マクドナルドでセクハラが横行
4月13日に米フロリダ州で、マクドナルドを相手取って約550億円(5億ドル)の集団訴訟が起こされた。この訴訟は、2016年からフロリダ州のマクドナルド100店舗で働いた5,000人の女性とともに、フェアリー氏とレディック氏が原告となって起こしたもの。ハリウッド映画界のセクハラ問題に大きな変化をもたらしたTIME'S UPによるTIME'S UP Legal Defense Fundが、この裁判のサポートを行なっている。
同じ店舗で働いていたというフェアリー氏とレディック氏は、同僚や顧客から何度も性的いやがせを受けたという。そのなかには、胸のサイズを話題にしてくるといった言葉によるセクハラ、身体を触ってくるといった身体的なセクハラだけでなく、なんとフェアリー氏の娘とセックスするにはいくら払えば出来るかといった卑劣なものまであったという。資料によると、2人がセクハラを上司に報告したところ、彼女たちの就業時間が削られ、最終的にクビになったという。
問題はセクハラに対する教育の不足
5,000人の女性がセクハラ被害と聞くと一見多いように聞こえるかもしれないけれど、自分がこのような経験をしたことのある女性は、どの社会でも多いのでは?
事実、アメリカの雇用機会均等委員会が2016年に行なった調査では、60%もの女性が職場で性的嫌がらせを経験したと答えている。つまり、もし企業に1万の女性従業員がいたとしたら6,000人の女性がセクハラの被害に遭っていることになり、マクドナルドだけでなく、社会においてセクハラ被害が深刻であることが分かる。ちなみに、職場以外も含む日常生活の中でセクハラを経験したことのある女性の割合は81%にまで上ると、米Stop Street Harassmentの2018年の調査で明らかになっている。
それだけ普通にセクハラが横行している社会では、その根本的な在り方を変えなければ解決にはつながらない。今回の裁判で原告たちは、マクドナルドには「体系的な性的嫌がらせの問題がある」としている。そこで、この裁判ではその根本的改善を要求しており、マクドナルドに500億円の損害賠償を求めるほかに、労働者が中心となって作る嫌がらせ反対のポリシー、店舗での教育、マネージャーに報告の調査と嫌がらせを行なった人々への対応法の教育を求めている。
マクドナルドはこれを受けて、コメントを発表した。「嫌がらせを受け、さらに報復を受けたという原告の申し立ては、すぐに調査がなされました。今回の訴状であげられた新しい申し立てを調査していきます」。
マクドナルドはすでに50件以上の訴訟を受けている
マクドナルドの従業員がセクハラに声をあげたのは、これが初めてではない。職場でセクハラを受けた女性が上司に報告しても何も対策が取られず、さらには解雇されたケースなどは多く、アメリカでは過去3年間で女性従業員たちがマクドナルドを集団訴訟した件数が50件を超えている。
2018年9月には、ロサンゼルスやサンフランシスコ、シカゴなど10の都市でマクドナルドの従業員たちが集まり、セクハラに対する対策が不十分なことに声をあげるデモを行なった。
映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ事件をきっかけに世界的なムーブメントになったMe Too運動に関連して発足されたTIME'S UPが改善をもたらしたのは、ハリウッド映画業界だけではない。“セクハラが見過ごされる時代はどの社会でも終わった”というTIME’S UPの理念はほかの業界にも拡大しており、女性たちの団結がさらに時代を加速させている。(フロントロウ編集部)