民主主義って、何?
民主主義とは、「人民が主権を持ち、人民の意思を基にして政治を行う主義」のことを指す。アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンの「人民の、人民による、人民のための政治」というフレーズを聞いたことがある人は多いのでは?
1つの国には、出身地や育った家庭の経済事情など、様々なバックグラウンドを持って、様々な意見を持つ人が住んでいる。しかし現代社会では、その国に住む様々な人々の様々な意見が反映された政治は行なわれている?
権力の私物化や、独裁政治など、現代でも民主主義が崩壊していたり、民主主義が達成されていなかったりする国はある。しかしまず、その民主主義には女性は含まれている?
その民主主義に女性はいる?
“人民”には、当然女性も含まれる。しかし各国の民主主義に女性がいないことは長年問題となっている。
歴史を振り返ると、日本では1910年代から20年代にかけて「大正デモクラシー」が起こったことは教科書にも載っている。そして1925年に普通選挙権を国民が持つこととなったけれど、それは25歳以上の男性のみだった。女性が選挙権を得たのは、第二次世界大戦後の1946年。
第一次世界大戦時代にアメリカ合衆国大統領だったウッドロウ・ウィルソンは、「世界は民主主義にとって安全にならなければいけない」と国民に呼びかけたけれど、それに対してNWP(全米女性党)は、「アメリカの2,000万人の女性達は、いまだに自己統治を持っていない」と、“民主”に女性が含まれていないことを批判していた。アメリカで女性が投票権を獲得したのは、1920年のこと。
現代では、多くの国で性別にかかわらず選挙権が与えられているけれど、女性の意見を反映する政治家が少ないことが問題になっている。そこで、ヨーロッパの多数の国が取り入れているのが、女性議員の比率を一定数確保するクォータ制。これまで制度では解決されない差別や不平等の現状を変えるために、差別を受けている集団の立場の改善を積極的に行なうアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)の考え方は浸透してきており、構造的差別の改善が進められている。
一方で、日本における女性議員の割合は、193ヵ国中165位となっており、G20の中で最下位。2020年9月14日に合流新党の立憲民主党の役員人事が発表されたけれど、その代表、幹事長、政調会長、国対委員長、選対委員長はすべて男性政治家であった。
女性がいなければ何が起こる?
決定権を持つ人々が男性ばかりになると、女性の意見が反映されづらいだけでなく、女性の身体に関する法律を男性が決める事態が引き起こされる。
日本では、2019年6月に開かれたアフターピルについてのオンライン診療検討会が開かれたが、委員のうち女性はたった1人。また日本では、欧米で認可されている多くのピルや中絶方法が認可すらされていない。アメリカでは2019年にアラバマ州で、レイプ被害による妊娠の中絶すらも禁止する法案が可決された。その法案に賛成票を投じたのはすべて男性だった。当時インターネット上では、著名人から一般人まで多くの女性達が声をあげ、「男性が女性の身体に関する法律を作るべきではない(Men Shouldn't Be Making Laws about Women's Bodies)」という画像が多くシェアされた。
まだまだ、民主主義には女性がいない。しかし、過去の歴史において多くの女性達が声をあげてくれたおかげで、少なくとも選挙権がある。次世代の女性達のために行動を起こせるのは、今を生きている人達。国連のパン・ギムン前事務総長は2011年の国際民主主義デーに、民主主義は輸出したり、外部から押しつけることが出来るものではないとし、こうメッセージを送っている。
「それは国民の意志で生み出され、力強く活発な市民社会によって育まれねばならないからです。国は民主主義にふさわしい国に成長していくのではなく、民主主義によって健全な国になる」
(フロントロウ編集部)