ホテルスタッフの態度に不満を抱き、米大手旅行サイト「トリップアドバイザー(Trip Advisor)」で低評価の口コミを書いた男性が逮捕された事件で、トリップアドバイザーがホテルのレビューページに“異例の警告文”を出すという措置を取った。(フロントロウ編集部)

旅行サイトで厳しい口コミを書いたら逮捕

 利用者による“公平な口コミ”がチェックできることから、旅行の際のホテル選びなどに参考にする人が多い人気旅行サイトの「トリップアドバイザー」。2020年6月、タイ・チャン島にあるリゾートホテル、シー・ビュー・リゾートに滞在した現地在住のアメリカ人旅行客が、同サイトを通じてホテルスタッフの対応への不満を投稿したところ、名誉棄損で訴えられ、その3ヵ月後の9月に職場にやってきた警察に逮捕されるという騒動が起きた。

 この男性は、10万バーツ(約34万円)の保釈金を支払って解放されたが、保釈金が用意できるまでの2日間は刑務所で過ごすこととなった。

画像: タイ・チャン島のビーチ

タイ・チャン島のビーチ

 当時、英語教師として働いていたアメリカ人男性のウェズリー・バーンズ氏は、友人たちと一緒に訪れたシー・ビュー・リゾートのレストランで食事をした際、アルコールを持参。彼らのテーブルを担当した店員は、ホテルの規定に合わせて持ち込み料金として約1500円を請求したが、これが原因でバーンズ氏とレストランのマネージャーの間で口論が勃発。

 スタッフたちの対応に不満を抱いたバーンズ氏は、その後、トリップアドバイザーのシー・ビュー・リゾートのページで“1つ星”をつけ、『不親切なスタッフと酷いレストランマネージャー』と題して、こんなレビューを投稿した。

「スタッフはフレンドリーさがなく、誰も笑顔を見せない。まるで誰にも来てほしくないかのように振る舞っていた。レストランマネージャーはとくに最悪。彼はチェコ共和国の出身らしい。彼はゲストに対してものすごく無作法で失礼。別の場所を見つけたほうがいい。ほかにもっと親切であなたの滞在を喜んでくれるスタッフがいるホテルがあるはずだ」

 バーンズ氏はこれ以外にも、Googleマップのレビューにも低評価口コミを投稿しており、そこには、ヨーロッパ系のマネージメントスタッフが現地スタッフをまるで奴隷のように扱っていたと示唆する内容も書かれていたという。

 タイでは、名誉棄損に対して厳罰が下される法律があり、有罪と見なされた場合には最大で2年間の禁錮刑、もしくは約66万円の罰金が科せられる。

 シー・ビュー・ホテルの責任者が米Insiderに語ったところによると、ホテル側はバーンズ氏にレビューの取り下げを要求したが、バーンズ氏はこれを拒否。しかたなく警察に通報し、名誉棄損でバーンズ氏を訴えたという。


トリップアドバイザーが「警告文」を表示

 バーンズ氏は釈放後、自身の投稿内容に嘘があったことを認めてホテル側と和解。これで一件落着とみられたが、11月に入り、バーンズ氏がアメリカに戻ったタイミングを見計らって、トリップアドバイザーは、シー・ビュー・ホテルのページのトップに警告文を表示するという異例の措置をとった。

「このホテル、もしくはホテルと関連のある個人は、オンライン上でレビューを投稿したトリップアドバイザー・ユーザーに対して刑事告訴を行ないました。このユーザーは結果として、刑務所で過ごすこととなりました。トリップアドバイザーは、ポジティブな内容であっても、ネガティブな内容であっても、旅行者たちが自由に意見や経験を共有できる場であるべきです。ホテルは現地の法律に基づいて法的権限を行使しました。しかしながら、ユーザーの皆様が旅行計画を立てる際、この件について考慮に入れていただくようお知らせするのは、私たちの任務です」

 レビューを投稿した利用客とホテル側の間で“ひと悶着あった”ことを伝えるこの警告文は、ホテル側にとってはかなり不利。

 ホテル側は米New York Timesに「トリップアドバイザーの警告文は誤解を招く内容となっており、完全な情報が欠如している」とコメントしているが、トリップアドバイザーの代表者は、“言論の自由”を重んじるとし、「意見を述べた人物を現地の法律にのっとって刑務所送りとすることには、断固として反対します。それが、今回の警告文を出すという措置をとった理由です」とInsiderに説明している。(フロントロウ編集部)

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