女性初の副大統領にカマラ・ハリス氏
初の女性副大統領、初の黒人副大統領、初の南アジア系副大統領。2020年のアメリカ大統領選挙によって、様々な初をたずさえて副大統領となることが確実となったカマラ・ハリス氏。
カリフォルニア州で女性としても黒人としても初の州司法長官を務め、南アジア系のルーツを持つ女性として初の米上院議員となった経歴を持つハリス氏は、2018年には、トランプ氏によって連邦裁判所判事に指名された保守派のブレット・カバノー氏に対するレイプ疑惑を、鋭い質問で追及する様子が大きく話題となった。そして2020年10月に行なわれた副大統領候補討論会では、マイク・ペンス氏に話を遮られても冷静に対応する様子に、女性が日々受けている抑圧が表現されたと反響があった。
2020年の大統領選挙は、女性票が1つのカギだったと様々な調査で指摘されている。女性たちが民主党に投票した理由には、トランプ氏の女性蔑視や共和党の女性差別な政策があるけれど、ハリス氏の存在も結果に寄与したと考えられている。
カマラ・ハリス氏、これから育つ次世代の女性たちへ
ハリス氏は、現地時間11月7日に行なわれた勝利演説で、少女たちにこうメッセージを送っている。
「私は女性として初めての副大統領かもしれませんが、最後(の女性副大統領)ではありません。なぜなら、今夜、すべての小さな女の子たちは、この国は可能性の国であるということを見ているからです。子供たちのジェンダーにかかわらず、この国は子供たちに明確なメッセージを送っています。大志を持って夢を見て。信念とともに導いて。そして、他の人が想像しないような自分の姿を見て。彼らは、ただ単に過去に(前例を)見たことがないだけ。でも知っておいてほしいのは、私たちはあなたが踏み出すすべての一歩に拍手を送る」
この勝利演説はテレビで放送された。そしてアメリカ中で、幼い女の子たちがその姿を見ていた。その光景は、2020年になってやっと起こった歴史上初めてのこと。
What this day means to her... #KamalaHarris #BlackGirlMagic #Election2020 pic.twitter.com/mt4xmE8oJ7
— Racquel Bailey (@ImRacquelBailey) November 8, 2020
“Every little girl watching tonight sees that this is a country of possibilities.”
— Dr. Guy McHendry (@acaguy) November 8, 2020
-#KamalaHarris pic.twitter.com/VXwcVn1Ier
"Mommy she is talking about me. I need to record this." �� @SenKamalaHarris #representationmatters #KamalaHarris pic.twitter.com/ndLCxNo1is
— Rita Choula (@rchoula) November 8, 2020
“It’s a lady!” -Althea (2 years old) @KamalaHarris #KamalaHarris #KamalaHarrisVP pic.twitter.com/QJ7E8Uqwo9
— Jessica Raaum Foster (@JessicaRaaum) November 8, 2020
I pulled her out of bed to watch. And now she’s certain she will be Prime Minister. #KamalaHarris pic.twitter.com/6jQWo2Es3D
— Jessica Scott-Reid (@JessLReid) November 8, 2020
少女たちが見る女性像も変わる
1776年に独立したアメリカは、1789年にジョージ・ワシントンを初代大統領に、そしてジョン・アダムスを初代副大統領に選出した。その後、約250年間、女性大統領も女性副大統領も生まれてこなかった。女性のほうが能力が低いわけはなく、ただ、女性からは教育の機会や投票権が長きにわたって奪われてきた。しかし2020年を生きる少女たちが、ついに初めて女性が副大統領になるところを目撃した。
インターネット上では、歴史においてどれだけ女性が排除されてきたか、そしてこれからどう変わっていくのかを感じさせる、歴代副大統領とハリス氏の写真を並べた画像が拡散されている。
また、これまで女性たちは、男性目線で勝手なレッテルを貼られることが多かった。例えば、NBCニュースの分析によると、副大統領候補討論会でペンス氏はハリス氏の言葉を16回遮ったけれど、ハリス氏は5回しか遮っていない。しかし、ハリス氏の表情や態度は保守系メディアから批判された。また大統領候補討論会では、Washington Postの分析によると、トランプ氏は71回、バイデン氏は22回相手の言葉を遮っている。しかし保守系メディアはペンス氏を「ジェントルマン」「冷静」と評価 し、ハリス氏の表情や態度を「好感を持てない」「偉そう」などと批判した。
女性の態度には、冷静であっても熱意があってもネガティブな言葉が投げかけられやすい。例えば、冷血、好ましくない、キーキーしている、耳障り、感情的、偉そう、難しい。そして少女たちも、自分たちと同じ性別の女性がそう言われるところを見てきた。しかしそこに、今度からこのような呼び方が否が応でも加わることになる。
「副大統領」
道を切り開いてきた女性たち
2020年は丁度、アメリカで女性の参政権が認められた年の1920年から100年が経つ年。そうでなかったとしても、当時の女性たちがデモの際に着用していた“白”を、ハリス氏が勝利演説のスーツの色に選んだのは不思議ではないだろう。
白色はたびたび政治の場面で女性議員が着用してきており、2016年の大統領選に出馬したヒラリー・クリントン氏も白色のパンツルックで民主党全国大会に出席したり、民主党の女性議員たちが白色の洋服で議会に集まったりしてきた。
ハリス氏は、勝利演説のなかで、それぞれの時代のなかで行動を起こしてきた女性たちに感謝を表している。
「100年以上にわたり、私たちの投票する権利を確保し守るために働きかけてくれたすべての女性たち。100年前はアメリカ合衆国憲法修正第19条に、55年前は投票権法に、そして今、2020年に、この国の次世代の女性たちが、投票をして声を聞かせるという彼女たちの基本的人権のために闘い続けています」
ハリス氏の歴史的偉業は、もちろん彼女自身の実力もあるけれど、これまでに道を切り開いてきてくれた先人たちの存在があってこそ。インターネット上では、黒人の少女として初めて白人の学校へ通った6歳の少女ルビー・ブリッジスとハリス氏が歩く姿を合わせた画像も拡散されている。
Kamala Harris, walking with the shadow of little Ruby Bridges, the first African-American child to attend a white elementary school in the South. November 14th, 1960.
— Solo Monk (@JJKALE2) November 8, 2020
How it started How it's going#KamalaHarris #USAelection2020 #TrumpTantrum pic.twitter.com/l4pwFt2EZ6
(フロントロウ編集部)