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「床は腐り続ける」。『ナイトボーン』監督が語った、あの古い家の正体

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「床は腐り続ける」。『ナイトボーン』監督が語った、あの古い家の正体
© 2025 Elokuvayhtiö Komeetta Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

ルパート・グリントが一度は出演を断ろうとしていたと明かした北欧チャイルド・スリラー『ナイトボーン -夜哭-』が、8月28日に公開を迎えた。あわせて監督ハンナ・ベルイホルムのインタビューが解禁。恐怖の出所は、赤ん坊ではなく別のところにあった。(フロントロウ編集部)

出発点は、監督自身が母親になった経験だった

『ハッチング -孵化-』で世界的な注目を集めたフィンランドのハンナ・ベルイホルム監督が、続けて手がけた最新作が本作だ。子供を望む新婚夫婦サーガとジョンが、フィンランドの森深い田舎町へ移り住み、待望の子供を授かる。しかし生まれた我が子に、サーガは拭いきれない違和感を覚えはじめる——という物語だ。

映画『ナイトボーン -夜哭-』は8月28日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
© 2025 Elokuvayhtiö Komeetta Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

この着想がどこから来たのかについて、配給のNOROSHI・ギャガによると、監督はインタビューで「物語は、母親としての私自身の感情や経験から自然と生まれました」と説明している。

そのうえで監督は、こう続けた。「親としての愛の乱雑で、困難で、ときには“美しくない”側面を描いた物語がまだ十分に存在しないと感じていました。そうした部分に光を当てたいと思ったのです」。子どもが自分の想像していた“穏やかで手のかからない赤ちゃん”ではなかったとき、どう接すればいいのか。監督が自問したその問いが、そのまま作品の骨格になっている。

本作が描くのは「赤ん坊の誕生から最初の1年間」であり、「子どもの存在が、夫婦関係をいかに深く、そして予期せぬ形で変えてしまうのかを探る物語」だと監督は語っている。

家を直しても、床は腐り続ける

この映画で、サーガとジョンが暮らす古い家は単なる舞台装置ではない。ベルイホルム監督ははっきりと、家を夫婦の写し鏡として作ったと明かしている。

「あの古い家は、サーガとジョンの関係そのものを象徴しています。2人と同じように、家は美しいけれど朽ち始めている」。夫婦は家を修繕することで何とか救おうとするが、それは関係を修復しようとする姿と完全にリンクしているという。そして監督は、こう言い切った。「どれほど完璧な“家族の幸福”を夢見て子ども部屋を飾り立てても、床は腐り続けるのです」。

この視点で見ると、解禁された本編映像の意味も変わってくる。ジョンの両親が家を訪れ、赤ん坊クーラを囲んで穏やかな時間が流れるなか、サーガだけが「クーラは笑わない」と不安を漏らす。義母は「世界で一番の幸せは母親になること」「愛を注げば大丈夫」と励ますが、その言葉はサーガに届かない。

https://youtu.be/9sPoFt15MvQ

そこへ隣室からクーラの激しい泣き声。駆けつけると手は真っ赤にただれ、そばには暖炉の火かき棒が落ちている。ジョンが父親を責め立てるなか、父親は「触れたのは冷たい鉄だ」と言い放つ。火傷するはずのない冷たい鉄——その一言で、これまでの違和感がすべてつながったサーガは、堰を切ったように高らかな笑い声をあげる。

「私たち全員の中にトロールの血が流れている」

本作のもうひとつの軸が、北欧神話だ。監督によれば、北欧諸国には森に棲む“トロール”の神話が長い歴史として受け継がれている。本作でも森は「サーガの感情や、人間の中にある動物的で原始的な身体性を映し出す存在」として描かれているという。

映画『ナイトボーン -夜哭-』の場面写真。サーガ役セイディ・ハーラ
© 2025 Elokuvayhtiö Komeetta Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

ただしベルイホルム監督は、その神話に独自の解釈を加えている。「この映画の世界観では、人間とトロールは何世代にもわたって交わりを持ってきているので、私たち全員の中に“少しだけトロールの血”が流れている可能性があります」。そのせいで人によっては“ちょっと違う”感覚、社会の中でぎこちなく感じたり、普通のルールになじめなかったりするのかもしれない、と。

つまり異物なのは赤ん坊だけではない。母親自身も、そして観客も、同じ血を分け持っているかもしれない——という反転が、この作品のテーマとして鳴り続けている。

サーガを演じるセイディ・ハーラについて、監督は「シーンのすべてを自分のものにし、感情を余すことなく注ぎ込む稀有な才能の持ち主」と評価。夫ジョン役のルパート・グリントについては「常にプロフェッショナルで、思いやりがあり、忍耐強く、本当に素晴らしい共演者でした」と振り返っている。ハーラは第30回ファンタジア国際映画祭で最優秀演技賞を受け、同映画祭では作品自体も最優秀作品賞を獲得した。

「途中で笑ってしまっても、まったく問題ありません」

撮影でとくに楽しかったのは、アニマトロニクスのパペットを使ったシーンだという。制作を手がけたのは『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・ワールド』を担当したグスタフ・ホーゲンとそのチーム。「5人の人形遣いが俳優の周りでパペットを操作し、まるで本当に“生きている”かのように見せていて、その技術に深く感銘を受けました」と監督は語る。

https://youtu.be/1bc6S4r7M_4

では、観客はこの映画をどう受け止めればいいのか。ベルイホルム監督の答えは開かれている。「『ナイトボーン -夜哭-』には、“正しい観方”というものはありません」。ホラー好きにはスリルと緊張感、そして本気でゾッとする瞬間を、と前置きしたうえで、こう付け加えた。「暗さの中にも、ほのかなユーモアが散りばめられています。途中で笑ってしまっても、まったく問題ありません!」

映画『ナイトボーン -夜哭-』は8月28日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

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