『魔女がいっぱい』に登場する魔女の設定が、身体的障がいを持つ人々のコミュニティから批判をうけ、ワーナー・ブラザースが謝罪した。(フロントロウ編集部)

追記(11月6日)
グランド・ウィッチを演じたアン・ハサウェイも謝罪。真摯な姿勢で長文を公開したアンは、「痛みを引き起こしたことを謝らなくてはいけません。ごめんなさい」と謝罪し、とくに障がいを持つ子供たちに申し訳なく思っているとした。また、生まれつき指や腕、脚の一部がない人々をサポートする非営利団体Lucky Fin Projectや、この問題に際して使われたNot a Witch(魔女じゃない)というハッシュタグまで恥ずかしがることなく紹介し、障がいについて理解を深める機会を呼びかけた。

魔女の特徴は指がないこと?

 (11月5日)アメリカではHBO Maxで配信が開始され、日本では12月4日に全国ロードショーとなる映画『魔女がいっぱい』は、『チョコレート工場の秘密』で知られるイギリスの児童文学作家ロアルド・ダールによる原作をもとに、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督が手掛け、オスカー監督のギレルモ・デル・トロやアルフォンソ・キュアロンもゼメキス監督をサポート。恐ろしい大魔女「グランド・ウィッチ」をアン・ハサウェイが演じた。

 そんな本作の魔女の描かれ方が批判を浴びている。映画版では、魔女の特徴として手の指が3本であり、つま先がない。その描写が、指や手がない身体的障がいを持つ人の誤ったレプリゼンテーション(※)だとして批判を受けている。とくに、原作のイラストでは魔女は5本の指を持ち、手の特徴は爪がかぎ爪であるとだけされていることから、なぜ映画版ではそのような改変をしたのかと、不適切だと指摘された。

レプリゼンテーションとは?
表現/代表といった意味。
多くの物語のなかで、障がいを持つ人々や女性、LGBTQ+の人々、黒人やアジア系などが描かれなかったり、ステレオタイプな描かれ方をしたりすることが問題となっている。例えば、ヒーローには男性が多い、アジア系はオタクのように描かれがち、など。
しかし各キャラクターのレプリゼンテーション(表現)は視聴者の価値観にも影響を与えることから、近年では各作品でのレプリゼンテーションが見直されている。

 声をあげたなかには、国際パラリンピック委員会の公式ツイッターアカウントも含まれている。また、パラ水泳のメダリストであるエイミー・マレンのほか、生まれつき右腕がない俳優のメリッサ・ジョーンズもコメント。「まただね…。障がいを衣装のように扱って、キャラクターを“悪役”として強調する」とし、同様の障がいを持つ子供たちは、自分たちが怖いモンスターのように描かれるのを見ることになると指摘した。

ワーナー・ブラザースが謝罪

 この指摘を受けて、同作の配給会社であるワーナー・ブラザースは米Deadlineに、「私たちによる『魔女がいっぱい』における架空のキャラクターの表現が、障がいを持つ人々を困惑させてしまったと知り、深く悲しんでおります」としたうえで、「気分を害してしまったことを遺憾に思います」とコメント。さらにこう続けた。 

「原作を新たに理解するうえで、複数のデザイナーやアーティストとともに、原作のなかで説明された猫のようなかぎ爪の新しい解釈を考え出しました。架空の、人間でない生物が(同様の障がいを持つ)人々を表していると視聴者が感じたことは、意図的ではありませんでした」

(フロントロウ編集部)

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