物語において「強い女性」が描かれる時、その女性は「男らしく」描かれている。俳優や監督として活躍するブリット・マーリングが、物語における女性の描かれ方の問題点を指摘した。(フロントロウ編集部)

1人の人間ではなく、モノとしての女性

 俳優、監督、そしてプロデューサーとして活躍するブリット・マーリングは、大学を卒業した直後は、世界大手の投資銀行ゴールドマン・サックスでアナリストとしてキャリアを進めていた。

 しかし、俳優を目指すことを決意したブリットは、オーディションを受けては落ちることを繰り返していたという。当時ブリットが受けていた役は、「細くて魅力的なデイブの妻」「胸が大きくて赤いセーターを着ている」といったものだったと、米New York Timesのコラムで明かす。

画像: 1人の人間ではなく、モノとしての女性

 そこで自分で脚本を書くことにしたブリットは、物語制作について勉強している時に、あることに気がつく。それは、多くのドラマチックな物語で、女性キャラクターの多くが殺されること。

「この世界の物語は、女性はモノであり、モノは使い捨てできると発信している。だから、女性はいつでもモノ化され、多くの時に使い捨てされる」

 社会に存在する物語の問題点をそう考察したブリットは、地球と瓜二つの惑星に翻弄される女性が主役のSF映画『アナザー・プラネット』を共同制作。サンダンス映画祭でも上映され、俳優の仕事も依頼されるようになったという。

「強さ」と「男らしさ」はイコールではない

 俳優としてのキャリアの初めにぶつかった、男性の所有物のような立場の女性キャラクターや、殺される女性キャラクター。そんなキャラクターたちと離れ、強い女性リーダーを演じる機会を多く得られるようになったブリットだったけれど、鋭い視点で、ふたたびあることに気がつく。

「強い女性リーダーを演じれば演じるほど、キャラクターの強さにおける幅の狭い特徴を自覚した。それは、身体的強さや、直線的な野望、合理的であること。(これらは)男性的な様式の強さだ。(中略)物語のなかで、私たちが女性を殺す時、私たちは生物的な女性の身体を消滅させただけではない。女性であろうと男性であろうと、自然にある女性らしさという力もまた消滅させている」

画像: 「強さ」と「男らしさ」はイコールではない

 ここ数年で女性の起用や活躍が支持され、ハリウッドではアクション映画やヒューマンドラマなど、ジャンルを問わず強い女性キャラクターが増えている。この前進は評価に値するものの、ブリットが問題視しているのは、ハリウッドが描く“強い女性”は、肉体的に強かったり、野心的だったりと、伝統的に「男らしい」とされてきた要素を持つキャラクターに集中していること。そういったキャラクターばかりが表立ち、女性が持つその他の魅力が強さとして描かれることは少ない。

 「共感力、傷つきやすさ、聞く力などを、強さとして想像するのは難しい」と認めるブリットだけれど、社会が定義する「強さ」に疑問を持つブリットは、こうも語る。

「死んだ女の子や、デイブの妻にはなりたくない。でも、もし私の力が、暴力や支配、制圧や植民地化でしか定義されないのであれば、強い女性リーダーにもなりたくない」

 そんな彼女は、制作も主演も務めたNetflixドラマ『The OA』では、不思議な力を持つ主人公プレーリー・ジョンソンとの対話を通して、10代の少年たちが「有害な男らしさ」と向き合う過程を描き、“暴力的ではない強さ”を描くことに挑戦。同作はGLAADや全米脚本家組合賞にノミネートされて話題を呼んだ。

様々なタイプの女性を描くべき

 もっと多くのタイプの女性を描くべきだという意見は、ブリットだけのものではない。

 例えば、俳優のリース・ウィザースプーンは、ほぼすべてのハリウッド映画で女性キャラクターが男性キャラクターに「What do we do now(どうする)?」と聞き、男性に判断を求めるシーンがあることに嫌気がさし、もっと多くの女性像を描くために、自らの制作会社Pacific Standardを2012年に設立。

画像1: 様々なタイプの女性を描くべき

 同社はこれまでに、1600キロの1人旅をした女性シェリル・ストレイドの自伝映画『わたしに会うまでの1600キロ』にはじまり、DV・レイプ・不倫などそれぞれ悩みを抱える5人の女性たちを主人公にしたドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』や、復讐に燃える妻の巧妙な罠に翻弄される夫の姿を描いた映画『ゴーンガール』など、ヒット作を多くリリース。女性だからといって一つのステレオタイプに縛られず、良い面もあれば、悪い面もあり、母でもあれば妻、友人、社会人、姉・妹でもありと、女性キャラクターに多様な顔を与えてきた。

 さらに、女性キャラクターに多面性をという議論は、ハリウッドの賞レースの受賞スピーチでも近年よく聞かれるようになっている。

 ドラマ『マーベラス・ミセス・メイゼル』で、男性中心の世界である1950年代のスタンドアップ・コメディ界で活躍する女性主人公を演じたレイチェル・ブロズナハンは、2018年度に同役でゴールデン・グローブ賞を受賞した際には、こう語っている。

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「これは、大胆で聡明で、そして気難しい女性についての物語でした。この作品の一部になれたことを、限りなく誇りに思っています。しかし世界には、話されるべきもっと多くの女性たちの物語があります。この新しい時代で、話す責任を持ち、投資をし、そういった物語を援護しましょう」

 『キャプテン・マーベル』や『マレフィセント2』がヒットした2019年は興収トップ100の映画のうち女性が主人公を務める作品が過去最高の40%に達した。良い風向きである一方で、主人公以下のメインキャストでは女性キャラクターの増加に変化はなく、ブリットをはじめとした俳優たちが訴えるように、これからのハリウッド映画には、女性キャラクターの多面化が求められる。

 ブリットは、最後に物語の持つ力についてこう語った。

「私たちが新しい世界を想像し、それを、物語を通して他の人々とシェアする時にこそ、新しい世界が本当に来るのかもしれない」

(フロントロウ編集部)

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