人身取引は現代でも起こっている
7月30日は、人身取引反対世界デー。最近では、黒人の人権を叫ぶBlack Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)運動が黒人コミュニティがある世界各国で起こり、過去の黒人奴隷の歴史が、現在の黒人コミュニティにも大きく影響していることに対する理解が進んでいるけれど、奴隷は過去のことではない。
人身取引とは、別の地域や国に、誘拐や脅迫によって被害者を連れて行き売り買いすること。国際労働機関(ILO)の報告によると、人身取引の犠牲者は世界でおよそ2090万人にも上るとされており、麻薬密輸、違法武器取引に続く地球上の犯罪トップ3に入っている。
人身取引の被害者には何が起こっているのか
国連の元事務総長であるパン・ギムン氏は、人身売買の被害者の多くが少女や女性であることを危惧。国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパンによると、カンボジア人少女の1人は、16歳から約4年半で、1万6,000人以上から性的搾取を受けたという。
そんな人身取引では、日本は加害者の面を持っている。児童買春は長年にわたって問題視されているけれど、さらに近年では外国人技能実習制度も加わった。数多くの問題が指摘されている外国人技能実習生制度では、日本へ来るために本国で借金をしてから来日している外国人も少なくないが、日本で勤め始めても給与が正当に支払われなかったり、なんと給与明細でマイナスが記されていたりという事例もある。また、もちろん長時間労働も確認されている。
厚労省によると、2016年から2018年に全国の労働基準監督機関が行った監督指導は、1万8,972件、そのうち1万3,390件が労基法違反だった。2017年までの8年間に、自殺や、溺死、凍死や事故死、殺人などで174人が死亡していると法務省は発表しているが、調査団体によって数が異なり、人身売買報告書を毎年発表しているアメリカの国務省は、日本はデータの公表が不十分としている。また、日本の事業主が外国人労働者のパスポートを管理し、パスポートの保有者が企業を辞めた後でもパスポートを返さないという事例も確認されている。
このような状況を変えるために、国連はブルーハートキャンペーンというイニシアチブを行なっている。また、数多くの団体が政策提言をしたり、いくつかの国際条約や議定書に出来るだけ多くの国が批准するよう求めたりしている。個人では、そのような団体を支援することや、署名活動などが立ち上がった時には賛同するなどして、被害者を救うために活動することが出来る。人身売買は、過去のことでも、遠い国のことでもない。人身取引反対世界デーに、世界で何が起こっているかを調べてみて。(フロントロウ編集部)