フランク・ザッパが1976年に発表した『ズート・アリュアーズ(虚飾の魅惑)』の50周年記念ボックス・セットが、12月4日に発売される。ザッパが当初2枚組として構想していた幻のヴァージョン『ナイト・オブ・ジ・アイアン・ソーセージ』や、同じ年にパリで録音された未発表ライヴの完全版を初めて収め、全73トラックに及ぶ大型盤となる。(フロントロウ編集部)

“マザーズ”の名を外した転換点の1枚
1976年は、ザッパにとって大きな転機の年だった。年明けは最小限の5人編成でツアーに出て、ヨーロッパ、ハワイ、オーストラリア、そして後にも先にも一度きりとなった日本でも公演を行なった。ところが春になると、10年間組んだマネージャーと決別し、バンドも事実上解散。残ったドラマーのテリー・ボジオと2人を軸に作り上げたのが『ズート・アリュアーズ』だった。
ギターを前面に押し出し、無駄をそぎ落としたサウンドの同作は、ザッパが“マザーズ”の名称を使わなくなった最初のアルバムでもある。ギタリストとしての代表曲「ブラック・ナプキンズ」とタイトル曲という2つのインストゥルメンタルに加え、「ザ・トーチャー・ネヴァー・ストップス(拷問は限りなく)」「ディスコ・ボーイ」などの人気曲を収録。レコーディングには、ドニー・ヴリートの名義でハーモニカを吹いたキャプテン・ビーフハートも参加していた。

テープ倉庫から再現された『ナイト・オブ・ジ・アイアン・ソーセージ』
今回の目玉は、初めて世に出る『ナイト・オブ・ジ・アイアン・ソーセージ』だ。これはザッパが『ズート・アリュアーズ』をアナログ2枚組で出そうとしていた頃の仮タイトルで、最終的には曲を絞ってLP1枚に組み直された。ザッパ家のテープ倉庫には、1976年に手作業でカッティングされた参照用のアセテート盤や、Side 4のテープ1本が残っており、倉庫管理人のジョー・トラヴァースのチームが対応する初期ミックスを探し出して全11曲を再現した。「スリープ・ダート」など、最終版から外れたインストゥルメンタルも収められている。
ボックスは5CD+ブルーレイ(音源のみ)の6枚組。Disc 1には2026年の最新リマスターを施したアルバム本編9曲と、デニー・ウォーリーがスライド・ギターを弾いた約9分のジャム「マフ・ダイヴァー」などボーナス3曲を収録する。Disc 2が『ナイト・オブ・ジ・アイアン・ソーセージ』、Disc 3と4は1976年3月8日にパリのパレ・デ・スポールで録音された未発表ライヴの完全版、Disc 5は別ミックスや当時のラジオCMなど17トラックを集めた“ボーナス・アリュアーズ”。ブルーレイには、スタジオ1LAで制作されたドルビーアトモスと5.1chサラウンドの最新ミックスなどが入る。

トラヴァースが当時のテープ・マシンを使って、オリジナル音源を変換する作業を見せるビデオも公開されている。
さらに、2インチ24トラックのセッション・マスターから見つかった「サン・オブ・カナール・デュ・ジュール」も発掘音源の1つ。のちに『ジョーズ・ガレージ(ジョーのガレージ)』の「アウトサイド・ナウ(現在、しゃばでは)」へと発展した曲で、元バンドメンバーのアーサー・バーロウが2026年に新たにベースを録音したシングル・エディットが先行配信されている。
日本盤はSHM-CD仕様で解説を完訳
日本盤(UICY-80825)は生産限定で、価格は13,200円(税込)。SHM-CD仕様で、44ページの英文ブックレットに加え、その完訳と歌詞・対訳を載せた日本版ブックレットが付く。英文ブックレットには、トラヴァースのエッセイや、オリジナル盤のエンジニアを務めたマイケル・ブラウンスタインのエッセイ、秘蔵写真などが掲載される。
ザッパの50周年記念ボックスは、これまでにも『ボンゴ・フューリー』などが登場してきた。2026年に入ってからは入門向けのコンピレーション盤も発売されており、半世紀前の転換期の音源をまとめて掘り下げられる今回のボックスは、長年のファンにとって待望の1作になりそうだ。


















