ドレスを着ておしゃれをすることを通して、人身売買と闘うための1.5億円以上もの資金を集めている女性たちがいる。アメリカ発のアイディア、「ドレセンバー(Dressember)」を特集します。
女性が被害にあう人身売買
人身売買(ヒューマン・トラフィッキング)は年間で約15兆円もの収益をあげており、その3分の2が商業的な性的搾取から得られていると言われている。
世界中で多くの女性が性商売を目的とした人身売買の被害にあっており、被害者の多くが性を売ることを強制される過程で暴力を受けたり意志に反して薬物を投与されたりしたと証言している。
「ドレセンバー」:ドレスを着て人身売買と闘う
社会の問題と闘うためにはまずはみんなが認識を高めることが不可欠。
そこで2013年に登場がしたのが、「ドレセンバー」というプロジェクト。
ドレス(Dress)とディセンバー(December)という言葉をかけあわせて作られた「ドレセンバー」は、12月の1ヵ月間毎日ドレスを着ると宣言してその姿を毎日SNS等でシェアすることで、人身売買に対する認識を広げて寄付につなげようという企画。
それだけかと思う人もいるかもしれないが、実際にこの企画はわずか3年で約1.5億円の寄付金集めに成功している。
ある女子大学生の思いつきから
ドレセンバーをはじめて企画したのは、当時南カリフォルニアで大学生だったブライス・ヒルという女性。
2009年に何か面白いことがしたいという衝動にかられたブライスは、12月の31日間違うドレスを着るドレセンバーというプロジェクトをおしゃれの一環として遊び感覚でスタート。当時は1回限りで終わる遊びのつもりだったが、翌年に数人の友達から一緒にやりたいという声が。さらに翌々年には、友達の友達から参加したいという申し出があったという。
ドレセンバーの拡散力の強さに気づいたブライスは、これをさらに大きな活動につなげられないかと考え、若い頃から気になっていた人身売買の問題に取り組もうと決意。
国際人権ミッション(IJM)に協力してもらい、約250万円という目標を掲げて2013年にドレセンバーは寄付金集めプロジェクトへと変身。するとウワサは瞬く間に広がり、目標をわずか3日で達成してしまった。
ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の女優テイラー・シリングも参加者
ブライスは当時の思いを、「面白半分でドレスを着ていた南カルフォルニアの数人の女の子が、世界32ヵ国1,200人もの女性へと大きくなったの。そしてみんなで1,650万円も集められたのよ」と公式サイトで語っている。
それ以来ドレセンバーは毎年おこなわれており、2年目の2014年には2,600人の女性が約4,650万円を、3年目の2015年には4,600人以上の女性が約9,240万円を集め、参加者と寄付金は年々増加している。
そして4年目となる2016年、12月10日の時点で総寄付額は約5,170万円に達しており、人気ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の主演女優テイラー・シリングも参加している。
テイラーのドレセンバー5日目の写真
ドレセンバーへの参加方法
ドレセンバーを支援する方法は3つ。
1つめは、「賛同者(Advocate)」となって寄付金集めをすること。公式ページで寄付金集めのページを作って目標額を設定し、ドレセンバーをしながらSNS等で友達やフォロワーに目標額達成のお手伝いをお願いする。
女優のテイラー・シリングが2016年にグループで立ち上げた寄付金集めページ。
2つめは、直接寄付をすること。ドレセンバーへの寄付はこちらからできる。
3つめは、人身売買に対する知識を家族・友達・フォロワーの間で高めること。問題提起をして、さらにドレセンバーという活動の情報を広めることは大きな助けになる。
ユニークなアイディアと一人ひとりの行動が世界を少しずつ変えている。
ドレセンバーの公式ページ(英語のみ)はこちらから。