『トランスアメリカ』
女性になるための性転換手術を控えたブリーの前に、男性だった時にできた息子トビーが現れ、2人はアメリカ大陸横断の旅に出ることに。愛を知らずに育ち反抗的なトビーと性同一性障害という葛藤を持つブリーの複雑な関係を、ユーモラスにそして優しく描いていく。
難しい役どころであるブリーを演じたフェリシティ・ハフマンの演技は、全米で大絶賛された。ロードムービーとしても人気の作品。
『アデル、ブルーは熱い色』
学生のアデルがある日、青い髪のエマに出会い2人は恋に落ちる。じつは劇中のセリフはほとんどアドリブ。それだけにリアルで激しい2人の恋愛模様がアーティスティックな映像ともに描かれていく。人を愛し、失ったことがある人なら誰もが共感できる細かな演出も必見。
アデルとエマが初めて会い、アデルが一目惚れする交差点のシーンは、なんと100回以上撮り直している。大胆な性描写は公開時大きな話題になり、カンヌ国際映画祭で、通常は監督にしか贈られない最高賞パルム・ドール賞が主演の2人にも贈られた。
『ブロークバック・マウンテン』
同性愛が「タブー」だった1960年代、密かに愛し合うようになったイニスとジャックの20年もの愛の物語を描いた感動作。自分が生きたいように生きられず葛藤する2人を、ジェイク・ギレンホールとヒース・レジャーが見事に演じきった。
同性愛をテーマにした今作だけれど、社会から隠れなければいけない辛さ、本当の自由という意味、家族愛など、さまざまなテーマも含まれている。
『わたしはロランス』
映画ファンの間で大注目の若き天才監督グザヴィエ・ドランが描く、トランスジェンダーをテーマにした作品。カナダに暮らす教師のロランスとその彼女フレッドは幸せな生活を送っていた。しかしロランスは、心の奥で女性になりたいと願っており、その秘密をついにフレッドに打ち明ける。ショックを受けるフレッドだけれど、彼女はロランスを支えていくと決断する。
ロランスが受ける偏見にも強気に言い返し、戸惑い、苦しみながらもロランスを支えるフレッドの姿が力強い。アーティスティックな映像にも注目。
『チョコレートドーナツ』
同性愛は差別の対象だった1970年代、あるシンガーを夢見るルディとゲイであることを隠す弁護士ポールというゲイカップルと、育児放棄されたダウン症の少年マルコとの生活を描いた感動の実話。愛情を育んでいく3人だけれど、2人がゲイだからという理由で、マルコと突然引き離されてしまい…。
この作品は同性愛に対しての偏見の問題提議だけでなく、ダウン症はどうゆう病気なのかというテーマも深く掘り下げている。実際にダウン症でありながら過酷な撮影をこなしたアイザック・レイバの演技は、全米で高評価された。
『ミルク』
偏見が強く根付いていた1970年代のアメリカで、初めてゲイを公言した政治家ハーヴィー・ミルクの最後の8年間を描いた『ミルク』。反発の言葉を受けてもひるむことなく、自ら声をあげて世の中を良くしようと立ち上がったハーヴィーの勇気に心動かされること間違いなし。
この時代は、このような活動は命さえもかけた戦いにもなる。犠牲を払ってでも社会の権力に負けず戦い抜くハーヴィーは、俳優ショーン・ペンが演じ、アカデミー賞で主演男優賞を受賞した。
『リリーのすべて』
世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話を描き、大きな話題を呼んだ『リリーのすべて』。画家のアイナーは、同じく画家で妻ゲルダに女性モデルの代役を頼まれたことがきっかけで、自分の中の女性を感じる。心と体の不一致に悩むアイナーと、そんな夫の姿に戸惑いながらも支えるゲルダの深い愛が描かれる。
夫を支えることは愛するアイナーを失うことともなると分かっていながらも、無償の愛を見せるゲルダを演じたアリシア・ヴィキャンデルは、見事アカデミー賞主演女優賞を受賞。