※この記事には、映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のネタバレが含まれます。
『ワカンダ・フォーエバー』納得の新ブラックパンサー
チャドウィック・ボーズマンの突然の死によって、続編のストーリーが当初の構想と異なるものになった『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』。しかしその内容は高い評価を得ている。
チャドウィックががんで急死したのが、2020年8月28日。当初はチャドウィックなしの続編を望まない声も出たが、11月に1作目のエグゼクティブ・プロデューサーであるビクトリア・アロンソが、デジタル技術を用いてティ・チャラを復活させることはしないとコメントし、12月にマーベル・スタジオが代役を立てることもせず、「1作目で紹介されたワカンダの世界観と豊かなキャラクターたちを探求」することを正式に発表。
その後、予告編でブラックパンサーと見られるキャラクターが少し映し出されたことで、誰かがティ・チャラに代わってブラックパンサーとなったと思われ、2022年11月に公開された『ワカンダ・フォーエバー』によって、ブラックパンサーの後継者が妹のシュリであることが分かった。
ティ・チャラにはきょうだいがシュリしかいないうえ、シュリがブラックパンサーとなる流れはコミックス版でも描かれていたことなので、多くのファンはその展開を予想していたとはいえ、伝統を好まず、科学者として情熱を持つシュリが葛藤しながらもブラックパンサーとしてリーダーとなっていく姿には多くの観客が涙した。
しかし、現実にチャドウィックが夭逝したのはまったく予期せぬことだったため、シュリをブラックパンサーにするという決断までには議論も行なわれたはず。Marvel.comにライアン・クーグラー監督が話したところによると、後をどうするかという議論よりも、何を伝えるのかというコンセプトについて話し合いが進み、そのなかでシュリが主人公となることは明白になっていったという。
「チャドの死去は本当に予期せぬものでしたから、それ(シュリがブラックパンサーになること)が明白なことだったとは言い難い。しかし、それは理にかなった選択でした。何がテーマであるかに気がつき、ティ・チャラの死去について話す時、誰が最もその死の影響を受けるでしょうか?シュリが私たちの映画を繋ぐ存在になるべきだというのは、明らかになりました」
一方で、シュリを演じるレティーシャ・ライトは、自分がブラックパンサーになるというアイディアには驚いたという。しかしチャドウィックを思い、監督の意思を理解し、全力を尽くすことを決めたという。
「人々をインスパイアし続けなくてはなりません。前に進み続けなければ。ライアンが電話をくれた時は、難しいことでした。しかし彼はゆっくりと優しく、この映画でどうやって私たちはチャドを称え、私たちが家族として作り上げたものを称えることができるのかという彼の意図を説明してくれました」
そんなレティーシャの意志を、プロデューサーのネイト・ムーアはこう称賛する。
「レティーシャは、第1にそれが人々にとってどのような価値を持っているのか、そして第2にアーティストとしての、パフォーマーとしてのチャドウィックにとってこのシリーズがどのような価値を持っていたのか、ということを理解していました。彼女が、自分があのスーツを着て、映画を引っ張っていくことを予想していたかは分かりませんが、100%やる気でした。それこそが、彼女や彼女の魂の功績だと思います。彼女の元へ行き、“ねぇ。このシリーズを続けたい。そして君がその中心に立つべき人物だと思っている”と伝えるのは、大きなことでした。しかし彼女はやる気に満ちていて、ストーリーを届ける人物としての責任から逃げることはなかった」
ブラックパンサーになる気はなかったシュリが、愛する兄から助言を受けることもできないなかで、後継者として国のトップに立つ。架空の世界を舞台にするその物語が非常にリアルだったのは、監督の手腕と、レティーシャの演技力が成し遂げたものだろう。
(フロントロウ編集部)