「全楽曲録り直せば?」
デビューから2018年まで所属していたレコードレーベルが“因縁の相手”であるスクーター・ブラウンにに買収され、それまでにリリースした楽曲の原盤が彼の手に渡ったことに声明を通じて憤りの意を表したことが発端で音楽業界を揺るがす一大騒動となっているシンガーのテイラー・スウィフト。
テイラーは、前所属先であるビッグマシン・レコーズのCEOであるスコット・ボルチェッタから「原盤を手にする機会を与えられなかった」と主張し、「私が作った音楽のレガシーが、それを壊そうとした人物(スクーターのこと)の手に渡ろうとしています」と訴えたが、スコットの配下となったビッグマシン・レコーズは、すでにテイラーの初期作品5曲を数量限定のアナログ盤として発売することを発表している。
ビッグマシン・レコーズ側は、アナログ盤の発売については買収前から決まっていたと説明しているが、同社のこの動きは、先日、騒動後初となるライブパフォーマンスの最中に楽曲の歌詞を通じてスク―ターとボルチェッタCEOを痛烈にディスったとされているテイラーの怒りの炎にさらに油を注ぐようなもの。
そんななか、テイラーよりもキャリアが長く、先輩にあたるシンガーのケリー・クラークソンが、スクーター率いる新ビッグマシン・レコーズへの対抗策として、ツイッターを通じてテイラーにこんなアドバイスを送った。
@taylorswift13 just a thought, U should go in & re-record all the songs that U don’t own the masters on exactly how U did them but put brand new art & some kind of incentive so fans will no longer buy the old versions. I’d buy all of the new versions just to prove a point ♀️
— Kelly Clarkson (@kellyclarkson) 2019年7月13日
テイラーへ。ちょっと思ったんだけど、あなたが原盤を持っていない全ての過去の作品を当時とまったく同じようにレコーディングし直してリリースするのはどう? 新たなアートワークをつけたり、何かしらの特典をつければ、ファンたちは古いバージョンを買わなくなるわ。もしそうなったら、私もすべての新録版を買って証明してあげる」
このケリーの提案には、テイラーの主張をサポートするファンたちも「名案! 」、「テイラー、ぜひそうして! 私たちも100%支持する」、「私も新バージョンすべて絶対に買う! 」と賛同。テイラーに過去の楽曲の再レコーディングを促す声も多く聞こえる。
再録版のリリースは可能? 前例は?
ケリーの提案に対してテイラーは公には反応を見せていないが、実際にテイラーが、2018年までにリリースした計6作のアルバムすべての再録版をリリースするという案を実現することはできるのだろうか?
じつは、テイラーと同様にレーベル側と原盤権や著作権にまつわる衝突を経験し、その結果として過去作の再レコーディング版をリリースしたアーティストたちは何組か存在する。
2016年に亡くなったシンガーのプリンスは、18年間にもおよぶレコードレーベルとの争いの中で自身の過去の楽曲をすべて録音しなおすと宣言。その後、ブレイクのきっかけとなった大ヒット作『1999』の再録バージョンをリリースした。
そのほかにも、「ロック界の伝説」と呼ばれるギタリストのチャック・ベリーやメッセージ性の強い弾き語りで知られるグラミー賞受賞シンガーのトレイシー・チャップマン、世界的成功を収めた英国発のハード・ロックバンド、デフ・レパードや史上最年少の13歳で全米シングルチャート1位を獲得したシンガーのジョジョも、著作権や原盤権、ロイヤルティの再交渉などレーベル側とのバトルに際して、楽曲やアルバムを再レコーディングして発表している。
テイラーが過去の作品のすべてをレコーディングし直し、新たにリリースすることができるか否かは、彼女がビッグマシン側とどういった契約を結んでいたかによる。
しかし、もしテイラーが上記のアーティストたちと同じような戦い方を選ぶとしたら、熱狂的なファンたちは全力で彼女を応援するだろう。ファンたちがスクーター率いるビッグマシン・レコーズが権利を有する“オリジナル版”をボイコットを呼びかけるなどといった事態も起きるかもしれない。(フロントロウ編集部)