麻薬組織の大御所がAppleを訴える
コロンビアで1970年代から80年代にかけて勢力を持った麻薬密売組織「メデジン・カルテル」を率いた麻薬王パブロ・エスコバルをご存知だろうか。アメリカを始め世界各国でコカインなどの麻薬を密売し、メデジン・カルテルは世界のコカインのなんと約80%を供給していたと見られている。巨万の富を得た大富豪パブロは、かの経済誌フォーブスに載るほど。もちろん犯罪組織のトップである彼はコロンビア政府やアメリカ政府と敵対していたが、政治家への賄賂や暗殺、さらにはテロ行為にまで手を出し、その勢力を保った。しかし政府や敵対組織との抗争が激化。1993年に44歳の誕生日の翌日に治安部隊によって射殺された。
27年前に終焉を迎えたパブロの人生だけれど、彼の側近ではまだ存命の人も。彼の兄で、メデジン・カルテルの主任会計士を務めていたロベルト・エスコバルは現在74歳。92年からの10年間を刑務所で暮らした彼は、さすがにもう隠居しているかと思いきや、ある行動を起こして周囲をざわつかせている。
なぜなら、あのアップル(Apple)を相手取って裁判を起こしたから。しかもその損害賠償請求額は、なんと約2,900億円(2.6億ドル)。
iPhoneのせいで個人情報が流出?
ことの発端は、彼のもとにディエゴと名乗る見知らぬ男性から脅迫状が届いたこと。この人物がロベルトの自宅の住所や個人情報を入手したのは、ロベルトが使用していたiPhone XのFaceTimeがハッキングされたからだとロベルトは見ているという。
また、2018年にiPhone Xを購入したというロベルトはその際に、iPhoneは今あるスマートフォンの中で最も安全で保護されていると説明されたことが購入の決め手だったよう。しかしそのスマホを通してハッキングが行なわれたことで、自分だけでなく家族の身も案じたロベルトは、家を引っ越し。精神的苦痛も味わい、相当の金額をセキュリティに投じることとなったと、法廷に提出した資料で述べている。
Appleを敵視しているロベルト
彼がアップルを敵視する態度を取るのは、これが初めてではない。じつはロベルトが代表を務める企業Escobar Incは、2019年末に突如としてスマートフォン市場に参入。折りたたみスマートフォンのEscobar Foldを発表している。その際には謳い文句として、「アップルを負かすスマートフォン」「安らかに眠れ、アップル。いつでもパブロが勝つ」と過激なコメントをして、周囲がざわついていた。
また、アップルを相手取った集団訴訟を起こす計画があることも米DigitalTrendsによるインタビューで明かしている。(フロントロウ編集部)