コナン・グレイのアルバム『キッド・クロウ』を全曲解説！ビリー・アイリッシュの次は彼！

ビリー・アイリッシュのような独特の世界観を持つZ世代が音楽界を盛り上げるなか、アルバム発売前からツアーは全公演完売、コーチェラへの出演も決定という、新たな大型新人が現れた。アルバム発売前にして収録曲のストリーミング数が5億回を突破している大注目の21歳、コナン・グレイのデビューアルバム『キッド・クロウ（Kid Krow）』を徹底解説。

コナン・グレイって誰？　Who’s Conan Gray?

日本とアイルランドの血をひくアメリカ生まれの21歳のシンガーソングライター。Z世代の憂鬱をユニークな歌詞を通して歌う音楽性と、笑いにあふれたインパクト大なキャラクター、アメリカンハイスクールなファッションが支持され、アルバムデビュー前にしてツアーは全公演が完売、開催は残念ながら延期となってしまったが、コーチェラへの出演も決定。3月20日に待望のデビューアルバム『キッド・クロウ（Kid Krow）』をリリースした。

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　アルバムのオープニングを飾る、悪い経験をしたときに自分をなぐさめ励ましてくれる友達の必要性を歌った「コムフォート・クラウド」は、コナンの一番の親友であるアシュリーという女友達を思って作った曲。

　人付き合いが苦手なことを明かしているコナン。アルコールはダメなタイプで、大学在学中には、「昨夜大学のパーティーに行ったんだけど、みんなが酔って踊りまくっているなか、僕は2時間くらい人混みの中に立ってメールをチェックしつづけてた。すごく楽しかったよ」と自虐ツイートをしていた。

　そんなコナンが、パーティーにまったく馴染めない自分をよそに、酔って盛り上がり、キスしてくる相手に対する、“もっと別のことを一緒にしたい”、“酔ってないときにも迫られたい”という気持ちを歌う。

　21歳にしてキス・バージンであることを公言しているコナン。恋愛経験は豊富ではないけれど、言ってることとやってることが違う相手との恋に振り回された経験はあり、代表曲「マニアック」は、そんな相手との体験がもとになっている。

　コナンは公式リリースで、「真夜中に酔った元恋人からメールがきたあとにシャワーで書いたんだ。僕がその人を放っておかない変人だって町中で言いふらしていたけど、本当の変人は向こうだった。夜中に変なメールしてきたり、僕のショーに予告なしに現れたりと、奇妙な行動を取っていたのはその人のほうだったんだから。ウケると思ったし、自分の友達はみんな似たような経験をしてたから、精神的に浄化するために、サイコパスな元恋人に捧げるお別れソングを作ることにしたんだ」としている。

　4曲目に収録されたインタールード（間奏曲）のテーマは、インターネットで繋がった関係。

　同曲でコナンは、孤独じゃないけれどひとり、最も親しい相手に思えて最も遠い存在という、幸せと儚さの両面を持つオンラインラブに思いを馳せる。

　コナンが「いつも僕の小さなハートをもてあそんだバカ野郎に捧げます」と言う「チェックメイト」は、ずっと自分を振り回してきた相手を吹っ切って形勢逆転を告げる曲。

　この曲を理解したいならば、ミュージックビデオを見るべし。MVのなかで浮気した恋人とその浮気相手をこらしめるサイコパスを演じるコナンは、「（MVを通して）遊ばれたことに対する復讐がついにできる。君が愛をゲームのように扱うなら、僕が勝つ。僕の親友と浮気するなら、気づかないふりをして、2人を誘拐して無人島に置き去りにして餓死させる。2人が残り少ない人生を一緒に過ごせるように（それが願いだったでしょ）」と、公式リリースにて語っている。

　「アップビートな曲と憂うつな曲の半分半分くらいだよ」とコナンがSNSで明かすアルバム『キッド・クロウ』。コナンは憂うつな気持ちを歌う歌詞が支持されているため、トラックリストが発表されると、SNSではファンのあいだで“最も悲しい曲はどれだ”という推理がはじまった。

　その1、2位を争ってきたのが、10曲目に収録された「ヘザー」とこの曲「ザ・カット・ザット・オールウェイズ・ブリーズ」。コナンは「ヘザー」をアルバムのなかでもとくに「悲しい曲」としてあげているけれど、「もっともエモい曲はヘザー？」とSNSでファンに聞かれたときには、「ううん、たぶんザ・カット・ザット・オールウェイズ・ブリーズだよ」と答えていた。

　相手の心がほかの人に移ってしまっていることが明確になったときの、悲しみ、絶望、戸惑いが歌われている「ファイト・オア・フライト」。

　コナンはアルバム発売前にすべての曲について明かしたくないという主義で、とくに同曲については多くは語っていないけれど、「ダン（・ニグロ）がコードを少し直したり、一緒に考えた一節があったりはするけれど、基本的に『リトル・リーグ』以外のすべての曲は僕が自分で作った」とインスタグラム・ライブで明かしているため、どの曲も大なり小なり実体験にインスパイアされていることは間違いない。

　決して裕福に育たなかったコナンが、お金持ちなキッズにちくりと歌いかける「アフルエンザ」。Affluence（豊かさ）とInfluenza（インフルエンザ）をかけ合わせて作られた造語であるAffluenza（アフルエンザ）は、経済的に恵まれた環境で育ったせいで自分の行動によってもたらされる結果や責任が理解できない若者に対して使われる言葉。日本語だと金持ち病とされている。

　コナンは「自分の家族はお金がなかった」とSNSやYouTubeでたびたび明かしているけれど、節約のためにヴィンテージショップで洋服を買っていたのが今のアメリカン・レトロなスタイルを確立し、売れて地元の田舎町を抜け出したいという気持ちが音楽の原動力になりと、裕福ではなかった生い立ちがアーティストとしてのコナンに大きく影響した。

　2014年に突如、「好きな人にツイートして愛してくださいって言おう。そしたらいつか夢が叶うかもしれない」とツイートし、その後、人気シンガーのトロイ・シヴァンとアリアナ・グランデに「can we be best friends（親友にならない）？」と、この間奏曲の歌詞をツイートしていたコナン。

　ちなみにトロイはその約4年半後の2019年にコナンの楽曲「チェックメイト」を絶賛。“親友”とまではいかないけれど、コナンは好きな人に認めてもらい、ある意味で夢が叶う結果となった。

　コナンがアルバムの中でもとくに「悲しい曲」としてあげるのが、「ヘザー」というこの曲。

　ヘザーは、コナンが好きな子の好きな子。歌詞には、ヘザーを見るような目で自分を見てほしい、どうせならヘザーになりたい、という片思いの心の痛みが並ぶ。コナンが、「ひとりで泣くのに飽き飽きしたから、みんなにも（「ヘザー」を聴いて）僕と一緒に泣いてほしい」「『ヘザー』を聴くと腐敗して床板の下へと溶けちゃいたい気分になる」とSNSで明かす、ぼろ泣きソング。

　いざ大人になってみたら、“大人”というものが未成年にはない悩みや苦悩をどれだけ抱えているかに気づき、それに戸惑う気持ちを、“以前の自分は小さな舞台に立っていた”として歌うこの曲。

　ちなみに『キッド・クロウ（意味：カラス・キッド）』というアルバムタイトルの意味についてコナンは、「（親友に）『僕は誰？』って聞いたら、『あなたはカラス』って言われて、それがしっくりきたんだ。僕はとても陰気で少しミステリアス。人に心を開かないし、物事をマジメにとらえない。僕という人間を象徴したアルバムにしたかったんだよ」と米Peopleに明かした。

　アルバムの最後の曲「ザ・ストーリー」。イジメられてこの世を去った子、お互いへの恋心を打ち明けられないまま疎遠になった男友達同士など、曲に登場する物語は、コナンやコナンの友達の実体験がもとになっている。

　コナンはこれらの話について「自分や友達の人間性に影響した」「ずっと忘れたくない、一生記憶に残っているであろう物語」と、実体験を曲にして聴くものと心を通わすシンガーソングライターらしい言葉をLA公演で語った。同曲のサビでは、解決できないような問題に直面しても、いつか状況は変わるというポジティブなメッセージが歌われている。

　音楽界に新たに現れた大型新人、コナン・グレイのデビューアルバム『キッド・クロウ』は、輸入盤・デジタルが発売中。コナンは3月にインスタグラムライブで「おばあちゃんに『私が死ぬ前に日本公演をしなさい』って言われてる」「日本公演がすごくしたい。今年できたらいいな」と語っていたので、近いうちに生コナン・グレイが見られる可能性も。そのときまでに、アルバムでしっかり楽曲を予習しておいて。

＜発売情報＞
■デビューアルバム
『キッド・クロウ（Kid Krow）』
輸入盤・デジタル発売中

■デビューEP 『Sunset Season』
デジタル配信中

■コナン・グレイ日本公式サイト
■コナン・グレイ公式ツイッター
■コナン・グレイ公式インスタグラム
■コナン・グレイ公式フェイスブック

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Photos: ゲッティイメージズ、ニュースコム

（フロントロウ編集部）