『フューチャー・ノスタルジア』の制作・発表秘話
アルバムタイトルの由来
初のワールドツアーである“セルフタイトル・ツアー”を行なっている最中に、早くもセカンドアルバムの制作に入ったというデュア・リパ。1年ほど方向性を模索したあと、ラスベガスで散歩していたある日、こんな考えが浮かんだという。
「私が大好きなアーティスト、アウトキャストやノー・ダウトの曲を聴きながら歩いていたら、“昔の曲なのに、何でここまで共感できて胸に迫ってくるんだろう?何で彼らはここまでトレンディーなんだろう?そして私も、私の子どもの頃の思い出や気持ちを、新しく現代的なものに組み入れられないだろうか”と思ったんだ。それがきっかけでアルバムのコンセプトが出来上がったの」
そんな“気づき”を経てから、未来(フューチャー)にいながらも懐かしさ(ノスタルジア)を感じさせる『フューチャー・ノスタルジア』というアルバムタイトルが生まれ、幼少期の思い出の曲である70年代ディスコ〜2000年代初期ダンスポップに影響されたアルバムを作ることに。
ところで、70年代ディスコ〜2000年代初期のダンスポップに影響されたというけれど、デュアは1995年生まれの24歳。70〜80年代には誕生していなかったはず。これについては、「親が聴いていたおかげ」と笑っており、自身が幼少期に聴いていた曲だけでなく、親が好きで家で聴いていた曲がデュアの幼少期の思い出の曲として残っているからなのだという。
SNSで涙ながらに告白…緊急発表した理由
アルバム『フューチャー・ノスタルジア』の発売日は、当初は日本盤の発売日と同じく4月3日だった。しかしデュアは3月末にインスタグラム・ライブに登場し、急きょ前倒しして3月27日にアルバムをデジタルリリースすることにした理由を泣きながら明かした。
「(新型コロナウイルスによって)ここ数週間見えない状況が続いていて、それを考えると涙が出てくる。多くの人々が苦しんでいるなか、このアルバムをリリースするのが正しいことなのか葛藤していた…(※ここで「どう伝えたらいいのか分からない…」と言った後に涙で声をつまらせてしまう)」
「今私たちに必要なのは、音楽や喜びや希望の光。変化を起こすためにみんなで積極的に行動を起こさなくてはいけない。そんななか私は私のできることとして、アルバムを当初の4月3日ではなく今週の金曜日、3月27日に発表することにしました」
デュアの母国イギリスでは、3月に入ってから新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が一気に拡大し、国家非常事態宣言が発令。無策のままだと25万人の死者がでる可能性があるという調査結果を受けて、3月23日に、不要不急の外出が原則禁止に。3月末の時点で、完全に通常の生活に戻れるまで6ヵ月かかる可能性があるという政府見解が発表された。
母国が混乱する様子を見たデュアは、通常のプロモーションがほぼ出来ないなかにありながらも、自分の音楽を聴いて踊ったり歌ったりして少しでも元気になってもらえればと、マーケティング計画は無視してアルバムを緊急解禁することを決定。
デュアはライブ配信中には、アルバムの収録曲「ブレイク・マイ・ハート」を共作したアンドリュー・ワッツが「(コロナウイルスの)被害を受けた」と明かしており、身近な人に影響が出ていることも、デュアの決断を後押しした可能性がある。
『フューチャー・ノスタルジア』収録曲を解説
アルバム『フューチャー・ノスタルジア』は全11曲(日本盤は全14曲)。そのなかから、シングルカットされた曲とタイトルソングをデュアの解説とフロントロウ編集部の解説とともにご紹介!
元彼を「今さらもう遅い」と切り捨てる「ドント・スタート・ナウ」
デュアの十八番である前向きなブレイクアップソングにディスコの懐かしさを取り入れた「ドント・スタート・ナウ」。デュアは、「ようやく吹っ切れて自分を取り戻したと思ったら、誰かさんが戻ってこようとする、というブレイクアップソング。自分は自分が思っている以上に強いんだっていうエンパワーメントソングでもあるの」と、Apple Musicに語る。
同時に、「みんなに共感してもらえる音楽を作りたいと常に思っている。正直で、本当に起きたことや実在のものを題材にすることは、自分としても安心感がある」と語っているので、この曲をはじめ、アルバムの多くの曲がデュアの実体験からきていると見て良さそう。
どの元彼が題材になっている?
これまで、シェフ兼モデルのアイザック・カルーと、ポップバンドLANYのヴォーカルであるポール・クラインとの交際歴があるデュア。
ポールはデュアと別れた後に一時SNSの使用をやめるほど落ち込み、破局アルバムまでリリースした一方、アイザックはデュアがツアー中にクラブで女性とイチャついていたとウワサされたことが。
「ドント・スタート・ナウ」の歌詞からして、デュアはこの曲の相手に泣かされているようなので、浮気疑惑が出たアイザックが題材である可能性の方が高そう!?
1980年代のディスコバイブスで踊らせる「フィジカル」
デュアが、「あまりにもずっと強烈な曲すぎて好き嫌いがわかれるか心配だった」とApple Musicに語るほどアップビートなのが、80年代に流行したシンセポップ・チューンに影響された「フィジカル」。1981年にメガヒットしたオリヴィア・ニュートン=ジョンによる同名曲の歌詞「Let's get physical(カラダで感じよう)」を歌詞に取り入れている同曲は、「これを聴いたら、『OK、ショットで飲もう』と言っちゃうような気分になってほしい」とデュアはSNSで明かした。
ちなみに、デュアの心配をよそに、楽曲はMVがYouTube上での公開からわずか1ヵ月で5,000万再生を超えるほど話題に!デュア自身は、「ここまでみんなが熱狂してくれるとは思わなかった」と喜んでいる。
「フィジカル」は日本と何かと縁がある
じつは「フィジカル」は、日本と何かと縁がある作品。デュアは同曲のスペシャルバージョンとして、K-POPガールズグループMAMAMOOのメンバー、ファサとコラボ。そんな2人のコラボが実現したきっかけは、日本での出会いだった。
2人は日本で催された音楽イベントMAMA2019でコラボパフォーマンスを行なったのだけれど、デュアは、「パフォーマンスの後に一緒に過ごす時間があったんだけど、とてもいい子で、相性の良さを感じたから、いつか一緒に曲を出そうってことになったの」と、日本での出会いがコラボに繋がったことを明かした。
また、「フィジカル」のリリースと共に発表されたオフィシャルグッズにも日本の影響が。それと言うのが、日本の少女漫画風のデュアのイラストがプリントされた「Manga」グッズシリーズ。ボディスーツやトートバッグ、Tシャツ、フーディーなどがあり、デュアの海外公式サイトで販売されている。
予期していなかった新しい出会いに動揺する「ブレイク・マイ・ハート」
デュアがインスタグラム・ライブで、「私が得意とするダンス・クライング(踊りながら泣く)な曲だから、みんなに聴いてもらうのが楽しみ」とした最新シングル「ブレイク・マイ・ハート」。
これまでの恋愛での失敗を振り返りながら、サビで「家にいればよかった/だってもうあなたを手放せない/私を傷つけるかもしれない相手と恋に落ちちゃってるの?」と歌う同曲について、「誰かを愛していて、すごくワクワクして幸せなんだけど、『これ、いつダメになるんだろう』って考えちゃっている自分について書いた。繊細さを持つことを称えて、こういう気持ちになってもいいんだって言ってるんだよ」とデュアは説明する。
曲の題材は、やっぱり今彼アンワー・ハディッド!?
「ブレイク・マイ・ハート」では、相手を探してもいない時に恋に落ちてしまう時の戸惑いが歌われているけれど、その恋に落ちてしまう相手とは、デュアが交際中のモデルであるアンワー・ハディッドである可能性が高い。
ジジ・ハディッドやベラ・ハディッドの弟であるアンワーと2019年に交際に発展したデュア。今ではハディッド家の身内の催しにも誘われるほど真剣交際をしており、現在2人は新型コロナウイルスのため外出禁止令が出ているイギリスにて同じ家で自主隔離を続けており、なかば同棲状態。
3月末のインスタグラムライブでは、「(自主隔離中の時間を使って)アンワーと一緒に2夜連続でフルーツジャーキー作りに挑戦した」とラブラブな様子さえのぞかせたデュア。
アルバムには他にも、理想の相手にパーフェクトなタイミングで出会ったことを喜ぶ「レヴィテイティング」や、冷静さを忘れるほど好きな相手について歌った「クール」など、アンワーのことを歌っているのかが気になってしまう曲があるので注意して聴いてみて。
エンパワーメント・ダンスソング「フューチャー・ノスタルジア」
2019年12月にリリックビデオが解禁された、アルバムのタイトルソング「フューチャー・ノスタルジア」。セカンドアルバムで重要だったことの一つについて、「セカンドアルバムはプレッシャーが大きいと多くの人に言われ、そういった意見やプレッシャーは無視して、友達と一緒にスタジオに入って、自分が誇りを持てて、いい気分になれるものを作ること」だったとインスタグラム・ライブで明かしたデュア。
同曲「フューチャー・ノスタルジア」には、アルバムのコンセプトである懐かしさを感じるサウンドとともに、「私を理解したくて仕方ないみたいね/私の名前が口先まで出かかっている/言いたいこと言ってなさい/レシピが欲しいのに私の音は手に余る」と、セカンドへのプレッシャーを跳ね返すようなパワフルな歌詞が登場。それだけではなく、「女の指導者には慣れてないんだろうけど」といった、現代と過去の女性たちを称えるエンパワーメントに溢れた歌詞も聴ける。
もう一つのエンパワメントソングにも注目!
LGBTQ+コミュニティのアライ(※擁護・応援する人)であることを公言するなど、以前から権利運動に積極的なデュア。ここ数年はとくにフェミニスト(※男女が平等な権利を得ることを支持する人)としての発言力を強めており、セクシャルハラスメントに苦しむ女性たちを支援するキャンペーンに参加したり、インタビューでMeToo運動への支持を明かしたり、人工中絶における女性の選択の権利をSNSで支持したりしている。
そして、アルバム『フューチャー・ノスタルジア』には、「女性のエンパワメントについてよく話しているのに、女性として生きることの苦労についての曲を作ったことがなかった」とApple Musicで言うデュアがそれを題材にした曲「ボーイズ・ウィル・ビー・ボーイズ」が収録されている。
「私たちには陽が落ちる前に帰る習性がある/男の子が近くにいる時は護身のために指の間に鍵を挟む/自分たちが抱えている恐怖を笑って隠しているなんて笑えちゃうよね/笑えることなんて何もないのに」といった、考えさせられる歌詞が並ぶ。
デュアのこれから、ツアーや来日は?
2月末に世界最大級のLGBTQ+パレードであるオーストラリアのゲイ・アンド・レズビアン・マルディ・グラでヘッドライナーを務め、3月初めに英グローバル・アワードで最優秀ブリティッシュ・アクト賞を受賞してからは、外出禁止令が出されているイギリスで、他の国民と同じく自宅での自主隔離を続けているデュア。
2020年4月26日からはフューチャー・ノスタルジア・ツアーをヨーロッパで幕開ける予定だったものの、こちらに関しては来年2021年1月への延期を3月23日に発表。スタートの1ヵ月前まで延期の決定を待った理由について、デュアはインスタグラム・ライブで涙ながらにこう明かした。
「延期の発表はずっとしたくなかった…だって世界で起きているこの状況が変わって欲しいと思っているから。だから延期という決定はギリギリまで待ちたいと思っていたけど、でも現時点で変わるように見えないから、みんなの安全のためにも慎重にいくことが最優先だと思っている。だからツアーは延期することにした」
2019年12月には音楽アワードMAMA出演のため来日して、パフォーマンス以外に、チーム・ラボやロボット・レストランに行ったり、プリクラを撮ったり、朝日を拝んだりと、日本を満喫していたデュア。
現在発表されている公演はヨーロッパのみだけれど、本人は「世界中を巡るつもりだから、まずはヨーロッパの公演のみを発表するけど、近いうちにもっと日程を追加するから心配しないで」と言っているので、2021年に待望の2ndアルバム『フューチャー・ノスタルジア』を引っさげたデュアを日本で迎えることができる予感!
<アルバム情報>
デュア・リパ / Dua Lipa
ニューアルバム
『フューチャー・ノスタルジア / Future Nostalgia』
■デジタル盤
配信中
■国内盤
2020年4月3日(金)リリース
CD購入 / ダウンロード / ストリーミングはコチラ
品番:WPCR-18328
税抜価格:¥1,980
※日本盤初回プレス分にのみ、ポラロイド風カード(全3種より1枚ランダム封入)特典として封入。
トラックリスト
1. FUTURE NOSTALGIA / フューチャー・ノスタルジア
2. DON’T START NOW / ドント・スタート・ナウ
3. COOL / クール
4. PHYSICAL / フィジカル
5. LEVITATING / レヴィテイティング
6. PRETTY PLEASE / プリティー・プリーズ
7. HALLUCINATE / ハルシネイト
8. LOVE AGAIN / ラヴ・アゲイン
9. BREAK MY HEART / ブレイク・マイ・ハート
10. GOOD IN BED / グット・イン・ベッド
11. BOYS WILL BE BOYS / ボーイズ・ウィル・ビー・ボーイズ
12. DON’T START NOW (Live in LA Remix) / ドント・スタート・ナウ (ライブ・イン・LA・リミックス) *国内盤ボーナス・トラック
13. DON’T START NOW (Purple Disco Machine Remix) / ドント・スタート・ナウ (パープル・ディスコ・マシーン・リミックス)*国内盤ボーナス・トラック
14. PHYSICAL (Leo Zero Disco Remix) / フィジカル (レオ・ゼロ・ディスコ・リミックス) *国内盤ボーナス・トラック
Photos: ゲッティイメージズ、スプラッシュ/アフロ、Dua Lipa/Facebook
(フロントロウ 編集部)