6月18日の葬儀に現れたのは、過激なヘイトデモを行うことで有名な米ウェストボロ・バプティスト教会。他人の葬儀に現れては、差別的なプラカードを掲げるヘイトデモで知られる。
そんな団体を阻止しようと、地元民を中心に「エンジェル・アクション・ウィング団体(Angel Action Wings Group)」が結成。巨大な白い天使の羽を制作した彼らは、当日これを背負って会場に立って教会が掲げたプラカードを大きな羽でブロックし、差別的な言葉を遺族の視界から遮った。
今回このプロジェクトを企画したのは、地元の演劇団体オーランド・シェイクスピア・シアター。美術監督のジム・ヘルシンガーはフロントロウ編集部の取材に、「支援の心を伝えたくて羽を使いました。多くの人が協力してくれて、ヘイトにあふれた団体に立ち向かうための愛を提供してくれたのです」と語った。
天使の羽は劇団のスタッフ、ボランティア、さらに地元のアート系団体の助けにより制作され、フェイスブックにグループを作るとすぐさま賛同者が殺到。当日は約200人もの人が集まり、現在フェイスブックのグループのメンバーは700人を超える。
世界中で起きている反ヘイトデモに共通する言葉
オバマ米大統領がヘイトクライムと呼んだアメリカ史上最悪の銃乱射事件が発生した後、世界各地で追悼集会が行われ反ヘイトが唱えられているが、そこには共通するものがひとつある。
シンガーのレディー・ガガが参加したLAの追悼集会では、群衆が「愛はヘイトを倒す」と繰り返し唱えた。スパイダーマン役で知られる俳優のアンドリュー・ガーフィールドも駆けつけたロンドンの集会では、「大きな声で言おう、はっきりと言おう、ここには愛がある」という掛け声があがった。
ポートランドの集会では、参加者たちが「それでも愛は勝つ」と叫び、NYの集会では、参加者が「ヘイトを減らせ!愛を増やせ!」と唱えた。
6月18日の葬儀でエンジェル・アクション・ウィングの参加者がウェストボロ・バプティスト教会にあびせた言葉も、「私たちはあなたを愛している」だった。
ヘイトを飲み込もうとするかのように、世界中で「愛」というメッセージがこれまで以上に強くはっきりと叫ばれているのだ。
最後に、エンジェル・アクション・ウィング活動を行った前出の美術監督ジム・ヘルシンガーは、フロントロウ編集部にこう語った。
「今回の活動に対してあふれ出るような愛と支援が贈られるのをこの目で目撃して、絶対に愛が勝つのだと希望を持ちました」。
フロントロウ編集部の取材後、オーランド・シェイクスピア・シアターは制作した天使の羽を「希望のメッセージを伝え、愛を守り助ける」のための活動に貸し出す計画を検討していることを公式フェイスブックで明かしている。
ヘイトが大きければ大きいほどそれはそれ以上に大きな愛に飲み込まれているが、愛の拡散は、誰にも止めることができない。