打ち切りから復活を遂げたドラマ『LUCIFER/ルシファー』
2016年に放送が始まり、2020年にシーズン5がスタートしたドラマ『LUCIFER/ルシファー』は、2018年に放送されたシーズン3で打ち切られることが発表されていた。
当時ドラマを放送していたFOXテレビジョンの会長兼CEOダナ・ウォルデンは、2018年に行なわれたTV批評家協会のプレスツアーで「シーズン3の視聴率が下降線をたどるようになり、FOXとしてはシーズンを更新したかったが、利益を上げることが出来なかった。製作費が安くはないシリーズだけに、最終的には視聴率を稼げなかった」と明かしていた。
そんな本作に再起のチャンスを与えたのがNetflix。同プレスツアーに参加したNetflixのオリジナルコンテンツ部門のシンディ・ホランド副社長は、「Netflixが配信されている世界の各地域で、『LUCIFER/ルシファー』はファンから大きな支持を得ています。よって、そういったファンのためにも、シリーズを継続させていくことが大切だと感じた」と、シリーズの継続に対し力強いコメントをした。
実はそんな騒動の中、シリーズの継続に大きな影響を与えた人物がいた。
『LUCIFER/ルシファー』を打ち切りから救ったファンの熱意
ドラマ『LUCIFER/ルシファー』を打ち切りの危機から救ったのは、同作の大ファンで当時61歳だった、ジェーン・ウィルソン。彼女は、ドラマの打ち切りが発表されたことを嘆き、SNSで「#SaveLucifer(ルシファーを救え)」というタグを作り、物語が完結していないにもかかわらず打ち切られる同作の継続を求めた。
このキャンペーンは即座にウワサを呼び、米NBCに取り上げられ、翌日にはこのハッシュタグを使ったツイートの数が100万件を突破。主演のトム・エリスも積極的にこのタグを利用してムーブメントを盛り上げ、ショーランナーのジョー・ヘンダーソンも驚きが隠せないといったツイートをした。
1 MILLION TWEETS for #SaveLucifer. You guys, this is INSANE. So grateful!! pic.twitter.com/4feh1a6frh
— Joe Henderson (@Henderson_Joe) May 12, 2018
けれども、いくらファンがツイッターで熱意を示そうとも、打ち切りは定められた運命。キャストもスタッフがシーズン3でフィナーレを迎えることを詫びるなか、2018年にドラマは終了。
ところがファンの勢いは衰えることなく、1週間経ってもタグへのツイートは止まずにますますヒートアップ。ついには、ウィリアム・シャトナーやロブ・ベネディクト、スコット・ポーターなど、ドラマの一ファンであるセレブたちも、その運動に参加し始めた。
その後しばらくして、「別のネットワークが『LUCIFER/ルシファー』の続編の権利を買い付けしている」というウワサが流れ、最終的にNetflixが前述の発表をした。明言はされていないものの、多くの関係者がタグの存在を応援し、その後Netflixが続編の制作に乗り切ったということで、ファンの熱意が続編を促したのだといわれている。
そんな一大ムーブメントの立役者で、タグを作成したジェーンは、シーズン5の配信が始まる直前の7月にガンでこの世を去ってしまった。彼女が運営していたファンアカウントの共同経営者であるゲイルは、そのことをツイッターで伝えた。
『LUCIFER/ルシファー』キャスト&スタッフが哀悼
ジェーンの死を知った主演のトム・エリスは「ゲイル、本当に残念だったよ。ジェーンはいつもとても協力的で親切だった。彼女の行動は、本当の#ルシファン(※)の象徴で、とても惜しまれるものだ。あなたとご家族に心からお悔やみ申し上げます。愛を」とコメント。
※海外では、『LUCIFER/ルシファー』のファンは「ルシファン(Lucifan)」と呼ばれている。
I’m so sorry Gail. Jane was always so supportive and kind. The way she carried herself and cared for others is emblematic of a true #lucifan and she will be greatly missed. My deepest sympathies to you and her family. Much love ❤️ ❤️❤️ https://t.co/Bu2VINNdu5
— tom ellis (@tomellis17) July 23, 2020
マジキーン役のレスリー・アン・ブラントは「(亡くなった日は)息子の誕生日だったの。ジェーンの家族と友人に心からのお悔やみを送ります。安らかに」と追悼した。そして、ショーランナーのジョンは「ジェーン、ご冥福を。僕らがあなたの人生に光をもたらしたことを願ってる。あなたは僕らにとってそんな存在だったから。それに感謝しています」と、ジェーンの功績を称えた。
ショーのプロデューサーであるイルディ・モドロビッチは「私たちは、美しい#Lucifamily(ルシファミリー)の一部を失いました。素晴らしきジェーン・ウィルソン。この信じられないほど悲しい時期に、彼女の家族や友人にたくさんの愛を送りたいです。この件について教えてくれたアカウントに感謝します」と語った。
多くのドラマ関係者やファンに愛される存在となったジェーン。ひとりのファンがドラマの命運を分けたこのエピソードは、今後も語り継がれるはず。ジェーンの運動によって復活したドラマ『LUCIFER/ルシファー』は、最新のシーズン5がNetflixのポピュラー作品リストにランクインするほどの人気を博している。(フロントロウ編集部)