2020年のエミー賞で、多数の俳優が口にした言葉。それは「レプリゼンテーション」。(フロントロウ編集部)

“人々”を描くドラマで重要なレプリゼンテーション

 現地時間9月20日に開催された米ドラマの祭典エミー賞。今年はオンライン開催となり、ノミネートされた俳優達は自宅などから参加。『シッツ・クリーク』や『ウォッチメン』、『サクセッション』や『ユーフォリア/EUPHORIA』などが話題をさらった。

 スピーチなどでは、時期が近いことから大統領選へ向けたメッセージや、エミー賞開催の直前に亡くなったアメリカ最高裁判所元判事の故ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏を追悼するものが多かったけれど、映像業界の祭典であるエミー賞として忘れてはならないトピックも。

 それは、レプリゼンテーション

多様性はいつだって存在した

 レプリゼンテーションは表現・代表といった意味を持つ言葉。これまで、多くの物語では女性や黒人、LGBTQ+人物が描かれなかったり、ステレオタイプな描かれ方をしたりしてきた。つまりこれは、レプリゼンテーションが低いことにあたる。

 ここ数年で、ドラマや映画、広告などで、白人だけでなく黒人やアジア系なども、男性だけでなく女性やトランスジェンダーも、異性愛者だけでなく様々なセクシャリティも描くことの重要性が認識されるようになり、メディアにおける様々な人物像のレプリゼンテーションが意識されるようになってきた。そのかいあって欧米のドラマや映画などでは、どんどん様々なキャラクターが描かれるようになってきたけれど、まだまだ改善できる点は多い。そこで、エミー賞の放送中には、さらなるレプリゼンテーションを求める動画が公開された。

 マーケティングにおける包括的なレプリゼンテーションのために活動するAIMMは、ビリー・ポーターや、ジェイミー・チャン、ダニエル・デイ・キム、リン・マニュエル・ミランダ、アイシス・キングとともに、「See All」プロジェクトの動画を公開。

 動画の中では、多様性はそこにずっとあったけれど、描かれてこなかったことや、描かれたとしてもそれがステレオタイプであっては意味がないこと、様々な人物を見てその人達の言葉を聞くこと、当事者以外が考えるその人たちの人物像を描くのではなく、正しく本当の姿を描くことの重要性が語られ、そういったレプリゼンテーションの意味と価値が力強く伝えられた。

これからを生きる子供達に映像が与える影響

 また、『マスター・オブ・ゼロ』や『The Chi(原題)』などで知られる俳優でありプロデューサーのリナ・ウェイスは、すべての人を描いていくと宣言。そして、自分が子供の頃に見たドラマで、自分と同じ黒人、自分と同じ名前の登場人物を見た時の思い出を明かした。

「『A Different World(原題)』を見てたことを覚えてる。すごく若い頃のジェイダ・ピンケットが彼女の名前を言ったんだ。私の名前はリナ・ジェームズだって。もちろん、私はそれを家族と見ていたんだけど、みんなで同じ時に息をのんだ。記憶に残る瞬間。宇宙が自分に話しかけてきたと思った。イエス。君のことだぞ。リナ、君に話かけてるんだぞってね。それまでにないようなかんじで、自分の存在が認められていると感じた」

 例えば自分が異性愛者の白人男性であり、アメリカの映像作品を見ていれば、そこには弁護士やスポーツ選手、環境活動家や工事作業員まで、自分と同じ人種・性別のグループの人物の様々な姿を見つけられる。逆に自分が同性愛者の黒人女性だったら、自分と同じような姿や立場にある人が大統領や、企業の社長、医者などの役柄で描かれているのを見つけるのは難しくなる。

 とくに子供に対して、そのレプリゼンテーションは大きな影響を与える。そしてそんなレプリゼンテーションを得られてこなかった子供たちにとって、自分と同じ肌の色や性別、そして性格の人物像を特定の役職や立場で見られないことは、将来自分がそうなれると想像することを困難にする。

 また、レプリゼンテーションが与える影響は、当事者に対してだけではない。正しく描かれた様々な人物を見ることは、その映像の視聴者が持つ偏見やステレオタイプを崩すことにもつながる。これまでは、偏見やステレオタイプを生んでいたことも多かった映像業界に、早急な変化が求められている。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.