ブランド初の試み
その煌びやかな世界観と人気モデルの起用で知られるランジェリーブランドのヴィクトリアズ・シークレット。先日、毎年恒例のランウェイショーは「中止になった」とモデルのシャニーナ・シェイクが発言し、ブランドの行方に注目が集まっている。そんななか、ブランドが初のトランスジェンダーモデルを起用したと報じられている。
今回ヴィクトリアズ・シークレットが起用したのは、ブラジル出身モデルのヴァレンティナ・サンパイオ。遺伝子上男性として生まれたヴァレンティナは、男性として成長したけれど、8歳のときに心理専門家が彼女をトランスジェンダーと診断。その後10歳のときに名前を変え、女性として生きることを選択したという。
じつはヴァレンティナは仏Vogueの表紙を飾ったこともある注目のモデル。これまでにも数々のブランドのランウェイを歩き、広告モデルに抜擢されるなど、業界で活躍を見せている。
そんなヴァレンティナは、今回ヴィクトリアズ・シークレットの姉妹ブランドPINK(ピンク)の撮影裏の様子をインスタグラムでシェア。
さらにヴァレンティナは、もうひとつ撮影風景を映したビデオを投稿。LGBTQ+を象徴するレインボーの絵文字とともに「夢を見ることをやめないで」とキャプションを添えている。
ブランドに新しい風
これまでトランスジェンダーのモデルは起用してこなかったヴィクトリアズ・シークレット。今回ヴィクトリアズ・シークレット史上初のトランスジェンダーモデルとなったヴァレンティナは、2018年に同ブランドのファッションショーのためのオーディションを受けていたけれど、当時は60人のラインナップに選出されることはなかった。
2018年には、同ブランドのマーケティングを担当するエド・ラゼックが、他社ブランドがプラスサイズやトランスジェンダーのモデルを起用し、ファッション業界が変化しつつあることを指摘されると、「このショーでトランスセクシュアル(※)のモデルを使うべきか?起用すべきじゃない。なぜかって?このショーはあくまでも“ファンタジー”だから。42分間の特別なエンターテイメントだからだよ」と発言し、批判が殺到していた。
※心と体の性が一致しておらず、性転換をしたい・した人のこと
そんな過去の発言をはじめ、近年では「美=セクシー」というブランドの“理想の女性像”が時代に沿っていないとたびたび批判の対象になってきたヴィクトリアズ・シークレット。しかし2019年に入り、ブランドの広告モデルのエンジェルに史上初の赤毛モデルが起用され、今回はトランスジェンダーモデルが採用されるなど、少しずつではあるが、これまでとは違った新たなアプローチを始めている。
多様性のあるモデルたちが、今後ブランドにどのような新しい風を吹き込むのか。今、ヴィクトリアズ・シークレットは変革の時期を迎えている。(フロントロウ編集部)