おもちゃの映画が、おもちゃの賞を獲った。『トイ・ストーリー』の30年


『トイ・ストーリー』シリーズが第18回「日本おもちゃ大賞」の特別賞を受賞した。第1作から30年、映画館もおもちゃ売り場も様変わりしたなかで、なぜこのシリーズだけが現役でいられるのか。ディズニーが日本のパートナー2社に聞いている。(フロントロウ編集部)
30年分の評価が、賞のかたちで返ってきた
1995年、『トイ・ストーリー』は世界初の長編フルCGアニメーションとして生まれ、映画史に新しい時代を切り拓いた。それから30年。シリーズ最新作『トイ・ストーリー5』は日本での興行収入100億円を突破し、いまも劇場で上映が続いている。
そのシリーズが今年、第18回「日本おもちゃ大賞」の特別賞を受賞した。おもちゃが子どもの成長に寄り添うかけがえのない存在であることを、30年にわたって物語を通して伝え、おもちゃを愛する心を育んできた——という評価だ。おもちゃが主人公の映画が、おもちゃの世界から賞を受け取る。順番としては当たり前のようでいて、30年続かなければ起こらなかったことでもある。

ウォルト・ディズニー・ジャパンによると、受賞にあわせて日本の2社への取材が行なわれた。全国でイオンシネマを運営するイオンエンターテイメントと、第1作の公開当時からシリーズのおもちゃを手がけてきたタカラトミーだ。作品の外側で、この30年に何が変わったのか。
スクリーンは約1,800から約3,700に増えた
シリーズ第1作が日本で公開された約30年前、国内の映画館は1〜2スクリーンの単館が中心だった。その後シネマコンプレックスが全国に広がり、スクリーン数は約1,800から約3,700へ。年間の公開本数も、映画以外のコンテンツを含めて約600本から約1,300本へと倍増している。
増えたのは数だけではない。IMAXやDolby Cinema、ScreenXといった大型スクリーンと高品質な映像・音響を備えた「プレミアム・ラージ・フォーマット」が広がり、映画館は作品を見る場所から、作品の世界を全身で楽しむ場所へと役割を変えた。『スター・ウォーズ:マンダロリアン&グローグー』の応援上映では、グローグーのぬいぐるみやグッズを手にしたファンが集まり、即日満席になったという。
イオンシネマは全国28の劇場に、ディズニーのキャラクターが描かれた巨大な壁画「シーニック」を導入している。この空間を目当てに遠方から足を運ぶファンもいるそうだ。『トイ・ストーリー5』の公開にあわせて全国のイオンモールで開かれた、作中に登場するフォーキーをつくるワークショップも、親子で過ごす時間そのものが目的になっていた。

イオンエンターテイメント代表取締役社長の藤原信幸氏は、「映画鑑賞前後の食事や買い物も含めて一日を楽しんでいただく場にしていきたい」と話す。ショッピングモールのなかにある映画館だからこそ、モール内の物販やおもちゃ売り場まで含めて設計できる、という発想だ。「ディズニーの映画を観に来て一日楽しんだことが、その家族の思い出になるような体験をつくりたい」
「画面越しでは得られません」
映画館で心が動いたあと、その感情を家まで持ち帰らせてくれるのがおもちゃだ。タカラトミーの『トイ・ストーリー5』関連商品は、子ども向けから大人のコレクター向けまで幅広い。劇中と同じサイズでウッディやバズが語りかける「リアルサイズトーキングフィギュア」は箱まで“本物”さながらで、「ハイテク版バズ・ライトイヤー」には同社が長年培ってきた変形技術が注ぎ込まれている。金属製の「ダイキャストコレクション」は、重量感を理由に大人が手に取る。

同社プリスクール・ゲーム事業部の池澤圭氏は、デジタルの遊びとおもちゃが共存する時代だからこそ、手に取れるおもちゃの価値が際立つと語る。「手触りや重量感といった五感の体験、そして対面で膝を突き合わせて遊ぶコミュニケーションは、画面越しでは得られません。『ウッディやバズ・ライトイヤーが本当に生きている』という物語のロマンを現実に届けられるのは、おもちゃが主役の作品ならではです」
いま店頭では、30年前に作品と出会った世代が親になり、自分が好きだったキャラクターを我が子にも手渡したい、劇中のアンディのようにおもちゃを大切にする心を育んでほしい、と商品を選ぶ姿が数多く見られるという。かつて受け取った側が、渡す側にまわる。テイラー・スウィフトが書き下ろした楽曲で新しい世代を呼び込みながら、シリーズが古びない理由は、案外そのくり返しの単純さにあるのかもしれない。















