ピクサー初の短編物語に共感する女性殺到
『ファインディング・ニモ』や『Mr.インクレディブル』のピクサーが、自社が抱えるアーティストやディレクターの養成を目的とした新たなプログラムとしてスパークショーツ(SparkShorts)を発表し、新たにショートフィルムを制作する。
そんなスパークショーツから公開された初ショートフィルムは、フェミニズム全開の内容となっている。
約8分間のショートフィルムは、パールというかわいらしい名前のピンク色の毛糸が主人公の『パール』というストーリー。
物語はパールが自分とはルックスもすべてが全く異なる男性ばかりの均質的な企業「B.R.O.キャピタル」に就職するところから始まる。
※B.R.O.はBrother(兄弟)の略称で、親しい男性同士が呼び合う言い方でもある。
いわゆるサラリーマンと呼ばれるような社員が、エレベーターに乗って新入社員のパールを案内しているのだが、スマホ片手にパールのことを見ようともしていない。
しかし、社員証を見た瞬間にようやくパールが毛玉だということに気がつき「信じられない…」と驚愕する。そこでエレベーターが開くと、案内した男性とそっくりな社員たちが怪しげな目線でパールを凝視する。
ルックスもビジネススタイルも違うパールは会社でも相手にされず、社員たちも自分たちと違うパールを仲間外れにする。
なかなか馴染めないパールが、今度はみんなと同じようなルックスに姿を変え、話し方も変えて会社に溶け込もうとすることで、社員たちがパールを受け入れ、パールは前まで誘われなかった飲みの席にも誘われるように。
ようやく会社に馴染めたパールが社員たちと飲みに出かけようとしたその時、エレベーターから出てきたのは、入社したてのパールにそっくりなレイシーというイエローの毛玉の新入社員。
自分とは違うルックスのレイシーに拒絶感を引き起こす社員たち。やっと社員と仲良くなれたパールもレイシーの登場に葛藤するも、見捨てることが出来ずにレイシーを飲みに誘う。
後日、再びエレベーターにいるそんなパールは、今度は新しく入ってくる社員の案内をしている。「ここで働けるなんて信じられないよ」という新入社員に、パールが「私も信じられないと思うよ」と返答。
エレベーターが開くと、毛玉の社員が増加し、社員たちと仲良くするシーンが広がっていた。
毛玉が主人公のアニメ『パール』は、一見、キッズ向けのアニメのようなストーリーに聞こえるけれど、ふたを開けてみると、男性中心の社会で、女性や人とは違う個性のある人が浮いてしまう現代社会を反映している。
それもそのはず。同作はディレクターのクリステン・レスターが、「最初の職場で女性は私だけだった。だから、やりたい仕事をするために、私はみんなの一員になった。そしてピクサーに来て、女性と一緒に働くようになって、今までどれほど女性としての自分を殺していたのかに気がついた」と語るように、クリステンの実体験を基に作られた。
そんな実体験から生まれた、年齢に関係なく楽しめるのにフェミニズム全開なスパークショーツの作品を皮切りに、今後もピクサーの新たなショーとフィルムに期待がかかる。(フロントロウ編集部)