シンガーのデミ・ロヴァートがノンバイナリーであることをカミングアウト。自身を表現するプロナウン(代名詞)を今後「They/ Them」とすると発表した。(フロントロウ編集部)

デミ・ロヴァートが「ノンバイナリー」をカミングアウト

 ディズニーチャンネル出身のシンガー、デミ・ロヴァートがノンバイナリーだとカミングアウトした。「ノンバイナリー(non-binary)」とは、男性や女性どちらにも分類・限定されないジェンダーのこと。男性と女性の両方を感じる、そのどちらでもないなど、その表現はさまざまで”第3のジェンダー”と呼ばれることもある。

画像: デミ・ロヴァートが「ノンバイナリー」をカミングアウト

 以前からクィア(※)を公言し、2021年3月には、自身のセクシャリティ(性的指向)に関して、相手の性別やジェンダーにかかわらず人を好きになるパンセクシャル(全性愛者)であることを打ち明けたデミは、新ポッドキャスト『4D withDemi Lovato』に関する告知に先立ち、ツイッターを通じて自身のジェンダーアイデンティティ(性自認)について次のようにコメント。

※セクシャル/ジェンダーマイノリティを総称する呼び名。ストレート(異性愛者)やシスジェンダー(心と体の性が一致している人)以外の人のことを意味する場合が多い

 「私の人生について、みなさんにより詳しくシェアできる今日という日を迎えられたことをとても幸せに思います。私は、自分がノンバイナリーであると自認していることを誇りをもってお知らせします。それと同時に、今後はプロナウンを『they/them』に変更します」

 2018年8月に薬物の過剰摂取で意識不明に陥り、生死の境をさまよった経験を持つデミは、「この発表は、たくさんの癒しや内省の末のものです。私はまだ学んでいる最中で、自分について知ろうとしているところ。(この分野における)専門家やスポークスパーソンになろうというつもりはありません。ただ、みなさんと共有することで、自分のより繊細な部分をさらけ出すという意味で、新たな扉を開くことができるのです」と、自分自身とじっくりと向き合った結果、ノンバイナリーであることを公表しようと決めたと明かした。


プロナウン「they/them」とは?

 最近では、インスタグラムのプロフィール欄にも記載することができるようになったプロナウン(代名詞)。

 かつては、自身の性自認・性表現が女性の人に対して使われる「she/her」、男性の人に対して使われる「he/him」と2択だったが、時代の流れとともに、女性・男性という枠組みに当てはまらないノンバイナリーの人などに対して使われる「they/them」が使われるようになった。

画像1: プロナウン「they/them」とは?

 英語では「they/them」という単語は、おもに三人称複数として使われてきたけれど、主語となる人物のジェンダーが分からない場合などには単数形としても使えという特性がある。これを応用し、会話や文章、そして社会的認識におけるジェンダーのバリアを取り払ったのが、ノンバイナリーの人々が使う「they/them」というプロナウン。

 2019年には、英英辞書で有名なウェブスター辞書を出版する老舗出版社のメリアム・ウェブスターが、この言葉をワード・オブ・ザ・イヤーに選出した。

 デミはこれまで、自身のジェンダーに関して、生まれたときに割り当てられた「女性」としてきたため、デミについて話す/書く時には「she/her」というプロナウンが使用されてきたが、今後はデミの希望に沿い、「they/them」と表現されるようになる。

画像2: プロナウン「they/them」とは?

 エンタメ界では、ここ数年のあいだに、グラミー賞シンガーのサム・スミス、リアリティ番組『クィア・アイ』のジョナサン・ヴァン・ネス、ドラマ『グレイズ・アナトミー』のサラ・ラミレス、映画『ハンガー・ゲーム』のアマンドラ・ステンバーグをはじめ、ほかにも多くの人が「they」という代名詞を使うと発表。

 その多くが、自分自身の生きやすさや心地良さはもちろん、影響力を持つ立場にある自分がノンバイナリーであることや希望するプロナウンを明言することで、ジェンダーアイデンティティについて悩みや葛藤を抱えている人たちを少しでも勇気づけたいという意図を持って行動を起こしているが、デミの今回のカミングアウトにも同様の想いが込められている。

画像: 左から、サム・スミス、ジョナサン・ヴァン・ネス、サラ・ラミレス、アマンドラ・ステンバーグ

左から、サム・スミス、ジョナサン・ヴァン・ネス、サラ・ラミレス、アマンドラ・ステンバーグ

 デミはカミングアウトを行なった投稿の最後に、「まだ大切な人に本当の自分を見せることができていないという人たちのためにも、今回の発表をする決断をしました。どうか、自分にとっての真実を生きてください。私はあなたにたくさんの愛を送ります」という当事者たちを応援するメッセージも添えている。(フロントロウ編集部)

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