ジャスティン・リン監督もヴィン・ディーゼルと不仲に?
『ワイルド・スピード』シリーズ最新作であり、最終2部作の前半となる10作目より、ジャスティン・リン監督が離脱を発表した。リン監督はこれまでに、シリーズ3作目から6作目の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』、『ワイルド・スピード MAX』、『ワイルド・スピード MEGA MAX』、『ワイルド・スピード EURO MISSION』、そして9作目の『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』でメガホンと取ってきており、現在の『ワイスピ』シリーズを形作った人物のうちの1人と言えるが、スタジオ側とクリエイティブ面で折り合いがつかなかったこと、そして降板の決定は「友好的なもの」であったことが発表されている。
しかしながら、監督は、主演でありプロデューサーでもあるヴィン・ディーゼルと上手くいっていなかったと米THRが伝えている。シリーズでルーク・ホブスを演じたドウェイン・ジョンソンもまた、ヴィンの現場での態度に痺れを切らして、メインシリーズへの出演はもうないと公言しており、もしリン監督とヴィンの不仲が事実なのであれば、ヴィンとの関係が原因でシリーズから離脱した人物は2人目となる。
一方で、リン監督はプロデューサーとしては今後も『ワイルド・スピード』シリーズに携わっていく。
スタジオはセリフを別の脚本家に依頼、頻繁な変更
スタジオと監督の間にも意見の不一致があったことは事実であり、また、現在の世界情勢も映画の制作に影響を及ぼした。
10作目の撮影のために確保されていた重要なロケーションがあったが、それは東ヨーロッパだったため、ロシアのウクライナ侵攻を受けて変更になったという。また、10作目に登場する悪役としてジェイソン・モモアによる新キャラクターと、シャーリーズ・セロンによるサイファーは決定しているが、この他にも登場する予定だそうで、そのキャスティングが終わっていないという。
また、監督は脚本も手掛けていたが、スタジオはそのなかのいくつかのセリフを別の脚本家に改善してもらおうとしたそうで、監督はそのことについて不満を抱いていたと、関係者がTHRに話している。
リン監督とヴィン、意見の不一致
映画やドラマの脚本が変更になることは『ワイルド・スピード』に限ったことではなく、珍しいことではない。そして、シリーズに出演したがっていたヘレン・ミレンのために、すでにゴーサインが出ていた脚本を変更してマグダレーン・ショウを登場させたことは、ヴィン本人が明かしているため、彼が脚本の変更を指示することがあるのは事実。
しかし、頻繁な脚本の変更を含む問題発生が続いたことは、監督を疲れさせた。米THRによると、4月23日に監督はヴィンと大きな意見の不一致を経験し、その後、他の関係者2名を含めた会議に。ヴィンはその会議でさらに新たな指示をしたそうで、「この映画には自分のメンタルヘルス(をすり減らす)価値はない」と言ったと、関係者が明かしている。この件について、監督もヴィンもコメントを拒否している。
一方で制作・配給会社のユニバーサル側は、「リン氏の脱退はスタジオ(との関係)が理由であり、他のプロデューサーやキャスト、スタッフ(が理由)ではありません」とコメントしており、監督とヴィンの不仲を暗に否定している。
監督変更で1日1億円のコストか
10作目の撮影から数日で降板した監督。米Varietyが関係者から入手した情報によると、セカンドユニット(第2班)の撮影はイギリスで続けられているが、主要撮影は次の監督が雇われるまで中断となる。そのため、キャストやスタッフをキープするためにさらなる費用がかかってくるが、その費用が、なんと1日60万ドルから100万ドル(約7,900万円から1億3,000万円)になると予想されるという。
アクションが見どころの『ワイルド・スピード』だが、そのセットが完成しているかどうかで、費用も変わってくるという。とはいえ、監督の降板はシリーズのインスタグラムでも発表され、その声明にはシリーズのフォントやロゴが使用されていたため、実際に降板が決まってから発表されるまでには時間があったと予想でき、スタジオはすでに後任の監督を探し始めていたと見られる。
後任の監督決定か
シリーズ作品を手掛けてきた歴代監督は他に、1作目の『ワイルド・スピード』のロブ・コーエン、2作目の『ワイルド・スピードX2』のジョン・シングルトン、7作目の『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワン、8作目の『ワイルド・スピード ICE BREAK』のF・ゲイリー・グレイ、そしてスピンオフ作品『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のデヴィッド・リーチがいる。
ワン監督は『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』のポストプロダクション中、グレイ監督は『Lift(原題)』の撮影中、リーチ監督は『Fall Guy』の撮影開始を控えており、シングルトン監督は2019年に死去。コーエン監督はここ数年で、実の娘を含む数名の女性たちから過去の性暴力を告発されている。
これらの理由から、歴代監督が後任になることは難しいと考えられていたが、その考えは正しかったよう。現在、映画『トランスポーター』や『グランド・イリュージョン』といった作品を手掛けてきたルイ・レテリエ監督にオファーが出されているという。
『ワイルド・スピード』作品ということで、カーアクションの映像を撮ることに慣れている監督が望まれてきたが、デッカード・ショウ役で有名なジェイソン・ステイサムの過去の主演作『トランスポーター』はカーアクション映画であり、さらに『グランド・イリュージョン』は大がかりなマジックで世界を熱狂させるチームの物語をCGを使って映像化した作品。そんな映画を制作してきたレテリエ監督であれば、『ワイルド・スピード』作品も見事に仕上げてくれると期待できる。
(フロントロウ編集部)