『ウォーキング・デッド』スピンオフで描かれる同性愛に難色を示す声
大ヒットドラマ『ウォーキング・デッド』から派生した2作目のスピンオフとして、日本でもAmazonプライム・ビデオで配信されているドラマ『ウォーキング・デッド: ワールド・ビヨンド』。
ゾンビの出現によるアポカリプスの10年後を舞台にした同作のメインキャラクターの1人で、キャンパス・コロニー警備隊員の青年フェリックスはゲイであり、男性の恋人ウィルが共同体に連れていかれ、離れ離れとなってしまう様子が描かれる。
フェリックスを演じるのは、自分のジェンダーを男性や女性のどちらかに定めない「ノンバイナリー」を公言しているニコ・トルトレッラ。ウィル役は、ブロードウェイミュージカル版の『アナと雪の女王』のクリストフ役や、ミュージカル『ヘラクレス』への主演などで知られるジェラニ・アラディンが演じる。
『ウォーキング・デッド』シリーズの裏話や魅力を解説するポッドキャスト『Talk Dead to Me(トーク・デッド・トゥー・ミー)』に出演したジェラニは、『ウォーキング・デッド』ユニバースにおけるLGBTQ+のレプリゼンテーションに言及。
ジェラニは、「『ウォーキング・デッド』シリーズが、LGBTQ+の恋愛がほかの類の恋愛と何も変わらないということを前面に押し出しているのは素晴らしいことだと思う」と語ったうえで、自身とニコが演じるウィルとフェリックスの関係について、「LGBTQ+の人たちだって、同じように苦悩しているし、同じような複雑さを抱えてる、お互いに腹を立てることだってあるし、同じように深く愛し合っているんだ」とコメント。ウィルはフェリックスの欠点を承知しながらも、「無条件に彼を愛している」とキャラクター同士の愛の深さを語った。
すると、このポッドキャストの模様を収めたYouTube動画に、同性のキャラクターの恋愛には断固反対するという一部の人々から、ホモフォビア(同性愛嫌悪)的なコメントが寄せられた。
「男同士の同性愛が描かれるドラマなんて、悪いけど楽しめない」、「別にすべてのキャラクターが恋愛をするっていう設定にはしなくてもいいんじゃない? ほかに相手がいないから、じゃあこの男性キャラはゲイってことで! …みたいな展開は無理がある」。
『ウォーキング・デッド』がホモフォビアにぴしゃり
ジェラニの発言に同性愛嫌悪コメントが続々と寄せられたことを受け、『ウォーキング・デッド』の公式ツイッターがすかさず反応。
こんなメッセージで、『ウォーキング・デッド』シリーズには、“ホモフォビアを露わにするようなファンは要らない”とバッサリと言い放った。
「こんにちは。もし、あなたが、テレビドラマ(もしくは、その他の場所)におけるLGBTQ+のキャラクターに不快感や怒りを感じているなら、どうか私たちをアンフォローしてください。そういった人たちには、自分の内面を見つめ直すとともに、もっと寛大になることをおすすめします。私たちのファンダムには、憎悪に満ちた差別や意図的な無知さの居場所はありません」
Hi, hello. If LGBTQ+ characters on television (or anywhere) make you uncomfortable or angry, please unfollow us. While we also encourage you to look within and be more accepting, know that there is no place in our fandom for hateful discrimination or willful ignorance. Thank you.
— The Walking Dead (@TheWalkingDead) January 26, 2021
記事執筆時点で22万件近い「いいね!」がついているこの投稿に、ジェラニも反応。
「永遠に同意するよ。『ウォーキング・デッド: ワールド・ビヨンド』の現場でまた仕事ができること、LGBTQIA(※)の恋愛を表現できることを誇りに思うよ。さあ、奴らに話題を提供してやろうじゃないか」と、相手役であるニコのアカウントをタグ付けして呼びかけた。
※LGBTQにインターセックス「I」=一般的に定められた男性・女性どちらとも断言できない身体構造を持つ人、アセクシャル「A」=誰に対しても恋愛感情や性的欲求を抱かない人や、アライ「A」=LGBTQ+コミュニティに属さないけれどコミュニティを理解し支援する人を加えた言い方。
黒人の血を引くジェラニは、過去には、ミュージカル版『アナと雪の女王』でアニメ版では白人であるクリストフを演じたことで批判を受け、ミュージカル『ヘラクレス』でも白人のギリシャ人であるヘラクレスを演じて批判を受けたことを引き合いに出し、「クィアのゾンビハンターを演じても批判されるって…でも、僕のほうが人生楽しんでるよな!」ともツイート。
『ウォーキング・デッド』の公式は、これにも「私たちはいつも君を応援してるよ。前進し続けてくれ、キング」とあたたかいメッセージで返信していた。(フロントロウ編集部)
※LGBTQIAの説明でアライの説明をつけ足しました。