クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』でキャットを演じたエリザベス・デビッキが、制作時のことを振り返った。(フロントロウ編集部)

時間の逆転がテーマの『テネット』

 クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』は、これまでに『メメント』や『インセプション』などを手掛けてきたノーラン監督らしい「時間の逆転」をテーマにした作品。1度では理解しきれないため、多くの人が何度か見ることになると言われる本作では、それに出演するキャストにも苦労が。

 例えば、主人公を演じたジョン・デヴィッド・ワシントンは「まばたき」の演技が難しかったと明かすなど、鑑賞者には予想のできない部分で困難が生じていたようで、ノーラン監督の世界観を映像化する大変さが見て取れる。

キャット役のエリザベス・デビッキ、撮影の苦労

 キャストは、物語を映像で一気に見ることも出来なければ、手元にあるのは小説ではなく脚本。事前に理解することは鑑賞者よりも難しさを感じても仕方なく、本作で重要な役割を担ったキャットを演じたエリザベス・デビッキは、全体的には理解しようとせず、各シーンに集中したそう。米Comic bookのインタビューで、こう明かした。

 「脚本にすべてがあった。それって驚くべきことだよね。クリストファー・ノーランの脳の見取り図みたいだった。これまでに読んだ脚本の中で、最も強烈で複雑で面白いものの1つだった。それを作るうえで、本当に正直に言わなくちゃいけないけど、私は1つ1つやっていかなくてはいけなかった。時には1分1分。そのうえで、カメラが回る前とか、時には誰かが“スタート”って言った時に、自分のスタートポイントからクリスのほうに走って行って、『どっちの方向?もう一度教えて』って言ったり。だって嫌だからね、分かるでしょう…。だから私にとってそれは、1つ1つやるものだった。
 でもその後に映画を全編見たら、変だけど、初めて見たかのような経験をした。すべてのピースが一緒になったのを見たのは初めてだったから、『あー、あれは…。あー、なるほど、あれがあれ?』って感じで」

画像: キャット役のエリザベス・デビッキ、撮影の苦労

 物語の中に登場するとはいえ、断片的に撮影をこなすなかでは、ストーリーを把握することは難しい。映画を見た時には、自分が数ヵ月にわたって撮影に関わったにもかかわらず、初めて見た感覚に陥り、多くの一般のファンと同じ感想を持ったという。

 『テネット』は、新型コロナウイルスの影響で深刻なダメージを受けた映画業界の起爆剤となることが期待されている作品。その映像もノーラン監督品質なので、何度か映画館に足を運んでも、そのたびにさらに深く作品を楽しめそうだ。(フロントロウ編集部)

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