最多ノミネーションは誰?
前回の第63回グラミー賞では、最多となる9部門にノミネートされていたビヨンセが4部門を受賞して最多受賞者となり、通算28冠を獲得して女性としては歴代最多の受賞者となった。一方、主要4部門についてはビリー・アイリッシュ(年間最優秀レコード賞)、テイラー・スウィフト(年間最優秀アルバム賞)、H.E.R.(年間最優秀楽曲賞)、メーガン・ジー・スタリオン(最優秀新人賞)という4人の女性アーティストたちがそれぞれ1部門ずつ受賞した。
今年の最多ノミネーションは、年間最優秀アルバム賞と年間最優秀レコード賞、年間最優秀楽曲賞の3つの主要部門を含め合計11部門にノミネートされているジョン・バティステ。
彼の後を追うように、ジャスティン・ビーバーとドージャ・キャット、H.E.R.の3人が8部門にノミネートされているほか、第62回グラミー賞で主要4部門を制覇したビリー・アイリッシュと、2021年に最もブレイクした新人アーティストとなったオリヴィア・ロドリゴがそれぞれ7部門へのノミネートで続いている。
主要4部門制覇がかかるオリヴィア・ロドリゴとフィニアス
2年前の第62回グラミー賞では、ビリー・アイリッシュが弱冠18歳にして主要4部門をすべて受賞し、世間に衝撃を与えたが、今年は主要4部門すべてにノミネートしているアーティストが2人もいる。
1人は、2021年1月にデビューシングル「drivers license」をリリースして以降、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界的なスターへと一気に上り詰めたオリヴィア・ロドリゴ。彼女はその「drivers license」で年間最優秀レコード賞と年間最優秀楽曲賞にノミネートされているほか、全米・全英を含む全15か国のチャートで1位を獲得したデビューアルバム『サワー』で年間最優秀アルバム賞にノミネートされている。
そしてもう1人は、ビリー・アイリッシュの兄にして、右腕として彼女の唯一のコラボレーターを務めているシンガーソングライター/プロデューサーのフィニアス・オコネル。共作したビリーの楽曲「Happier Than Ever」で年間最優秀レコード賞と年間最優秀楽曲賞に、ビリーのアルバム『ハピアー・ザン・エヴァー』で年間最優秀アルバム賞にノミネートされているフィニアスは、単独で最優秀新人賞もノミネート。もしフィニアスが主要4部門を制覇すれば、きょうだい揃って主要4部門を制覇した、史上初の例となる。
BTS、K-POPアーティストとして初のグラミー賞受賞なるか?
2021年を代表する大ヒット曲「Butter」で、2年連続で最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞にノミネートされたK-POPグループ、BTSが今年は受賞するかも注目ポイントの1つ。
年間を通じた大活躍もあり、主要4部門へのノミネートも有力視されていたBTSだったが、蓋を開けてみればノミネートは最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞の1部門のみ。昨年はレディー・ガガとアリアナ・グランデの「Rain on Me」に同賞を譲ったが、今年はトニー・ベネット&レディー・ガガの「I Get a Kick Out of You」、ジャスティン・ビーバー&ベニー・ブランコの「Lonely」、コールドプレイの「Higher Power」、ドージャ・キャット&シザの「Kiss Me More」と並んでノミネート。
名曲揃いのカテゴリーだが、もしBTSが念願のグラミー賞を受賞すれば、K-POPアーティストとして初めてのグラミー賞という、歴史的な快挙となる。
誰がパフォーマンスする?
グラミー賞といえば、毎年の豪華アーティストたちによるパフォーマンスも絶対に見逃せない。今年は、第一弾アーティストとして、BTS、ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴ、リル・ナズ・X & ジャック・ハーロウ、ブランディ・カーライル、オズボーン・ブラザーズの出演が発表。
続けて、第二弾アーティストとしてクリス・ステイプルトンとフー・ファイターズ、ジョン・バティステ、H.E.R.、ナズの出演に加え、ベン・プラットとシンシア・エリヴォ、レスリー・オドム・Jr.、レイチェル・ゼグラーが出演する、映画『ウエスト・サイド・ストーリー』などで知られる名作曲家スティーヴン・ソンドハイムの追悼パフォーマンスが行なわれることも決定した。
さらには、第三弾アーティストとしてブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるシルク・ソニック、ジョン・レジェンド、キャリー・アンダーウッド、J.バルヴィン & マリア・ベセラの出演が追加で発表。加えて、第四弾アーティストとしてジャスティン・ビーバー & ダニエル・シーザー & ギヴィオン、レディー・ガガがパフォーマンスを行なうことも発表された。
カニエ・ウェストはキャンセルになったと報道
一方、今年のグラミー賞で5部門にノミネートされているカニエ・ウェストもパフォーマンスを披露することが予定されていたが、“ネット上の問題行動”を理由に出演者のラインナップから外されたことが明らかになった。
フロントロウで何度かお伝えしてきたが、カニエは離婚調停中のキム・カーダシアンの現在の恋人であるピート・デヴィッドソンや、ノース、セイント、シカゴ、サームという4人の子供たちの共同での子育てめぐってキムをインスタグラムで頻繁に批判してきており、インスタグラムから24時間の停止処分を受けたこともあった。
パフォーマーとしての出演はキャンセルとなったが、ノミネートされているアーティストとして、授賞式そのものには出席するのかが注目されている。
テイラー・ホーキンスの急逝を受けてフー・ファイターズもキャンセル
今年のグラミー賞で最優秀ロック・アルバム賞、最優秀ロック・ソング賞、最優秀ロック・パフォーマンス賞の3部門にノミネートされており、通算12度のグラミー賞受賞を誇るロックバンド、フー・ファイターズ。第一弾アーティストとして授賞式でパフォーマンスを行なうことが発表されていた彼らだったが、先日、南米ツアーで滞在していたコロンビアのホテルで、ドラマーのテイラー・ホーキンスが胸の痛みを訴え、救急車が向かうも蘇生することができず、そのまま帰らぬ人に。
バンドはテイラーの急逝を受けて、予定されていたツアーをすべてキャンセル。グラミー賞でのパフォーマンスも辞退することが発表された。
一方で、アメリカでグラミー賞を放送するテレビ局CBSのジャック・サスマン氏は、「私たちは何かしらの形で彼(テイラー)の思い出を称えるつもりです。関わる全員に敬意を払うためにはどんな方法がふさわしいか、検討したいと思っています」と米Varietyにコメント。「直前まで計画を練る予定です」とし、授賞式のなかでテイラーを追悼する時間をもうけようと検討していることを明らかにした。
セレーナ・ゴメスやダヴ・キャメロンが初めてノミネート
今年は、セレーナ・ゴメスとダヴ・キャメロンという、ディズニー・チャンネル出身の2人の人気スターが初めてグラミー賞のノミネーションを獲得した年でもある。
セレーナは2021年3月にリリースした自身初のスペイン語によるEP『Revelación(リヴェラシオン)』で、最優秀ラテン・ポップアルバム部門にノミネート。長年にわたってシンガーとして活動してきたセレーナ本人も、初ノミネーションには興奮が隠せず、「冗談でしょ!? 『Revelación』がグラミー賞にノミネートされた!このプロジェクトは多くの理由で私にとって特別なものであり、この信じられないようなチームが私のそばにいなければ実現できなかった。1人1人に感謝している。そして、もちろんファンのみんなにも」とインスタグラムでリアクションした。
一方、ダヴは、自身が出演したApple TV +のドラマ『シュミガドーン!』第1話のサウンドトラックが「映画、テレビその他映像部門の最優秀編集サウンドトラック賞」にノミネート。ダヴにとって、グラミー賞へのノミネーションは言葉を失うほどの衝撃だったようで、当時、ただ一言「私」とだけツイートしてこのニュースに反応した。
ちゃっかりノミネートされたザ・ウィークエンドの受賞の行方と、秘密委員会の廃止
第63回グラミー賞では、シングル「Blinding Lights」が2020年に世界で最も売れたシングルになるなど世界的に大ヒットし、グラミー賞の目玉になると見られていたザ・ウィークエンドが1部門もノミネートされず、大きな騒動に。
ザ・ウィークエンドはこれを受けて、グラミー賞と絶縁することを決断。「僕は今後一切、レーベルがグラミー賞に僕の楽曲を提出することを許さない」と語り、グラミー賞に自身の楽曲を提出しないことを宣言した。
グラミー賞とは縁を切ったザ・ウィークエンドだったが、今年のグラミー賞では、フィーチャリングで参加した、自身が所属するレーベルではない他のレーベルからリリースされた作品がノミネート。ドージャ・キャットの『プラネット・ハー』とカニエ・ウェストの『Donda(ドンダ)』で主要部門の1つである年間最優秀アルバム部門にノミネートされたほか、『Donda』に収録されている「Hurricane」で最優秀メロディック・ラップ・パフォーマンス部門にノミネートされている。
ザ・ウィークエンドがグラミー賞と縁を切る理由として当時挙げたのが、ノミネーションなどを選出するグラミー賞の“秘密委員会”の存在。秘密委員会は、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーの記述によれば「15人〜30人の極めて高いスキルを持った音楽関係者」からなる組織で、グラミー賞の会員たちの投票によって絞られたノミネーションを「監査する」役割を持ち、委員会による秘密の投票で最終的な候補者たちを絞り込んでいた。
秘密委員会はその名の通り、透明性がなかったことから、ザ・ウィークエンドを筆頭に多くのアーティストたちやファンから批判が殺到。今年からは秘密委員会は廃止されている。その一方で、今年は、2部門にノミネートされていたドレイクが、ノミネーション発表後にグラミー賞を辞退するということもあった。
その影響力の大きさ故に、ジェンダーやセクシャリティ、人種などにおいて適切なレプリゼンテーションが求められるグラミー賞。昨年は、女性アーティスト4人が主要4部門を受賞し、女性の活躍が目立ったが、果たして今年の受賞結果はどうなるだろうか?
第64回グラミー賞授賞式は、WOWOWにて日本時間4月4日(月)午前8時より独占生中継で放送される。(フロントロウ編集部)