ペドロ・アルモドバル監督最新作のポスターで女性の乳首の写真が使われ、インスタグラムがポスター画像を制限。批判の声があがり、謝罪した。(フロントロウ編集部)

『Madres Paralelas』のポスターがインスタで禁止に

 第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門のオープニング作品に選ばれた、スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督による『Madres Paralelas(英題:Parallel Mothers)』のポスターが、インスタグラムで制限される出来事があった。

 『Madres Paralelas』は、同じ日に同じ病院で出産した2人の女性を描く作品。アルモドバル監督作品に多く出演してきたペネロペ・クルスと、モデルで俳優のミレナ・スミットが共演する。

 本作のポスターは、母乳が出る女性の乳首の写真を中心に置き、その周りを囲むことで、乳首が人の目のようにも見えるデザインとなっている。

 ポスターは作品の内容を反映したものだが、インスタグラムは、このポスターは「サイトにおけるヌードに関するルールに違反している」として禁止対象にした。

女性の乳首だけがエロいもの?批判の声広がる

 この出来事をうけて、女性の身体だけを卑猥なものとすることに異議を唱える「Free the Nipple(フリー・ザ・ニップル)」を叫ぶ声が多くあがることになった。

 インスタグラムなどのウェブサイトでは、女性の乳首など、女性の身体は卑猥とされる一方で、男性の乳首が写る写真に対しては制限がない。そしてもちろん、このような現象はインスタグラム以外のところでも起こっている。

 2018年には、アメリカの高校で女子生徒がノーブラで出席した時に教室から追い出され、絆創膏を貼るように指示されたことが問題となった。(のちに学校側が生徒に謝罪)。2019年には、女性がビーチでトップレスでヨガを行なっていたところ、警察に逮捕される事件が発生。男性がトップレスでいても問題はないのに、女性であれば逮捕されるという状況に、多くの女性が声をあげた。

 Genderless Nipples(ジェンダーレス・ニップルズ)というインスタグラムアカウントは、男性の乳首と女性の乳首の写真をランダムに投稿。性別によって乳首の扱いが違うことはおかしいというメッセージを、写真を使って分かりやすく発信している。

画像: ⓒGenderless Nipples/Instagram

ⓒGenderless Nipples/Instagram

 『Madres Paralelas』のポスターを手がけたバビエル・ハエンは、米AP通信の取材で、憤りをあらわにした。

 「これ(乳首)は私が生まれた時に、初めて見るものと言えるでしょう。しかしインスタグラムといった企業は、私の作品は危険で、人々は見るべきでなく、ポルノだと言っている。彼らは何人の人々に、あなたの身体が悪く、あなたの身体は危険だと言っているのでしょうか?彼らは、テクノロジーは内容や文脈を識別できないと言います。そんなこと私は知りませんよ。だったらテクノロジーを変えなさい」

ポスターが復活、一方で問題も残る

 批判の声を受けて、インスタグラムはポスターへの制限を撤回。インスタグラムの親会社であるフェイスブックは、米AP通信に、「私たちは特定の状況であれば、ヌードを許容する例外を設けています。明らかなアート的文脈がある場合などです。よって、アルモドバルによる映画のポスターをインスタグラムに戻しました。混乱を招いたことに謝罪致します」とコメントした。

 しかしこのコメントからは、女性と男性が違う扱われ方をしていること、女性の身体だけが性的なモノとされている状況についての言及はない。また、アート業界における女性の性的搾取は長年問題となっており、アート的文脈がある場合は許容して良いというものでもない。

 しかしながら、ポスターが制限される状況は改善されたことで、アルモドバル監督は米Indie Wireにこうコメントした。

 「『Madres Paralelas』のポスターをサポートしてくれた人々、画像を2回以上投稿してくれた人々、女性の乳首の見方に正気が必要だと議論してくれた人々、それについてメディアで話してくれた人々、全員に感謝します」

 また監督は続けて、アルゴリズムを含むテクノロジーや機械が物事を決定していることに強い危機感を唱えた。

(フロントロウ編集部)

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