「サステナビリティ(持続可能性)」とは、国連が掲げたSDGs(持続可能な開発目標)をもとにした考えで、ファッションにおいては、大量生産と大量消費をやめることや、単発的な消費をしないことなどが求められている。
アカデミー賞などの世界的に注目を集めるレッドカーペットにおいては、その日のためだけに、数千万円以上の経費をかけたドレスが特注で作られており、レッドカーペットのファッションはサステナブルとは反しているとして、2020年はこれらを見直そうと改革が起きている。
フロントロウ編集部では、2020年のアカデミー賞授賞式で「サステナビリティ(持続可能性)」のファッションを取り入れたセレブにフォーカスし、最新の流行を読み解く。
最も好評だったサステナビリティ・ドレス
女優のケイトリン・ディーヴァーは、ハイブランドのルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)が手掛けた"completely sustainable(完全なるサステナビリティ)" ドレスを着用。深紅のベアトップドレスに、スワロフスキークリスタルとガラスビーズで刺繍されたシルクサテンのドレスは、環境に配慮しリサイクルが可能なカスタムメイドのドレス。
米国環境保護庁によると、衣服に使用されるほとんどの素材はリサイクルが難しく、例えば綿のTシャツのような基本的なものでさえ、再利用のためには約3,000リットルもの水が必要と言われている。今回ケイトリンはレッドカーペットの取材で、環境に配慮するルイ・ヴィトンとタッグを組んで、このドレスを選んだことの大切さをアピールした。
シアーシャ・ローナンの美しきリサイクルドレス
映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で主演女優賞にノミネートされた女優のシアーシャ・ローナンは、「サステナビリティ(持続可能性)」のテーマの元、モダンなラッフルのデザインが美しいグッチ(Gucci)のドレスを着用。
実はこちらのドレス、先週の2月3日に開催された、英国アカデミー賞(British Academy Film Awards/BAFTA)の授賞式で、シアーシャが着用したグッチのブラックドレスの一部をリサイクルした、カスタムドレスだったことが判明。
セレブリティたちが高価なドレスを1度しか着ないことが「美」とされてきた時代がこれまで長く続いており、その影響はSNS上のインフルエンサー達に広まってきた。そういった負の連鎖を止めるべく、今ファッション業界は急速に変化することが課題となっている。
今回シアーシャがドレスをリサイクルして美しく着こなしたように、トップセレブたちにも、過去のドレスの着回しやヴィンテージの着用を求める傾向が、今後さらに強まると見られる。
また、ファッション業界はこういった問題に取り組むために、いち早く環境問題に取り組んだデザイナーとしても知られるステラ・マッカトニー(Stella McCartney)やガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)の支援を急速に求めている。
ホアキン・フェニックス、同じスーツを着ることを宣言!
本年度、各映画の授賞式で主演男優賞を総なめにしているホアキン・フェニックスは、2020年はすべての授賞式で、ステラ・マッカートニーの同じスーツを着ることを宣言。アカデミー賞でもステラ・マッカートニーのスーツを着用して登場して「サステナビリティ(持続可能性)」のメッセージを発信することを貫き通している。
「サステナビリティ(持続可能性)」のテーマのもと、物資的な無駄を減らすことは、ドレスのファブリックだけでなく、イベント自体の準備にも重要と言われている。
2020年に開催された授賞式や今回のアカデミー賞授賞式では、セレブたちが歩く広大なレッドカーペットも、リサイクル可能なものを選ぶなど新たな変化が生まれている。
しかし、世界全体の二酸化炭素排出量のうち、8%以上がファッション業界からの排出といわれているのが現状。セレブのアシスタントは、1着の特別なドレスのために、授賞式のシーズン中に数十台のタクシーを利用して、衣服やジュエリーを受け取り、代理店やショップを何往復も行き来しながら、準備を進めてくる習わしが長年続いている。
今回アカデミー賞授賞式の公式発表では、二酸化炭素排出量やその他の環境への問題の取り組みを変えるために、将来的には「我々はこれからもサステナブルなプランを拡大し、最大のゴールであるカーボン・ニュートラル(※)になることを目指します」と発表した。
※自分の行動(例:電化製品を使用する、飛行機に乗る)によって排出されるCO2の量と、そのCO2を吸収する行動(例:植物を増やす)が中立になってプラスマイナスゼロになることを、カーボン・フットプリントがゼロになる、カーボン・ニュートラルになると言う。
(フロントロウ編集部)