話題作から身を引いた理由
現在世界中で大ヒットを記録している映画『ブラック・パンサー』。マーベル初の黒人ヒーローとあり、主人公以外のキャストにも軒並み黒人の俳優や女優を起用した同作は、これまで白人ばかりがスポットライトを独占してきたハリウッド映画界を変える革新的な1作だと話題に。
そんな注目作に出演する道が開けていたのにも関わらず、オーディションの途中で自らドロップアウトした若手女優がいる。
その女優とは、映画『ハンガーゲーム』やシンガーのビヨンセのヒット曲「レモネード」のMVなどへの出演で知られるアマンドラ・ステンバーグ。
アマンドラは、カナダのCBCニュースとのインタビューで、そのいきさつについてこう語った。「私のこれまでのキャリアのなかで一番難しかったことは、『ブラック・パンサー』から身を引いたこと。(オーディションで役を勝ち取る)ギリギリまで残って、製作陣にも続けてみないかと言われたけど、私の中では『これは正しくない』と感じたの」。
アマンダが自分がこの映画には相応しくないと感じたのは、物語に登場するアフリカ系のキャラクターを演じるには、彼女の肌色が明るすぎると思ったから。
デンマーク人の父と黒人の母を持つアマンダは、すでに同作への出演が決まっていた暗い肌色の俳優や女優たちの中に、白人寄りの明るいトーンの肌色の自分が混ざることは、観客たちから見ると違和感を覚える光景なのではないかと疑念を持ったという。
アマンダは、「黒人と白人のハーフである私が、ナイジェリアのアクセントを真似て、しれっとほかの出演者たちと一緒に出演するのはおかしいんじゃないかなと思った」と話しており、自身にとっても魅力的な作品である『ブラック・パンサー』への出演をあきらめることはとても辛かったものの、「後悔はしてない。私は自分が出しゃばるべきではない場所があることを100パーセント理解している」と語った。
アイデンティティに悩んだ過去
黒人と白人のハーフとして生まれたことで、幼い頃から「自分は一体どちらのグループに属すべき存在なんだろう?」と疑問を持ちながら育ったというアマンドラ。
今では両方のアイデンティティを大切にしているという彼女は、過去に悩んだ経験を活かし、人種問題をはじめ、女性の人権の向上を目指す活動などにも力を入れており、若い世代のロールモデル的存在として一目置かれる存在に。2015年と2016年には米TIME誌が選ぶ「最も影響力を持つティーン」のひとりにも選ばれた。
2016年に行われた「女性のマーチ」に参加したアマンドラ。
そんなバックボーンもあり、世間では肌の色を理由に『ブラック・パンサー』への出演を諦めたという彼女の決断に理解を示し、褒め称える声が相次いでいる。
ファンタジーやSF作品が大好きだというアマンドラは、じつは大のジブリ好き。米雑誌i-Dとの過去のインタビューでは、アニメ『千と千尋の神隠し』のスマホケースを愛用していることを明かし、「あんな世界観の作品を作りたい。でも登場人物に黒人の女の子がいたらいいなと思ったの」と話し、同作にインスパイアされた漫画を自分で執筆しているという。
いつかアマンドラが制作した、彼女のような女の子が主役の作品がお披露目される日が楽しみだ。
1月にはプライベートで来日。大好きな日本を満喫していた。原宿にて。