ディズニーの名作アニメの「気まずいシーン」を編集する代わりに講じられた対策とは? 問題のシーンを含む作品に追加されたあるものに注目。(フロントロウ編集部)

シーン改変する代わりに「あるもの」を追加

 11月12日より、ついに全米でスタートしたディズニーのストリーミングサービス「ディズニー+」。初日の契約数が1千万件を突破し、アプリのダウンロード数が320万件以上を記録した同サービスでは、過去の名作ディズニーアニメのほとんどが視聴可能となったが、そのなかには、以前から人種差別的な表現や現代の文化からかけ離れた描写などが問題視されてきた作品も含まれている。

 ディズニー+の開始に合わせて、ディズニー側が、世間で指摘されているシーンに対して、どういった対策を講じるのかに注目が集まっていたが、実際に講じられた策にさまざまな感想がひしめいている。

画像: 映画『ダンボ』より。© DISNEY / Album/Newscom

映画『ダンボ』より。© DISNEY / Album/Newscom

 劇中に登場する独特なアクセントを持つ黒いカラスの集団が、アフリカ系アメリカ人に対する人種差別的なステレオタイプを表現していると指摘されている『ダンボ』や、箸を使ってジャズピアノを弾くシャム猫の姿がアジア人蔑視を彷彿とさせると言われる『おしゃれキャット』、さらに同様の表現を含む『わんわん物語』や『ジャングル・ブック』といった作品のディズニー+での作品解説分の最後には、こんな一文が含まれている。

「この作品は制作された当時のままの状態で公開されています。時代遅れの文化的表現を含む可能性があります」

画像: 映画『おしゃれキャット』より。キーボードを首から下げる猫の両手には箸が一膳ずつ握られている。© DISNEY / Album/Newscom

映画『おしゃれキャット』より。キーボードを首から下げる猫の両手には箸が一膳ずつ握られている。© DISNEY / Album/Newscom

 該当のシーンに関して、カットしたり差し替えるといった編集による措置を施すのではなく、旧式で時代遅れとの指摘がある表現をそのまま残したことを正直に伝える“注意書き”を添えたディズニー。この対応には、しっかりと問題を認識していることを称える声や、作品にあえて手を加えなかったことを喜ぶファンも多い。

 しかし、一方では、すでにワーナー・ブラザースが講じている、問題表現を含む古いアニメ作品の開始前の画面で「この作品は一時代の産物です。劇中には、当時のアメリカ社会において蔓延していた特定の民族や人種に対する偏見に基づいた描写が含まれている可能性があります。これらの描写は当時においても、現代においても誤ったものです」という文言を含む長文表示して注意を促すという対策と比べると、ディズニーの言葉少なな一文による対応は、少々不十分に感じるという意見もある。

 ちなみに、ディズニーは文化的描写への言及に加え、現代では御法度となりつつある、アニメ内での喫煙に関する描写に関しても、「タバコに関する描写を含む可能性があります」との注意書きを追加している。

 また、人種差別的な描写が指摘されたというわけではないが、「当時の時代背景から考えて白人と黒人が対等に接していたはずがなく、誤った歴史認識を招く恐れがある」という理由から全米黒人地位向上協会が抗議したため、ディズニー側の自主規制により1986年以降、アメリカでは1度も再公開されていない『南部の唄』に関しては、ディズニー+での配信は行なわれない。

画像: 『南部の唄』はアメリカ南部の農場を舞台に白人の少年ジョニーと黒人のリーマスおじさんの心のふれあいを描いた実写部分を軸に、リーマスおじさんが話すおとぎ話の部分がアニメーションとして登場する実写とアニメーションが融合した作品。東京ディズニーランドにあるスプラッシュ・マウンテンの題材となった。(写真はDVDパッケージ)

『南部の唄』はアメリカ南部の農場を舞台に白人の少年ジョニーと黒人のリーマスおじさんの心のふれあいを描いた実写部分を軸に、リーマスおじさんが話すおとぎ話の部分がアニメーションとして登場する実写とアニメーションが融合した作品。東京ディズニーランドにあるスプラッシュ・マウンテンの題材となった。(写真はDVDパッケージ)

 今回の判断により、ディズニーが、過去の作品の配信や公開に関してだけでなく、今後の作品制作においても、歴史上に実在した差別や偏見を無視することなく、きちんと物語の中に取り入れ、世の中に広く問題提起していくことができるというポジティブな見方もある。

 ディズニー+は、日本を含むアジア圏においては、今後数年かけて随時スタート予定。(フロントロウ編集部)

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