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ジェンダーアイデンティティである「ノンバイナリー」ってどういう意味? どんな人がノンバイナリーなの? 当事者6人の発言をご紹介。(フロントロウ編集部)

ノンバイナリーって?

 生物学的な性別(sex)に対して社会の中で作られる“女らしさ”や“男らしさ”といった社会的な性別であるジェンダー(gender)。ジェンダーには「女性」または「男性」の2つがあると考える人が多いが、これは2元という意味があるバイナリーという言葉を使って「ジェンダー・バイナリー」と呼ばれている。binary(2元)とnon(ではない)という英語から作られた言葉ノンバイナリー(nonbinary)は、男女どちらかという2元の考えに当てはまらない人たちを表している。

画像: ノンバイナリーって?

 ノンバイナリーの人の中には、ある日は女性的に感じるし別の日は男性的に感じる人、男女両方だと感じる人、女性とも男性とも感じない人など、さまざまな自認が存在する。さらに、ノンバイナリーの人はsheやheではなくthey/themというジェンダー代名詞を使う人が多いが、なかには、sheやheを使う人も存在する。大事なのは多様なジェンダー自認が存在することを理解し、当事者それぞれの声に耳を傾けること。さらに、100%理解できないからと言って侮辱したり失礼な態度を取ったりする必要もない。この記事では、ノンバイナリーであることを公表しているセレブリティの発言から、それぞれが自認するノンバイナリーの意味を紹介する。

画像: ノンバイナリー・フラッグ。黄色はジェンダーがジェンダー・バイナリーの外に存在する人、白は多くのまたはすべてのジェンダーを持つ人、紫はジェンダーが男性と女性の混合と考える人、黒はジェンダーを持たないと自認している人を表している。

ノンバイナリー・フラッグ。黄色はジェンダーがジェンダー・バイナリーの外に存在する人、白は多くのまたはすべてのジェンダーを持つ人、紫はジェンダーが男性と女性の混合と考える人、黒はジェンダーを持たないと自認している人を表している。

6人の当事者が語る、自分にとってノンバイナリーとは

デミ・ロヴァート

画像: デミ・ロヴァート

 2021年3月にパンセクシャルであることをカミングアウトした、元ディズニー・チャンネル・スターであるシンガーのデミ・ロヴァートは、5月にはノンバイナリーであることをカミングアウトすると同時にジェンダー代名詞を「they/them」に変更することを発表した。2021年9月に出演した米情報番組『Today』ではこう語った。

「(ノンバイナリーの人)全員の考えや経験を代弁することはできませんが、私個人の話としては、自分のスピリチュアルな部分と向き合う過程のなかで、自分が単なる女性でも、単なる男性でもなく、両方であり、男性的なエネルギーと女性的なエネルギーを平等に持っていること、つまり両方であることを認識したのです。

いろいろな人に、私自身にとってノンバイナリーであるとは何かを教えるのは素晴らしい経験です。同時に、私のジェンダー代名詞を間違ってしまうことがあるのも理解しています。実際、私自身も間違えることがありますし(笑)。私は人生の29年間を女性として生きてきて、たった数か月前にノンバイナリーであることをカミングアウトしたばかりなので、今でも時々『いつかおばさんになるのが待ち遠しい』と言ってしまい、『あれ、こういう時どういうんだっけ』となることがあります」


サム・スミス

画像: サム・スミス

 2019年にインスタグラムにて「人生においてずっと自分のジェンダーと闘ってきた私は、内面も外面も含めて自分自身を受け入れることにしました」と言って、ジェンダー代名詞をhe/himからthey/themに変更すると発表した、グラミー賞シンガーのサム・スミス。この約半年前にYouTubeに公開されたジャミーラ・ジャミルとのインタビューでは、こう語っていた。

「たまに、『自分は性転換がしたいのか?』と自問することがあった。未だに自問しているよ。したいのか?とね。でも違うと思っているんだ。ノンバイナリーやジェンダー・クィア(※)という言葉を知り、これについて読み、人の話を聞いたとき、『ああ、これ自分のことだ』って思ったんだ。ノンバイナリーやジェンダー・クィアとは、ひとつのジェンダーだとは自認しないということ。君は君ってだけ。君は様々なことが混ざった存在だということ。君は自分自身が作り出した特別なもの。自分はそうとらえているよ。自分は男性でも女性でもなく、そのあいだを浮遊している」

※ジェンダー・クィア:女性か男性という従来のジェンダーの区別に沿わないジェンダー・アイデンティティを持つ人のこと。


ルビー・ローズ

画像: ルビー・ローズ

 Netflixの人気ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』でブレイクし、『トリプルX:再起動』や『ジョン・ウィック:チャプター2』などのアクション映画で活躍してきたルビー・ローズ。2014年に、ジェンダーロールや、トランス、そして現状から逸脱したアイデンティティを持つことについてのショートフィルムをYouTubeに公開したルビーは、ジェンダーフルイドという自認について英Guardianでこう語った。

「私は(女性でも男性でも)どちらでもないような気がします。まあ、どちらか選ばなくてはいけないなら、男の子、男性ですね。私は男の子のような気がしますが、体の違う部分を持って生まれてくるべきだったとか、そういうことは感じません。もっと、服装や話し方、見た目や感じ方のような気がする」


ジョナサン・ヴァン・ネス

画像: ジョナサン・ヴァン・ネス

 Netflixの人気番組『クィア・アイ』のメンバーである美容エキスパートのジョナサン・ヴァン・ネスは、2019年6月に米Outのインタビューでノンバイナリーであると公表。ジェンダー代名詞は「he/him」のままを使っているジョナサンは、同インタビューの中で、自身のジェンダー自認についてこう語った。

「年を重ねて、ますます自分がノンバイナリーだと自認するようになった。私はジェンダー・ノンコーフォーミング(※)です。だから、男性な気分の日もあるし、女性な気分の日もある。なんていうか、私のバイブスはいろんなところに拡散している」

「ある日は男の子のように感じ、ある日は女の子のように感じるのです。私は、自分がノンコンフォーミングやジェンダークィア、ノンバイナリーであることが許されるとは思っていませんでした。私はずっと『ゲイの男性』でしたが、それが自分に与えられたラベルだと思っていたのです」

※ジェンダー・ノンコーフォーミング:自身に割り当てられたジェンダーが社会的・文化的に期待されている行動・外見をしない人のこと。


エイジア・ケイト・ディロン

画像: エイジア・ケイト・ディロン

 北米のテレビ番組としては初めてノンバイナリーの役をメインキャラクターとして登場させたドラマ『ビリオンズ』で、その役テイラー・メイソンを演じるエイジア・ケイト・ディロン。they/themのジェンダー代名詞を使うエイジアは、実はこの役柄との出会いが、自身のノンバイナリーというアイデンティティを確信するきっかけになったと米ABC Newsに話した。

「ノンバイナリーとは、私もそうですが、自分のジェンダー・アイデンティティが男性か女性という伝統的な枠の外にあると感じている人たちが使う言葉です。私は、このような言葉が存在することを知る以前から、このようなことを考えていました。ジェンダーアイデンティティとは何か? なぜバイナリー(2元)のカテゴリーしかないのか?とね。そして『ビリオンズ』の脚本をもらったとき、自分の役であるテイラー・メイソンは“ノンバイナリーの女性”と書かれているのを見て、『どうしたらこの2つが共存できるのか?違いはあるのか?』と考えました。そして調べてみると、女性とは生まれた時に割り当てられた性別で、ノンバイナリーはジェンダー・アイデンティティで、その2つは違ったのです。それが、今まで自分が感じていたことに言葉を与えるきっかけとなりました」


ニコ・トルトレッラ

画像: ニコ・トルトレッラ

 大学時代に出会って10年以上の交際を経て2018年に結婚した、ドラマ『Younger/ライザのサバヨミ大作戦』や『ウォーキング・デッド: ワールド・ビヨンド』の俳優ニコ・トルトレッラと、フィットネス起業家のベサニー・C・マイヤーズ。2人はそれぞれノンバイナリーであることを公表しており、they/themというジェンダー代名詞を使っている。これについてニコは、著書『Space Between』でこう書いた。

「私にとって they/themは、多次元的でダイナミックな存在である私を完全に包括しています。そうでしょう?より包括的な感じがするんです。より幅広く感じるのです」

 また、自身にとってのノンバイナリーの意味については、トーク番組『Tamron Hall』でこう語った。

「ノンバイナリーというアイデンティティは、その人がノンバイナリーであるかどうかにかかわらず、一人一人にとって全く異なる意味を持っています。ノンバイナリーというアイデンティティーやジェンダーに関することは、私にとってはむしろ精神性や自己決定に関するものです。私たちにはこの2つの選択肢しか与えられてきませんでした。でも他にもあったらどうでしょう?」

(フロントロウ編集部)

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