクロック音楽がどんな風に絡み合うのかに期待が寄せられている。


授乳や産後ボディへの偏見に物申すカバーアート

 米現地時間の7月7日、ホールジーはアルバム『If I Can't Have Love, I Want Power』を8月27日にリリースすることを発表。

 それに合わせて、公式YouTubeチャンネルで1本の動画を公開し、その中で中世ヨーロッパの絵画にインスピレーションを得た芸術的なカバーアートをお披露目した。

 妊娠中のホールジーがニューヨークにあるメトロポリタン美術館内を無言で歩き、美術品の数々を鑑賞する約13分半の映像では、ゴシック期を代表するイタリアの芸術家グイド・レーニが授乳中の母の姿を描いた『チャリティ』や、ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作の『マドンナ・アンド・チャイルド(聖母子)』といった母子の姿を描いた作品がフィーチャー。さらに、男性ばかりの17世紀イタリアで活躍し、フェミニストとしても名高い女性画家アルテミジア・ジェンティレスキによる『エステルとアハシュエロス』にも焦点が当てられた。

 そして、最後には、これらの作品に着想を得た『If I Can't Have Love, I Want Power』のカバーアートが除幕。

 王冠をかぶり、黄金の玉座に腰掛けた“女王然”としたホールジーは、片方の乳房を露出しており、その腕には赤ちゃんを抱いている。アルバムとカバーアートのコンセプトについて、ホールジーはSNSを通じて次のように説明している。

「このアルバムのコンセプトは、妊娠と出産にまつわる喜びと恐怖。カバーアートには、私自身が過去数カ月間に経験した心情を反映することが重要でした。聖母と娼婦の両分とでも言いましょうか。自分がセクシャルな存在でありながら、我が子を育み恩恵を与える器(うつわ)にもなれるという2つの概念は、平和的にパワフルに共存できるものです。過去数年間、私の体はあらゆる方法において世界に属してきました。このイメージは、私が自分自身のからだの自己決定権を取り戻し、人間としての生命力や誇りや強さを確立するための方法の1つです。このカバーアートは、妊娠中や産後のボディは美しく、称賛に値するとして祝福するものです。産後の体型や授乳に関する社会の偏見を根絶するには、まだまだ長い道のりが待っています。これが正しい方向へと進むための一歩となることを願っています」

 ホールジーが実体験に基づき、妊娠、出産、産後、授乳、育児というママたちのリアルについて歌うロックなアルバムがどんな作品に仕上がっているのかとても興味深い。

 ちなみに、カバーアートに写る赤ちゃんの“正体”については記事執筆時点では明かされていない。(フロントロウ編集部)

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