イスラエル軍が2年半の沈黙を破って調査結果を発表した際、カウテール・ベン・ハニア監督が「インタビューには応じません」と返答したのが8月21日のことだった。その翌週、今度は別の映画作家の側から、この作品への言葉が届いた。(フロントロウ編集部)
3分半、言葉を探しながら
9月4日に日本公開を迎える映画『ヒンド・ラジャブの声』について、アレハンドロ・G・イニャリトゥが語ったインタビュー動画が解禁された。配給のスターキャットアルバトロス・フィルムによると、収録時間は3分半におよぶ。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント:蘇えりし者』で、半世紀以上ぶりとなるアカデミー賞監督賞の2年連続受賞を成し遂げた監督だ。トム・クルーズを主演に迎えた最新作『DIGGER/ディガー』の公開も控えている。そのイニャリトゥは、まずベン・ハニア監督に向けた言葉から話し始める。
「この強烈な作品についてどう語ればいいのか。君は何かを成し遂げた」
言い切るのではなく、言葉を探しながらの導入だ。そこから評価の中身に入っていく。
「この作品は問いそのものだ。映画という枠を超えてる。物語を構成し一つの真実を描き出している。私たちの理解を超えた現実へとアクセスするための作品になってる。到底、想像もできない巨大な現実だ」
「声というのは、ただ単に言葉を意味するだけではない」
なぜそう言えるのか。イニャリトゥはその理由を、外側からは届かない現実の性質に求めている。
「その場に身を置かない限りそこで起きていることはこの先も知り得ない。そのような複雑な状況を、物語として見事に昇華させたからこそ心に深く残るんだ」
言及は作品のタイトルにも及ぶ。原題は「The Voice of Hind Rajab」——ヒンド・ラジャブの、声。
「ヒンドという少女の、声に焦点を当ててるからだ。映画やフィクションの世界において、声というのはただ単に言葉を意味するだけではない」
そこからイニャリトゥは、“ウソはつけない”という声の力について語り、本作が描くガザの痛みを伴う真実へと話をつないでいく。

本作が扱うのは、2024年1月29日に人道支援組織・パレスチナ赤新月社のボランティアスタッフが受けた1本の緊急通報だ。ガザ地区から助けを求めていたのは6歳の少女、ヒンド・ラジャブ。スタッフたちは電話をつないだまま救出のためにあらゆる手段を尽くすが、状況は刻一刻と悪化していく。実際の通話記録を軸にした89分は、第82回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を含む8冠を獲得し、第98回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされた。
日本からのコメントは51名に
同時に、日本国内から寄せられた応援コメントも新たに26名分が公開された。内訳は著名人4名、本作を上映する映画館のスタッフ7名、映画ライターや評論家ら15名。上映する側と書く側が、それぞれの立場から言葉を出している。
映画監督の山田洋次は「凄い映画」としたうえで、「今まで見たこともないような斬新なこの映画のスタイルは、戦争に対する激しい怒りから生まれたのだろうか」と書いた。社会学者の上野千鶴子は「実録をもとにした再現映像の迫力」に触れ、「「助けて」と叫びつづけるこの女の子の声に、私たちは耳をふさぐことができるのか?」と問いかけている。
日本版予告解禁の時点で25名だったコメントは、これで累計51名になった。
映画『ヒンド・ラジャブの声』は9月4日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国公開。
















