ナウスタルジアという言葉を聞いたことはある?ノスタルジアを感じるものが今になって私たちの生活に影響を与えていることを指すこの言葉。今世界的に、80~90年代のアイテムやトレンド、生き方が見直されていて、再びブームとなったり、改良されて取り入れられたりしている。世界のナウスタルジア現象を特集。
「ナウスタルジア(Nowstalgia)」とは
ナウスタルジア(Nowstalgia)は、「今(Now)」と「ノスタルジア(Nostalgia)」を合わせて生まれた造語。
もともとは「将来良い思い出として振り返るであろうことが今起きている」という意味で使われていたけれど、2010年後半に入ってから80~90年代に流行っていたアイテムや作品がリバイバルし続けていることを受けて、「過去のトレンドが今流行っている」「過去のできごとが今に影響を与えている」という意味でも使われるようになった。
世界で起きている「ナウスタルジア現象」
欧米で起きているナウスタルジア、つまり、昔のアイテムやライフスタイルのリバイバルをジャンルごとにご紹介。人気再熱している懐かしのブームとは?数十年前のものが今愛されている理由とは?
ITEMS
スマホこそ古い!? セレブは「インスタントカメラ」に夢中!
昔その存在を知っていた年上の世代にとっては昔のものだけれど、それを知らない10~20代にとっては逆に新しいから人気になる。そんなナウスタルジア現象の特徴のひとつをとらえたのが、スマホカメラの登場で忘れ去られてしまったレンズ付きフィルム(使い捨てカメラ)。
セレブ界ではモデルのケンダル・ジェンナーや人気ラッパーのポスト・マローンなどがレンズ付きフィルムにハマっており、モデルのジジ・ハディッドにいたっては、レンズ付きフィルムで撮った写真を集めたインスタグラムの専用アカウントまで開設したほど!
レンズ付きフィルムは、写真アプリでレトロなフィルターの人気に火がついたあと、その加工がリアルに出せるとしてジワジワ話題に。さらに、写真は何度でも撮り直せることが当たり前な若者にとっては、“撮り直せない”ことで特別感がアップ。昔は不便だったことが、今では魅力へと生まれ変わっている。
YouTubeには、「写真が真っ暗にならないように撮る方法」「赤目にならない方法」といったチュートリアル動画がアップされているので、現代の若者も、レンズ付きフィルムあるあるに悩まされているよう。ただ、時代の変化とともにカメラショップの数が減っていることで、写真の現像場所を探すのに苦労する人もいるという、昔は少なかった問題が生まれている。
サステナブル時代に「あの懐かしアイテム」の改良版が大人気
サステナブルやSDGs(※)といった言葉が現代においてキーワードになっていることも、ナウスタルジア現象を加速させている。
壊れたら直して使う、ペットボトルでなく瓶ボトルと、サステナブルだった昔の暮らしを、サステナビリティに関心が強い10~30代がフォロー。欧米では、若者に人気のおしゃれな店舗ほど、紙製の袋の導入や、テイクアウト用品の廃止を積極的に取り入れてそれをブランドイメージとしている。
そんななか、電動スケーターのように、昔のアイテムを今風にアップデートしたエコブームも生まれている。
1990年後半に大ブームになったキックスケーターを電動化し、自転車シェアリングのシステムを合体させたレンタル電動スケーターが、エコな移動手段として大ブレイク。シェア大手のBirdは2017年の設立からわずか1年で展開台数1000万台に拡大し、2019年に企業価値は2500億円を突破した。
一方で、あまりに突然やってきたブームに法律が追いつかず、事故が起きたり、苦情がでたりと新たな社会問題も生まれており、2019年に入ってから欧米各国で電動スケーターの取り締まり強化が始まった。
※SDGs:持続可能な開発目標のこと。エネルギーをみんなにそしてクリーンに、つくる責任つかう責任、ジェンダー平等を実現しようなど、国連サミットで採択された17の目標からなる。
LIFESTYLE
ネット時代にあえて「接続解除(デジタルデトックス)」する若者が続出中!
道に迷ったときに人に聞かなくても良い地図アプリ、手紙や固定電話と違っていつでもどこでもコンタクトを取れるチャットアプリ、図書館に出向かなくてもすぐに分からないことを調べられるグーグル検索など、今のテクノロジーの発展は昔の“不便さ”がヒントになっている。
そんななか現代の若者のあいだでは、逆に、スマホで手に入った“便利さ”をあえて手放そうとする動きが出ている。
シンガーのセレーナ・ゴメスやエド・シーラン、モデルのケンダル・ジェンナーなど、一定期間スマホやアプリと距離を置く「デジタルデトックス」をライフスタイルに取り入れる人がセレブ界でも急増中。
彼らは、インターネットを通してつねに家族、友達、さらには世界とつながっている生活に疲れており、デジタルデトックスをすることでそれを一旦リセットすると共に、人に道を聞くといった、スマホがない生活だからこそ経験できる昔のライフスタイルを楽しんでいるよう。
FASHION & BEAUTY
ファッションでは「ダサい」が「おしゃれ」に180度シフト!
時代が移り変わるごとにおしゃれだったものがおしゃれじゃなくなることは、ファッションや美容界では当たり前。しかし今、一度は「ダサい」に転じたトレンドが再び「おしゃれ」に転じている!
モデルのジジ・ハディッドやヘイリー・ビーバー、リアリティスターのカイリー・ジェンナーなどの若手セレブは、みんな、90年代に親世代が追っていたトレンドに夢中!クロップトトップス、デニム・オン・デニム、ビニールサンダル、ビッグサングラス、ダーク系リップライナー、ツインハーフアップ、ヘアバンドなど、90年代に流行したおしゃれがトレンドとしてカムバックしている。
ファッションや美容界でのそんなリバイバルブームに合わせて、FilaやChampionといった昔大流行したブランドが大々的に商品を展開したり、人気ブランドが90sトレンドを意識した新アイテムを発売したりしていることが、ナウスタルジア現象をさらに過熱させている。
ENTERTAINMENT
90年代に世界中を熱狂させたテレビドラマが再び!
テレビ業界では、80~90年代に大ヒットしたドラマシリーズのリブートやスピンオフ、さらに、オリジナルをアレンジして新しく制作した作品が大ブーム。
何シーズンもつづくシリーズ作品では、シリーズに対する視聴者の愛着を築くことが必要不可欠。その点、過去のヒット作品は既存のファンがいる。さらに、過去にヒットした作品なだけに質は保証つきのため、とくに80~90年代のアイテムがブームの現代においては、新しい視聴者もゲットしやすく、これがブームを後押ししている。
その良い例が、『ビバリーヒルズ高校/青春白書』シリーズ。約20年ぶりにオリジナルキャストが集結し描く新作『ビバリーヒルズ再会白書』(Huluにて配信)は。日本を含めて世界中の『ビバヒル』ファンを大興奮させ、それと同時に旧作に再びスポットライトが当たり話題を集めている。
■『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』(字幕版、吹替版)
字幕版、吹替版 シーズン1~10が配信中
※権利の都合により配信できないエピソードがございます。ご了承ください。
■『新ビバリーヒルズ青春白書』
字幕版シーズン1~5、吹替版はシーズン1~3のみを配信中
■Huluプレミア『ビバリーヒルズ再会白書』
字幕版、吹替版 全6話独占配信中
ナウスタルジア現象をひもといていくと、昔とはまったく違く変化したように見える今の社会は、じつは昔の生活の延長線にあることに気づかされる。そんなリンクや背景を知ると、今のリバイバルブームをより深く楽しめるのでは?
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