親チベットの姿勢でキアヌが中国から禁止に
キアヌ・リーブスの出演作が、中国の動画ストリーミングサービスから軒並み禁止される事態になっている。米LA Timesが報じたところによると、テンセントビデオやiQiyi、bilibili、Xigua Videoなどから、キアヌの出演作が消えたという。
じつは、これは予期されていたことでもあった。この原因は、キアヌが3月3日に、アメリカのチベットハウスが主催するイベントに参加したことだと見られる。チベットハウスはダライ・ラマ法王の命によって設立された団体。中国はチベットの自治権を認めず、厳しい取り締まりを行なってきていることから、1月にキアヌの出演が発表された時点で、当時劇場公開中だった『マトリックス レザレクションズ』をボイコットしようと呼びかける声が、インターネットユーザーのなかからあがっていたのだ。
米LA Timesはあわせて、YoukuとMigu Videoではキアヌが声優の1人として参加した『トイ・ストーリー4』は視聴可能だが、クレジットシーンでは声優であるキアヌの名前は表示されず、中国語吹き替えのキャストの名前が表示される形で配信されていると伝えている。
『マトリックス』3部作や『スピード』、『イルマーレ』、『結婚適齢期』といったキアヌ作品が“締め出し”をくらったが、これが政府による検閲なのか、各サイト独自の対応なのかは不明。
“良い人”キアヌを禁止するなんて…?
イベントへの参加は1月から話題になっており、自分が中国政府から目をつけられそうだということにはキアヌ側は気がついていたはず。しかしそれでもイベントに参加したというのは、それなりの意思があってのことだろうか。
ちなみに、アメリカのチベットハウスは慈善イベントを1989年から年に1度開催してきており、デヴィッド・ボウイやパティ・スミス、イギー・ポップといった伝説的ミュージシャンたちが出演してきた。2022年のイベントにも、イギーや、有名司会者のスティーヴン・コルベアらが参加した。
とはいえキアヌは俳優であり、中国における映画の興行成績は重要。最近では、ハリウッド映画の制作陣が自ら、中国で公開禁止にならないように自己検閲を行なう時があることが問題となっており、“キアヌが出演すると中国で公開できないかもしれない”というレッテルを貼られると、彼の今後の仕事に影響が及びかねなない。
しかし、少なくとも英語圏のファンからはキアヌの人気は変わっていないどころか、さらにあがっているよう。キアヌといえば、自分のギャラを他の制作スタッフに分けたり、多額の寄付を様々な団体にしていたり、関わる人への気づかいを忘れなかったりと、“良い人”として有名。
そのため、キアヌは中国へ忖度することはないのだろうと、「キアヌはこんなことは気にしない」と話すファンや、良い人として有名なキアヌを禁止した中国に対して、「キアヌ・リーブスの映画を禁止した中国は、自分で自分を傷つけてるね」とジョークを言うファンが続々。
ソフトウェア開発者のグラディ・ブーチ氏は、「世界で完全に最も良い人間である1人、キアヌ・リーブスに政府が丸ごと対立する時、明らかに彼らが歴史における間違ったほうだって分かるだろう」とツイートした。
ちなみに、キアヌと働いたことがあるというキャスティングディレクターは米Page Sixに、「キアヌが60もの映画に主演している理由は、観客はもちろんのこと、監督たちも彼が大好きで、共演者たちも彼が大好きで、スタッフたちも彼が大好きだからですよ」と話したことがある。キアヌへの出演オファーは今後も減ることはないだろう。
(フロントロウ編集部)