レイプでなくても…、称賛浴びたマイソンの発言
3月8日の国際女性デーに向けて、さらに関心が高まっているフェミニズム。女性の地位を向上し、女性の権利を守るためのフェミニズムだけれど、同じ社会に共存する存在であり、さらに、比率として社会のなかで決定権のある立場にいる場合が多い男性もアクションをとることが不可欠となる。
そこで今回は、2018年10月に、アメリカで活躍するラッパーのマイソン(mysonne)が、過去に性暴力を働いたことがあるとの疑惑が出たアメリカ最高裁判所判事のブレット・カバノー氏に対する就任反対デモでのインタビューを振り返る。マイソンは、現代の社会にも根強く残る「男性の普通」は、意図的でなくとも女性を傷つけた可能性を認めるべきだと訴えた。
「私が今日ここに来たのは、男性は女性とともにあるだけでなく、女性を支持しなくてはいけないと思ったからです。そして女性を支持するためには、私たちは、男性が恩恵を受けている性暴力の文化、つまりレイプの文化などがあることを認めなくてはいけません。それを変えるためには、男性が変わらないといけないのです」
「カバノーの件を見ても、私たちの生活でも起こっていることと似ている点が見られます。私たちは、自分たちでも気づかないうちに、女性にトラウマを与えている。なぜなら、それが普通とされてきたからです。…、女性がノーと言ったって、彼女にプレッシャーをかけて何かをさせたことがあるだろう。それは、男にとって普通の行動だとされてきたから。男は女性をモノにするのがかっこいい生き物とされてきたから。
しかしそのことに気がつき、女性たちからの話を聞いた時、自分たちが普通だとしてきたことのせいで、彼女たちは傷ついてきたんだと気がつくんだ。そして、そこで説明責任はうまれる。自分は何かをしたかもしれない。レイプはしていないけれど、男として、女性のトラウマとなる何かをしたかもしれない。その時こそが、成長した男としての始まりなんだ。自分の過ちへの説明を果たす時が。
それが、今日私がここへ来た理由です。カバノーの件を見て、その考え方を理解した時、女性に直接的ではなく、また、意図的でなくとも傷つけたかもしれないという事実に折り合いがつけられず、男として正直な態度を示せないのであれば、最高裁判所にふさわしくない。私たち国民を代表できない。国の最も権威のある裁判所で、私たちを代表することはできない。
だから私はここで、女性たちと連帯して立っているんです。私は何年もの間、彼女たちが権利を主張し、デモをしてきたのを見てきました。だからこそ、私たち男性もここへ来て、同じことをして、どれだけ女性たちを尊敬し、愛し、支持するかを見せる必要があると思ったのです」
ブレット・カバノー氏による性暴力疑惑
2018年9月に、トランプ米大統領に指名されて米連邦最高裁判事の候補となっていたカバノー氏から過去に性暴力を受けたとして、3名の女性が実名でカバノー氏を告発。その公聴会でのカバノー氏のわめきちらす態度や、女性上院議員たちの質問をはぐらかす態度は非難された。さらに、連邦捜査局が1週間で行なった9名の事情聴取に、被害者やそのセラピスト、カバノー氏本人が含まれていないことから、カバノー氏を最高裁判所判事に任命することに国民からは大きな反対が起こった。
また、カバノー氏は政治的に保守派であり、加えて、アメリカの裁判所判事は終身制であることから、2,400名以上の法律教授たちが、上院にむけて承認反対を表明する手紙を出したほど。しかし最終的にカバノー氏は最高裁判所判事に任命され、それを受けて、最高裁判所や上院の前では、300人の逮捕者を出すほどの大規模デモが発生した。
マイソンはこのデモに参加したことで、一時逮捕された。
男性同士がかばいあう社会
カバノー氏に対しては、トランプ大統領は、自分と同じ保守派の政治的スタンスを持ち、懇意にしている人物を最高裁判所判事にしておきたかったことで、一貫して彼をかばい続けた。そんななか、トランプ氏をはじめカバノー氏をかばう人たちから多く聞かれた言葉は、誰でも若かりし頃に過ちはあるから仕方ない、というもの。
彼の無実を信じるのではなく、なんと過去に何かを犯していたとしても、若かったのであれば仕方ないという意見は、性犯罪という重大な犯罪において、男性が罪をとがめられず、また、女性の苦悩を無視して深刻にとらえていないことを明らかにしていると、多くのカバノー反対派が非難の声をあげた。
そんななかで男性であるマイソンが、男性は生活の中で、女性を自分たちの普通に合わさせたことがあるだろうと言って過去と向き合い、だからこそ男性である自分たちこそがフェミニズムを支持しなくてはいけないと語ったことには、大きな喝采が送られた。
(フロントロウ編集部)