Netflix映画『Mank/マンク』で、実在した同い年の夫婦を、約30歳差の俳優2人が演じて大きな批判が巻き起こっている。映画やドラマ、テレビで見られるのが、若い女性に偏っていることは長年の問題となっている。(フロントロウ編集部)

同い年のはずなのに…

 デヴィッド・フィンチャー監督によるNetflixの新作映画『Mank/マンク』は、1941年に公開された名作映画『市民ケーン』の脚本を手掛けたハーマン・J・マンキーウィッツを主役においた伝記映画。主演はゲイリー・オールドマンが務めたが、そのキャスティングに大きな批判があがっている。

 本作には、ハーマンの妻サラも登場する。ハーマンとサラは同い年の夫婦だったけれど、ハーマンを演じたゲイリーは62歳。それに対し、サラを演じたタペンス・ミドルトンは33歳。なんと、29歳も年齢が離れている。映画の時代は、ハーマンとサラが43歳の頃。

 さらに、ハーマンとサラと同い年である女性俳優マリオン・デイヴィス役には、これまた30代である35歳のアマンダ・サイフリッドが起用されている。一方で、市民ケーンのモデルとなった男性新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストは適切な年齢の74歳チャールズ・ダンスが演じた。


映画やドラマに様々な女性が登場していない

 完全なフィクションである作品においても、登場するカップルを演じる俳優の年の差は長らく問題になってきた。しかし今回は、実際には同い年の夫婦のキャスティングでこのことが起こったため、さらに問題を感じる人は少なくない。米The New Yorkerの元編集者であり、フードライターのエミリー・ナンは、多くの映像作品で女性に対しては比較的年齢が若い俳優が起用されている問題について、こう指摘した。

 「ハーマン・J・マンキーウィッツの妻であるサラは、彼女の夫が生まれた年と同じ1897年に生まれた。デヴィッド・フィンチャーの映画『Mank/マンク』では、彼女は33歳の女性俳優によって演じられている。そしてマンキーウィッツを演じたゲイリー・オールドマンは、62歳。私たちが目に見えないと感じているわけではない。あなたたちが私たち(女性)を消してるんだ」

 2011年のドキュメンタリー映画『ミス・レプリゼンテーション:女性差別とメディアの責任』では、アメリカのテレビ番組やドラマに出演する女性は、71%が20代と30代であることを明かしている。ちなみに、アメリカにおける20代と30代の女性の割合は、実際には約13%。また、女性キャラクターが登場すること自体、男性キャラクターに対して少ないこともデータが示している。

 これまで多くの女性俳優たちは、自分が男性俳優よりも“年下”である場合にも、年を取りすぎていると言われてきたことを明かしてきた。シャロン・ストーンは、自分より3歳年上であるメル・ギブソンが、彼の相手役にシャロンは年を取りすぎていると思っていたとしているし、マギー・ギレンホールは、37歳の時に、55歳の俳優の相手役には年を取りすぎているとされた経験がある。

 ちなみに、映画『ミスター・ガラス』でサミュエル・L・ジャクソンが演じたイライジャ・プライス/ミスター・ガラスの“母親”を演じたシャーレイン・ウッダードは、サミュエルより5歳“年下”。


若い女性ばかりの問題点

 メディアで特定の年齢の女性ばかりが登場することは、その年齢の女性にばかり価値があるかのようなイメージを抱かせる。そのことは、人は年を重ねるものにもかかわらず、女性たちが、自分たちが向かっていく未来にポジティブな気持ちでいられなくするうえ、すべての世代の女性たちに若く見えなくてはいけないという抑圧も押しつける。

 また、年の差というと、ほとんどの場合で男性のほうが年上である方が“普通”という固定概念があることも問題の1つであることは間違いない。イギリスの名優エマ・トンプソンは、米EWのインタビューでこう話した。

画像: 若い女性ばかりの問題点

 「ジョージ・クルーニーが、彼は素晴らしいけれど、40歳や30歳年下の誰かと一緒にいても何事もなく受け入れられるでしょう。でももし私がロマンチックな関係で誰かといるなら、制作陣は誰か(相手役を)見つけ出さなくてはいけませんね。なぜなら、私は現在61歳だからです。言ってる意味が分かるでしょう?これは完全に、徹底的にアンバランスですよ」

 様々な性別や人種、性格やバックグラウンドを描くことを指す「レプリゼンテーション」は、ここ数年でかなり求められているけれど、まだまだ働きかけが必要であることが明らかになった。(フロントロウ編集部)

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