『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーに、じつはまったく別のストーリーラインが与えられそうになっていたという。(フロントロウ編集部)

歴代ジョーカーの中でも人気のヒース・レジャー版

 DCコミックスのキャラクターで、悪役でありながら絶対的な人気を博すジョーカーは、これまでにオスカー俳優のジャック・ニコルソンやシーザー・ロメロ、ホアキン・フェニックスなどが演じてきており、そのどれもが高い人気を誇るけれど、その中でも多くの熱狂的ファンを持つのが、ヒース・レジャー版ジョーカー。

 彼が登場したのは、その迫力の映像やストーリーで数多くのヒット作を生み出してきたクリストファー・ノーラン監督が2008年に発表した『ダークナイト』で、ゴッサムシティを混沌に陥れる不気味なジョーカーが描かれた。

画像1: ⓒWARNER BROS PICTURES/LEGENDARY PICT./DC COMICS/SYNCOPY / Album/Newscom

ⓒWARNER BROS PICTURES/LEGENDARY PICT./DC COMICS/SYNCOPY / Album/Newscom

『ダークナイト』のジョーカー、別の描き方の提案

 『ダークナイト』のジョーカーの魅力といえば、その正体不明さ。どこで生まれたのか、過去に何があったのか、犯罪者としての天才的な才能はどうやって培われたのか、などの説明は一切なく、口の傷についても、父親に切り裂かれたと言ったり、妻に切り裂かれたと言ったり、その過去については完全にもやに包まれている。

 しかし、そんなジョーカー像とはまったく違うものにされそうだったことを、『ダークナイト』3部作の脚本に携わったデヴィッド・S・ゴイヤーが、オンラインコミコンで明かした。

「『そうですね…、ジョーカーの誕生の物語はとくにないというのはどうでしょう?』と話したことを覚えていますよ。『バットマン ビギンズ』は成功したとはいえ、それ(ジョーカー誕生の物語がないというアイディア)は物議を醸すことでしたし、反対も受けました。みんな心配していたんです」

 正体不明の悪役として描かれた本作のジョーカーだけれど、当時の制作陣にとってはジョーカーの起源に触れないのは挑戦的なことであり、制作・配給会社のワーナー・ブラザースからは、本作の劇中でジョーカーがどう誕生したのかについて触れるよう求める意見があったという。

画像2: ⓒWARNER BROS PICTURES/LEGENDARY PICT./DC COMICS/SYNCOPY / Album/Newscom

ⓒWARNER BROS PICTURES/LEGENDARY PICT./DC COMICS/SYNCOPY / Album/Newscom

 ジョーカーの魅力の大きな要因の1つは、その過去が見えないことからくる不気味さ。もしワーナー・ブラザースが言うように過去が描かれていたら、まったく違うジョーカーになっていた可能性がある。

映画界に大きな影響を与えた『ダークナイト』

 確かに、ジョーカーがどう誕生したかについてはコミックスでも触れられているし、1989年にオスカー俳優のジャック・ニコルソンがジョーカーを演じて、アメコミ原作の映画のレベルを上げたといわれる『バットマン』でも、ジョーカーがどう誕生したかはしっかりと描かれている。そのことから、配給会社側はデヴィッドの考えには懐疑的だったという。

 しかしいざ公開してみると、『ダークナイト』の演技によって、本作の公開前に急死したヒースは、故人として史上2人目のアカデミー助演男優賞を受賞。さらに、第81回アカデミー賞において本作が作品賞にノミネートされなかったことで、候補枠が5作品から10作品に変更されるなど、映画界にかなりの影響を与えたモンスター映画となった。

 とはいえ、2019年に公開されたアーサー・フレック/ジョーカーが主役の映画『ジョーカー』では、『ダークナイト』のジョーカーとは真逆に、ジョーカーの誕生についてをテーマにして世界中でメガヒットを記録し、数多くの映画賞を受賞。

 鬼才監督、そして天才的俳優がタッグを組むことで、ファンを魅了してしまうさまざまな悪役ジョーカーが誕生してきた。今後はどんなジョーカーが誕生するかにも期待したい。(フロントロウ編集部)

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