カニエとの長年のバトルに言及
2009年のMTVビデオ・ミュージック・アワード(以下VMA)で、最優秀女性ビデオ賞を受賞したテイラー・スウィフトから突如マイクを奪い、スピーチを妨害したカニエ・ウェスト。
テイラーではなく、ビヨンセが同賞を受賞しなかったことに激怒したカニエは、「ヨー、テイラー。君の受賞をとても嬉しく思ってるよ。君には喋らせてあげるけど、ただ…、ビヨンセのビデオは歴史上で最も素晴らしいビデオのひとつだった!」と観客席に向かってシャウトした。
当時、世間から大ブーイングを浴びたカニエのこの行動が発端で、テイラーとのバトルがスタート。
その後、カニエがテイラーに謝罪し、歩み寄りの姿勢を見せたことで、2人の関係は修復されたかに見えたものの、2016年にリリースした楽曲「フェイマス」の中で、カニエがテイラーについて「俺とテイラーはセックスするかもしれない/なぜって?俺があのビッチをフェイマス(有名)にしてやったからさ」とラップして大問題に。
世間から大バッシングを受けたカニエは、該当の歌詞に関して「電話でテイラーに許可を取ってある」と主張。これに対し、テイラーは「『ビッチ』呼ばわりされるなんて聞いていない」と反論したが、カニエの妻でリアリティスターのキム・カーダシアンがカニエとテイラーの会話の音源を収めた動画をスナップチャットで公開。
これがきっかけでテイラーは人々から「嘘つき」、「被害者ヅラするな」とレッテルを貼られ、壮大なネットいじめの標的となった。
2017年、テイラーは、この騒動を受けて失墜した自信の評判やドン底だった当時の心境について歌った楽曲の数々を収めたアルバム『レピュテーション』をリリース。
カニエへの批判を連想させる文言を歌詞に潜ませたり、キムがテイラーについて発言したツイートで使用した“ヘビ”の絵文字になぞらえて、ステージセットや衣装、MVに“ヘビ”のモチーフを多用するなど、遠まわしにカニエ&キム夫妻への反撃を続けてきた。
そんななか、新たに公開された米音楽メディアRolling Stoneとのロングインタビューの中で、テイラーがカニエとのバトルの裏側にあった実情を暴露。
カニエとの間に何があったのか、テイラーから見たカニエとはどんな人物なのか、どんな会話が交わされたのかなど、これまで表沙汰になっていなかったバトルの内幕について、自身の見解を洗いざらい話した。
カニエの「二面性」を明かす
「それまでに色んな事があったからこそ、彼に『ビッチ』と呼ばれたことにキレてしまった。たった1つの出来事に対して怒っているわけじゃない」と、カニエとのバトルは「フェイマス」の歌詞を巡る騒動だけにとどまらず、世間が思っているよりもずっと根が深いことを示唆したテイラー。
現在もカニエとの不和が続いている理由は、表裏が激しく、まるで2つの顔を持っているかのようなカニエの“二面性”に辟易したからだと明かした。
テイラーが登場した米Rolling Stoneの表紙。
2009年のVMAでの一件で、ひどくプライドを傷つけられたテイラーだったが、その後、真摯に謝罪し、甘い言葉を並べて自分への尊敬を表し、自分の音楽を誉めてくれたカニエの姿勢にほだされ、彼とディナーに出かけたりするように。
当時の心境について、「2009年の一件のあと、私が最も必要としていたのは、彼からのリスペクトだった。だって誰かにあんな風に公衆の面前で侮辱されて、君にはここにいる価値がないと言われたら、立ち直るには、その相手からリスペクトを得るしかなかった」と振り返ったテイラーは、自分が謝罪を受け入れたことで、カニエと良好な関係が築けつつあることを嬉しく思っていたという。
そのため、2015年のVMAでカニエが特別賞であるヴァンガード・アワードを受賞することになった際、彼からプレゼンターとして自分にトロフィーを渡して欲しいと懇願された時には、光栄だとすら感じ、嬉々としてカニエを称えるスピーチを用意。
しかし、アワード当日、テイラーのスピーチを聞いたカニエが口にしたのは「視聴率を上げるために、MTVが何回“テイラーが俺に賞を渡す”って告知したか知ってるか? 」という言葉。
プレゼンターになって欲しいと依頼してきたのはカニエ本人なのに、あたかも、主催者側が視聴率アップのためにテイラーをプレゼンター役にキャスティングしたかのような口ぶりだったという。
カニエの妻キムと観客席でハグをしている最中にこの言葉を耳にしたというテイラーは、体中に悪寒が走るのを感じたそう。その時気づいたカニエの二面性についてテイラーはこうコメントしている。
「彼がすごく二面性のある人間だということに気づいたわ。舞台裏では私に対して親切にしたいけど、みんなの前ではクールに見せたり、悪態をついたりしたい人なんだと。私はすごく動揺した。授賞式の終了後、話がしたいから楽屋に来て欲しいと言われたけど、行かなかった」
翌日、カニエからは“お詫びのしるし”として巨大な花束が送られてきたという。複雑な気持ちだったものの、また険悪な関係になるのは嫌だと思ったテイラーは、カニエが電話で謝ってきたこともあり、その一件については、とりあえず水に流したそう。
その後、2016年にカニエが「フェイマス」の歌詞に登場するテイラーにまつわる一節について相談の電話をかけてきた際、前半部分の「俺とテイラーはセックスするかもしれない」という歌詞についてのみ聞かされたというテイラーは、これを承諾。
しかし、実際に公開された楽曲を聴いたテイラーは、“話が違う”と愕然。カニエ側がその気なら無理に仲良くする必要は無いと、彼の手口には金輪際まどわされないと腹を決めたという。
「『よかった。これで彼との関係は良好ね』って思っていたのに、あの曲を聞いた瞬間、『もうおしまい。険悪な関係でいたいなら、そうしましょう。でも正々堂々といかなくちゃね』って思ったわ」
ドレイクもカニエの“手のひら返し”の被害者
テイラーは、インタビューの中で「彼はドレイクにだって同じようなことをした」と、カニエと近年バトルを繰り広げているラッパーのドレイクの名前を挙げて、カニエの“手のひら返し”を身をもって経験したのは自分だけではないともコメント。
カニエがプロデュースを手がける後輩ラッパーのプッシャ・Tに、楽曲を通じて、仲が良かったはずのドレイクの隠し子の存在を暴露させたり、ゴーストライターの存在を示唆するなどしてドレイクをディスった騒動に触れ、「彼はドレイクの家族の人生に甚大な影響を与えたわ」、「(カニエは)まずはあなたに近づき、信頼を獲得した後で爆弾を投下する」と、カニエのやり口の汚さに言及した。
「私はこれ以上、彼とのことについて話したくない。感情的になっちゃうから。一日中ネガティブなことについて話すなんて嫌だもん。でも、いつも同じこと。ドレイクが彼の身に何が起きたか話しているのを見てみてよ」と語り、カニエとのバトルに関する話を終わりにしたテイラー。
現時点では、カニエ側からの反応はないが、双方のキャリアを揺るがすバトルなだけに、今後、カニエが自分の言い分を語る可能性も十分に考えられる。
(フロントロウ編集部)