アメリカ女子サッカー代表チームがアメリカサッカー連盟を相手取って起こした賃金格差に対する訴訟で、一部内容が和解となった。しかし賃金格差の問題はいぜんとして続いている。(フロントロウ編集部)

超強豪の女子サッカーチームなのに男子より評価が低い

 アメリカ女子サッカー代表チームの全選手28名が、2019年のFIFAワールドカップが始まる前の3月8日に、アメリカサッカー連盟を相手取って性差別訴訟を起こした。

 アメリカの女子サッカーチームは、これまでにワールドカップで4回の優勝を達成しているけれど、男子サッカーチームは0回。しかし給与やボーナス、トレーニングなどにおいて男子のほうが優遇されており、女子チームが2019年の準々決勝まで進んだ際には約990万円のボーナスが支払われたけれど、もしそれが男子であれば約6,000万円をもらっていただろうと英Guardianは算出する。

画像: 超強豪の女子サッカーチームなのに男子より評価が低い

 また、ワールドカップ自体にも深刻な性差別がある。2019年の女子ワールドカップの賞金は約3億3,000万円だったけれど、2018年の男子ワールドカップでは約44億円で、かなりの差がある。しかし、FIFAはワールドカップの放映権をパッケージで売っているため、イベントの収益で男女の差はないと英BBCは伝えており、アメリカにおいては、むしろ2016年から2018年で女子サッカーは約56億円の収入をあげた一方で、男子は約55億円と、女子より低かったことを米The Wall Street Journalの調査が暴いた。

 そしてアメリカ女子サッカーチーム代表は、ついに声をあげた。平等な賃金の支払いを求める声はかなり大きく、2019年女子ワールドカップのあとには、観客も一体となって「Equal Pay(平等な賃金を)!」という大合唱になった。

 アメリカ副大統領となるカマラ・ハリス氏も当時、女子サッカーチームの行動を支持。さらには、作家のカシム・ラッシードは、ワールドカップとオリンピックで合わせて8回優勝している女子サッカーチームが、1度も優勝したことのない男子チームと同じ賃金を求めていることは理解できないと話し、女子チームのほうがより高い報酬をもらうべきだと声をあげている。

女子サッカーチームと連盟が和解も…

 そしてこのたび、アメリカサッカー連盟と選手たちが和解。チームでの移動で使用されるチャーター機や、チームイベントの会場、滞在先のホテルや選手のサポートサービスにおいて、女子チームの処遇が男子チームよりも劣らないようにすることに同意した。

 まずもって、成績が段違いに良い女子チームがこれらのことで男子チームよりも処遇が悪かったという事実に驚きを隠せないが、この和解をもって、ひとまずは喜ぶ声もある。

 しかしこの和解には、女子チームやサポーターが声をあげてきた賃金格差の問題が取り入れられていない。じつは今年2020年の5月に、裁判官は、女子チームに対して賃金差別があるとする女子チーム側の主張を棄却した。今回和解に至ったサポート面の審理については続行が認められたものの、賃金差別の訴えが退けられたことで、代表キャプテンのミーガン・ラピノーはショックな思いを口にしていた。

 しかしチームは上訴する意向で、賃金格差に闘い続けるとしている。

画像: 女子サッカーチームと連盟が和解も…

 和解後の会見で、アメリカサッカー連盟のトップであり元女子代表のシンディ・パーロー・コーン氏は、連盟は女性選手に男性選手と同じ契約をオファーしたと明かした。しかしチーム側の要求は、国際サッカー連盟によるFIFAワールドカップの賞金である約73億円の未払い金の支払いであり、その支払いに応じた場合、連盟は破産するだろうとしている。一方でミーガンは5月の時点で、国際サッカー連盟はこれまでに女性選手に男性選手と同じ契約はオファーしたことがないと指摘していた。

 アメリカ女子サッカーチームが賃金格差に対して行動を起こしたのは、2016年から。2015年のワールドカップのあとに5名の女子サッカー選手が、アメリカ合衆国サッカー連盟が適正に給与を支払っているか調べるようにと米雇用均等委員会(EEOC)に提訴。その後、「今すぐに性別による不当な賃金格差を終わらせ、すべてのアスリートに敬意と尊厳をもって対応すること」という決議が上院で全会一致で可決された。これに法的拘束力はないけれど、アメリカサッカー連盟に圧力をかけるものだった。

 政治家にも彼女たちの闘いを支持する人物が多いなかでのこの展開に、女性軽視の深さが改めて浮き彫りになる形となった。しかし女子サッカー選手たちは、次世代の少女たちのためにも、賃金格差が無くなるまでこの闘いを終わらせない姿勢を見せている。(フロントロウ編集部)

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