「女の子だから」は証明できず
毎年10月11日は、国際ガールズデー。主に途上国の女の子たちが"女の子であるがため"に受けている性差別や暴力などの問題を啓発する日。そんな「女の子だから」という理由で女性が直面する問題は、日本の私たちにとっても他人事ではない。
世間でよく聞く、「女の子/男の子だから」、「女の子/男の子なのに」という言葉。ここ日本でも、男女の思考や行動の違いを説明するために、脳の性差が語られてきた。男性は「論争好き、理数系が得意、空間認知能力があるから運転が得意」、女性は「共感好き、感情的、言語能力に優れ、国語や英語が得意」といった考え方が知られている。
しかし、生まれながらの男性脳、そして女性脳というものはほとんど存在しないという研究結果が続々と発表されている。
例えば、日本でよく聞く「女性脳を持つ人は地図を読めない」という考えも医学的な根拠はない。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとイースト・アングリア大学の研究によると、男女の格差が少ない国ほど「地図を読む力」の男女差が少なく、道を選択する能力の高い女性が多いことが明らかになったという。
これまで、脳科学の研究から男女の違いは生まれつき脳にあり、性別によって、考え方や感じ方に特徴的な違いがあると言われてきたが、医学的に証明されていない。
では、なぜ男性脳と女性脳を基にした考え方が世に広まっているのか。
ジェンダーステレオタイプって?
男性脳と女性脳を体現するような人々の行動は、幼少期から少年少女を取り巻くジェンダーステレオタイプが原因。ジェンダーステレオタイプとは、男子・女子に対して社会が持つ先入観や価値観のことで、それが人間の可能性を制約するという。
「女の子にはピンク、男の子にはブルーのおもちゃ」「女の子にはおままごと、男の子にはレンジャーゲーム」「男の子だから泣かない、女の子だから行儀よく」、こうした一方的な価値観のなかで子供たちが育つことによって、男女の行動規範を作り上げてしまう。
大人になるにつれ、男性脳と女性脳の思い込みを元に、気づかないうちに人々はそれに則って生活するといい、例えば、「女性脳は一度に複数のことを考えられるから、“女性はマルチタスクが得意”=家事に向いている」と解釈され、女性は働かずに家にいる、という社会の風潮が出来上がったという説もある。
誰もが「なんでもできる」と思える時代に
国際連合が制定した2019年の国際ガールズデーのテーマは、「Girl Force: Unscripted and Unstoppable(脚本がない、止められない女の子の力)」。
世界で、“女の子だから”、“男の子だから”という理由だけで選択の自由が失われ、“男性はこうであるべき”、“女性はこうであるべき”といったジェンダーステレオタイプに、気づかないうちに縛られている人は多い。
どの国にいても、女の子だから、男の子だから、という理由で、できないことが増えるなんてもったいない。そして、それは成人した女性、男性、どんなジェンダーであっても同じこと。ジェンダーステレオタイプは、とても根深く人の思考に浸透しているものだけれど、ジェンダーという壁にとらわれず、すべての人の可能性が広がるよう、考え方を見直すところから始めたい。(フロントロウ編集部)